「お気持ち表明」後の報道のゆくえに思う事

「お気持ち表明」後の報道のゆくえに思う事

9月5日のテレビ朝日の報道ステーションで「生前退位は”一代限り”浮上」との報道がありました。

天皇陛下の「お気持ち表明」から1ヶ月が経とうとしている今、政府では「皇室典範の抜本的な改正とは切り離して、今の天皇陛下の一代に限って生前退位を認めるという特別措置法で対応する」という案が浮上しているとのことです。その背景にある事情について、ナレーションはこう伝えました。

「政府としては、恒久的な退位制度などを含む”皇室典範の検討”は後回しにしたい考え。というのも、抜本的な議論を始めると、女性・女系天皇の容認や女性宮家の創設など、棚上げされている論点が再燃しかねないからだといいます。」

政府関係者は「女系天皇をどうするか、皇族の減少をどうするかと、生前退位と直接関係のないところまで広がってしまい、時間がかかってしまう」と語ったとのことです。

最後に有識者として神戸女学院大学の川西秀哉准教授がコメントしました。川西氏は、特措法と皇室典範改正の二段階に分けるのが現実的としながらも、「生前退位だけ認めて、女性宮家、女性天皇の問題は後からということになると、もう時間切れですという話になりかねない。本当に象徴天皇制をこれから長く続けていくとか、どうするかということについて踏み込まないまま議論が収束してしまう恐れがある」「先日のお気持ち表明の中で、安定的な皇統の継続が求められていたが、一代限りというのは安定的な継続ではない」として危惧を示しました。

また、特措法だけで終わらせようとする背景に、「安倍政権ならではの事情」もあるとのことです。「(安倍政権には)一つは男系(天皇)に対する根強い信仰と言ってもいいものがあるかなと思うんですけど、皇室典範全体を変えるとなると女性宮家とか女性天皇、女系天皇という問題に踏み込まざるをえない。そこに踏み込みたくない、今の制度を変えたくないという意識が強いんだなっていう風に思います」と川西市は語りました。

さて、この報道にはいくつか疑問があります。

同日(5日)の産経新聞によりますと、皇室典範の付則に「特別の場合」に限定して特措法で対応できる旨を追加する、と複数の政府関係者が明らかにした、とあります。これが事実ならば、「一代限り」の対応を想定していると断定はできないのではないでしょうか?

また、皇室典範を改訂するとしても、必要な箇所から始めればよいのであって、女系天皇や女性宮家等の議論を一から始めて結論を出す必要もありません。それはそれとして改めて包括的な議論をすればよいだけの話です。

男系継承は皇室の伝統で、理由があって続けられてきたことですから、川西准教授のように、「安倍政権の根強い信仰」と断じるのは乱暴ではないでしょうか?

「安定的な皇位継承」という観点からは、「女系天皇」や「女性宮家」のみならず、対案とも言える「旧宮家の皇籍復帰」もかねてから議論されています。現に、7月15日の毎日新聞は『旧宮家復帰、議論先送り 政府「生前退位」を優先』との見出しで、「生前退位」の検討を優先するため「旧宮家の皇籍復帰」の議論が先送りになると伝えています。今回の「報道ステーション」がこの件に一言も言及せず、女性・女系天皇、女性宮家といった議論のみ強調したのは不自然に感じました。

いずれにしても、今上陛下のお言葉をお言葉どおりに受け取れば、時代の変化に鑑みて生前の譲位を制度的に可能にするべきと理解できますから、それを可能にするために必要な改訂を速やかに行うのが政府の役目でしょう。

 

無用な憶測を絡め、あえて議論を一定の方向に誘導しようとするような報道ではなく、慎重に事実を見極めつつ、恣意性を排した公平な報道がなされることを願います。