【ニュース女子の沖縄報道をめぐる問題について】

様々な報道によって既にご存じの方も多いと存じますが、当会へも検証依頼や見解について多数お問い合わせ頂きました。
当会と致しましては、放送法や視聴者の知る権利の観点から検証の必要性を認識しており、今回も丁寧な検証に努めました。
大変遅くなりましたが、ここに当会の見解を発表致します。

 

▼当会の見解▼

今年1月2日に、東京のローカルテレビ局「東京MX」が放送した報道バラエティー番組「ニュース女子」において、沖縄・高江の米軍ヘリパッド建設に反対し現地で活動している人々について、沖縄での取材VTRとスタジオでの議論が放送されました。この番組内で「東京で反対活動参加者を募集し、一人につき5万円を支給して送り込んでいる」としてとりあげられた団体「のりこえねっと」から抗議があり、番組を提供したDHCシアター側が批判に反論するコメントを発表するなど物議を醸しています。そこで当会として、この番組を視聴者の観点から検証した結果として、以下に見解を述べます。

 

▼高江ヘリパッドの機動隊員「土人」発言問題▼

昨年10月、高江のヘリパッド建設現場において、大阪府警から派遣された機動隊員が「土人」などと発言したことが大きく報道されました。これについて、テレビ報道では殆どすべてのコメントが機動隊員を強く非難するもので、その背景にある反対派活動家の暴言や不法行為について言及した報道は見られませんでした。

新聞においては産経新聞が「沖縄米軍基地反対派ルポ」等の記事で、反対派の不法行為や地元住民とのトラブル等について記していますが、テレビ報道においてはそうした視点が皆無でした。

こうした状況について、当会では在京キー局6局に対して公開質問状を発しましたが、その後も「反対」側の論調が一方的に報道されて、反対派の問題点や、賛成派の意見等はほとんど紹介されない「沖縄報道の全体主義」とも言える現状です。1月2日に放送されたMXテレビ「ニュース女子」の報道は、そうした「沖縄報道の全体主義」に一石を投じる試みであったと言えます。

 

▼「ニュース女子」番組側の編集について▼

しかしながら、番組中では現地の反対派に対する取材を「トラブルの恐れがある」との理由で断念しており、反対運動を支援する在京の団体「のりこえねっと」について紹介しながら、その「のりこえねっと」にも一切取材をしていません。また、現地住民として出演した3名も、いわば「反対派の反対派」と言える立場から発言しています。その結果、番組中で反対派やその賛同者が直接取材された場面は一切ありませんでした。

その上でこの番組では、皮肉のこもったナレーションや、予断を与えるようなテロップなどで、反対派に対する否定的な印象を醸し出す表現を多く行っており、結果的に反対派として活動する人々を一方的に批判し揶揄する内容となっています。こうしたやり方は、当会がこれまで見てきた在京キー局の報道の中でも散々見られたものですが、それらにも増して、この番組の編集は拙速であったと言わざるをえません。

このような問題があることから、この番組に対し「放送法に違反している」との批判が起こっています。また、「のりこえねっと」側は、この番組が「人種差別に基づくヘイト表現を行った」として抗議しています。そこで当会はそれらの批判の妥当性について検討しました。

 

▼放送法第4条からの観点▼

まず、放送法第4上に基づく批判についてですが、これには2つの論点があると考えます。

一つは、放送法第4条1項4号「意見の分かれる問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を満たしていないのでは、という問題です。政治的な問題を扱った放送が一方的であれば、同法第4条1項2号「政治的に公平であること」についても問題になります。

この番組では上述の通り、反対派として活動する人々を一方的に批判し揶揄する内容となっており、「できるだけ多くの角度から」の論点は取り上げていないので、この番組単体で見れば「政治的に公平」とは言えません。しかし一方で、昨今のテレビ報道の全体を見渡してみれば、逆に基地建設に反対の意見のみをクローズアップした報道が殆どで「沖縄報道の全体主義」と言えるような状況です。

 

▼沖縄報道の全体主義的報道の現状▼

たとえば、昨年12月25日のTBS「サンデーモーニング」では、沖縄最大の米軍施設である北部訓練場のおよそ半分以上に当たる約4000ヘクタールが返還されたことについて、「米軍が要らない土地を返しただけ」だとして全く評価せず、返還の条件であったヘリパッドの新設や、辺野古基地の建設などの日本政府の対応を一方的に非難するコメントばかりを放送しました。

また、12月27日のNHK「ニュースウォッチ9」では、辺野古の基地建設工事が再開されたことについて、キャンプシュワブ前で抗議するおよそ60名のうち2人の意見を放送した後、「那覇市でも反対の声」として一人の那覇市民の反対意見を放送したのみでした。

このような、「沖縄報道の全体主義」と言えるテレビ報道の中において、今回のニュース女子の放送は、むしろそれまで無かった「多角性」をもたらそうとした企画と言えます。したがってこの場合、放送法第4条1項2号および4号に基づいて、この番組だけ特に取り上げて指弾するのは適切ではないと考えます。

 

▼放送法第4条1項3号「報道は事実を曲げないですること」▼

もう一つの論点は、この番組が放送法第4条1項3号「報道は事実をまげないですること」に違反しているのではないかというものです。もちろん、娯楽性を加味した「報道バラエティー」と銘打つ番組といえども、報道には常に正確性が求められます。その点では、この番組は明らかな問題を含んでいます。たとえば「のりこえねっと」が「高江市民特派員」を募集して「往復の飛行機代相当」として一人につき5万円を支給したことを取り上げ、これを反対デモ参加者への「日当」と称して、反対派の人々が金銭目的でデモに参加している証拠であるかのように扱いましたが、交通費として支給された金銭であれば「日当」とは異なるのであって、これは事実と異なる表現と言えます。

また、「反対運動を扇動する黒幕の正体は?」と題した議論の中で、その「一人5万円」の資金源について、のりこえねっとが「カンパによる」と明記していることには触れずに「わからない」として疑惑を強調する議論を展開しています。これらの点において、放送法第4条1項3号「報道は事実を曲げないですること」に違反している恐れがあると思われます。

その他、この番組の内容には多くの問題が指摘されていますが、どの点が虚偽であり事実を曲げているのか、あるいは批判が当たらない点があるのかについて、MXテレビ側による検証と外部からの知見を合わせて突き止めていく他ないと考えます。

 

▼「ヘイト発言」について▼

次に、「のりこえねっと」共同代表の一人である在日三世の辛淑玉氏に対し「人種差別にもとづくヘイト発言を行った」として、「のりこえねっと」側が番組に抗議していることに関しては、その抗議理由は妥当ではないと当会は判断いたします。

当該場面では、女性タレントが「中国が反対する理由は、沖縄にアメリカ軍がいなくなってほしいというのはわかるんですけど、韓国が、そうやって沖縄に加わるのはなんで?」と述べていますが、この発言の意図は、「中国が国家意思として沖縄の基地反対運動に力を注いでいるとしたらその理由は理解できるが、韓国が国家意思として介入してくるとしたら、その理由はわからない」との疑問にあるので、「人種差別にもとづくヘイト発言」とは考えられません。

この発言の前に、「反対運動を扇動する“黒幕の正体は?”」と題した議論で、今回の取材にあたった井上和彦氏が、デモに中国人や韓国人が多く参加していることを指摘し、「のりこえねっと」の資金源について須田慎一郎氏が辛淑玉氏の名前を挙げて「在日差別と闘ってきた中でカリスマなのでお金が集まってくる」などと述べています。そして女性タレントの質問に答えて他の出演者から「韓国には親北派がいる」という発言がありました。その結果、辛淑玉氏の背後に北朝鮮の国家意思があるとの印象を与えかねない点は批判の余地があるでしょう。ただ一方、のりこえねっと側の抗議文では「高江で起っている事実を取材し、その情報を提供することは、ヘリパッド建設に対する賛否とは別の問題」としているものの、同じ文中で「米軍基地をめぐる日米両政府の沖縄への強権的・差別的対応は、国籍にかかわらず、この国で生きるすべての人々、とりわけ在日を含むマイノリティにとって重大な問題」という独自の論理展開により、辛淑玉氏自らがいわば「闘争」の当事者であることを示唆しています。

さらに、辛淑玉氏は「のりこえねっと」主催の集会で、現地の反対運動に対し「消火器など持っていくと良い」「ヘリコプター使って(建設物資を運んで)来るなら、風船を上げたりグライダーを飛ばしたり、何したっていい」と述べるなど、違法行為を含む「過激な反対運動を扇動している」と言われても仕方のない発言を行っています。今回の番組のように根拠を示さずに話を大きくするのではなく、そうした諸事実をもとにして、本人にも取材をしてから議論すれば、説得力のある批判も可能だったのではないでしょうか。

いずれにしてもこの場合、「人種差別によるヘイト発言」という「のりこえねっと」側の指摘はあたらないと考えます。「ヘイト」の指摘が乱用されることで、必要以上のタブーが拡大され、自由闊達な議論が封じられてしまう恐れがあることを、当会は懸念します。

 

▼朝日新聞社説のダブルスタンダード▼

ところで、朝日新聞が1月28日の社説で今回の「ニュース女子」を批判し、以下のように述べています。

『放送法は、報道は事実をまげないですることや、意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすることを定めている。MXテレビは、番組の意図や放送までの経緯、社内のチェック体制などを早急に検証し、社会に広く説明すべきだ。
放送は健全な民主主義を発展させるためにあり、番組は明らかにその逆をゆく。対立をあおり、人々の間に分断をもたらすことに放送を使う行いは、厳しく批判されなければならない。』

ここで朝日新聞が「放送法第4条」を持ち出して、MXテレビに検証と説明を求めていることは、当会がいままで提唱してきたことと軌を一にするもので、ようやく噛み合った議論が出来る機会が生じてきた可能性には期待しています。

それにしても、当会が一昨年の安全保障法制に関する報道について、全キー局を通しても反対意見が約9割という「メディアの全体主義」とも言える放送法違反状態について問題提起したとき、朝日新聞は放送事業者に検証や説明を求めるのではなく、当会の問題提起を「放送法を一方的に解釈して組織的に働きかけようとしている」として排除する社説を記しました。当時のテレビ報道は弁護して、今回の「ニュース女子」は猛烈に批判する、その基準はどこにあるのか、ぜひ問うてみたいと思います。

「放送は健全な民主主義を発展させるためにある」とはもちろんその通りで、当会もそれを目的として設立されました。しかし、沖縄の基地問題をめぐっては、現実に存在する多様な事実や対立的な見解を報道せず、視聴者を基地建設に反対という唯一の見解に導こうとするような「沖縄報道の全体主義」が横行しています。反対運動に疑問を呈する意見が、沖縄の言論空間の中ではたとえ「マイノリティ」であるとしても、その意見をないがしろにしないのが民主主義の健全なあり方ではないのでしょうか。そうした「マイノリティ」の意見をあえて声に出す人々には一瞥もせず、単一の意見を述べる住民、市民しか存在しないかのような画一的な報道を全ての放送事業者が流し続ける「沖縄報道の全体主義」を、朝日新聞は「健全な民主主義を発展させる」ものとして推奨するのでしょうか。

ぜひ、この社説を書いた論説委員の方とも公開の場で、どのような放送が民主主義の発展に資するのかについて語り合いたいと思います。

 

▼「メディアの全体主義」への危惧▼

今回の「ニュース女子」は、詰めのあまい取材や恣意的な編集には多分に問題があるものの、「沖縄報道の全体主義」に一石を投じようとしたものです。当会が最も危惧するのは、この問題を機に、報道に多様性をもたらそうとする番組制作者の挑戦的な試みが萎縮し途絶えてしまうことです。そうなれば、「メディアの全体主義」が永続化し、我が国の民主主義を脅かす致命的な悪影響を及ぼす恐れがあるものと当会は深く憂慮いたします。

放送法第4条の編集準則は、あくまでも各論が各論として公平・公正に紹介される報道環境を目指すためにこそ存在するのです。放送法第4条を、一方の言論を封殺する道具にしてはならないと当会は考えます。

 

▼「ニュース女子」制作側へ▼

今回の「ニュース女子」の制作者各位におかれては、真摯な自己検証を行って、謝りは正し、反省すべきは大いに反省した上で、「沖縄報道の全体主義」に対抗する果敢な試みが潰えることがないよう、今後は確かな根拠に立脚し、放送法が求める公平性に配慮した厳正な番組作りを確立されるよう、強く希望いたします。

 

以上

 


【事務局より】
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