見過ごせない『テレビの過剰演出』

見過ごせない『テレビの過剰演出』

テレビ番組の「やらせ」がしばしば批判され、時には裁判にまで発展します。その一方で、「演出」と「やらせ」の境界線は微妙で、「テレビなんてそんなものだ」と達観する声も聞かれます。はたして、どこまでが許容範囲なのでしょうか?明確な線引きをすることは可能なのでしょうか?

福岡在住のカナダ人女性、ミカエラ・ブレスウェートさんが9月7日、「なぜ日本のテレビ出演を止めたか?」という動画を公開して話題になりました。ユニークな視点から日本での生活を紹介する動画で約27万人の登録者を誇る人気ユーチューバーのミカエラさんにテレビ局から出演オファーが来るのも不思議ではありません。一時は全国区のバラエティ番組に出演するまでになりました。

しかし、ミカエラさんが経験したのはテレビ局による「過剰なキャラづくり」。たとえば、スタッフが彼女の部屋に来て「何か面白いものはありませんか?」と聞く。結局ネタを見つけられずにコンビニへ移動。そこでバラエティに富む商品群を見て興奮する外人女性を演出することに。「もっと興奮して!」と言われるままに演じたミカエラさんは、その時点で在日6年目。いかに日本のコンビニが素晴らしくても、そうそう興奮するものではありません。無理して演じた番組にはなんと「ミカエラにとってコンビニはまるで遊園地!」というテロップが付けられていたといいます。

このような「やらせまがいの演出」に疲れながら、「宣伝になるから」という理由でギャラを払ってもらえず、さらにはツイッターやYouTubeで番組を宣伝して欲しいと頼まれるに至ってテレビ出演を止めることを決意したミカエラさん。友達から「テレビでは別人のよう」と言われることもつらかったとか。これが「演出」なのか「やらせ」なのか、と問われれば、ほぼ「やらせ」だと言えるでしょう。しかし、いかにもありそうな話でもあります。(※1)

一方、「これは編集ではなく捏造」と怒りを露わにするのは、TBS系バラエティ番組「ピラミッド・ダービー」(2016年6月19日放送分)に出演した池袋絵意知さん。ご自身のブログによると、顔相鑑定士の池袋さんは、入れ替わった双子を見分ける「双子見極めダービー」という企画の最終レースまで出演しました。ところが、オンエアされた番組を見てびっくり。決勝戦の4回戦まで残ったのに、3回戦で脱落したことになっていて、なおかつ、3回戦と4回戦が入れ替わって、実際の3回戦が最終戦の4回戦として放映されていたのです。しかも、そこに写っていたはずの池袋さんの姿は、CG加工で消されていたのでした。池袋さんの抗議に対し、TBSのプロデューサーは「行き過ぎた演出」を認めて謝罪したそうですが、ここまで来るとやはり、演出の範疇を越えた捏造と言われても仕方ないでしょう。(※2)

TBSは「演出の一環のつもりだった」と弁明したそうですが、非常に危険な兆候だと言えます。「テレビに演出はつきもの」と見過ごしていると、次第にエスカレートして、何をやってもいい、という所に行き着いてしまうからです。それがまさに、過去に問題になったサブリミナル的な手法や、悪意がある印象操作と思われかねない不適切なテロップなどです。特定の政治家の顔写真が、無関係な戦争犯罪に関する番組の中に挿入されるなど、とても偶発的な事故とは思えません。これらの行為は明らかに政治的な意図をもって行われていると疑われますが、倫理の頽廃という意味では、前述の「過剰で不適切な演出」と同じです。そして、テレビ局の倫理の頽廃が、オウム真理教による「坂本弁護士一家殺害事件」のような、取り返しのつかない事件を引き起こしてしまうのです。

こう考えると、やはり視聴者はテレビ局の「やらせまがいの演出」には厳しい目を持ち、「演出の一環」などという言葉の濫用を許すべきではないでしょう。「テレビなんてそんなものじゃないの?」などと諦め口調で言っているうちに、深刻な犯罪行為を許してしまう可能性があることを自覚すべきです。しかし、政党や政府が苦言を呈するとすぐに「言論の自由が圧迫されている」などという批判をするのもまたテレビ局です。政府とは別に、純然たる民間の視点でテレビ放送を検証するメカニズムが必要です。「視聴者の会」はそんな問題意識を持った方々と歩んで行きたいと考えています。

※1 ミカエラ・ブレスウェートさん本人が語る動画付き記事(BLOGOS)
http://blogos.com/article/190342/

※2 池袋絵意知さん本人のブログ
http://blog.ikebukuroh.com/?eid=1338