テレビの偏向報道を監視する一般社団法人 放送法遵守を求める視聴者の会(所在地:東京都港区、代表理事:百田 尚樹、以下 視聴者の会)は、平成30年11月12日(月)の各局報道番組について、以下の通り検証を実施いたしましたので、ご報告いたします。

 

■今回の検証のポイント

①夕刊フジが11月10日(土)に報じた「国民・大西議員の国会通行証問題」について、週明けの11月12日(月)に取り上げたテレビ局・ニュース番組はなかった。

②自民・片山さつき議員(地方創生担当大臣)では、同様の問題を各局が大きく取り上げていた印象があったが、今回は全く取り上げていない。

 

 

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今回のテーマはこちら!
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■8月16日 TBS「ひるおび!」
「ミサイル発射の可能性は?鍵握る米韓演習迫る」
■7月13日 TBS「ひるおび!」
「支持率最低で“最大のピンチ” これまでの【安倍一強】理由とは?」
■7月12日 フジテレビ「FNN スピーク」
「首相が被災地 大分を訪問」
■7月1日 TBS「報道特集」
「香港について」
■6月17日 TBS「報道特集」
「日本について」
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様々な報道によって既にご存じの方も多いと存じますが、当会へも検証依頼や見解について多数お問い合わせ頂きました。
当会と致しましては、放送法や視聴者の知る権利の観点から検証の必要性を認識しており、今回も丁寧な検証に努めました。
大変遅くなりましたが、ここに当会の見解を発表致します。

 

▼当会の見解▼

今年1月2日に、東京のローカルテレビ局「東京MX」が放送した報道バラエティー番組「ニュース女子」において、沖縄・高江の米軍ヘリパッド建設に反対し現地で活動している人々について、沖縄での取材VTRとスタジオでの議論が放送されました。この番組内で「東京で反対活動参加者を募集し、一人につき5万円を支給して送り込んでいる」としてとりあげられた団体「のりこえねっと」から抗議があり、番組を提供したDHCシアター側が批判に反論するコメントを発表するなど物議を醸しています。そこで当会として、この番組を視聴者の観点から検証した結果として、以下に見解を述べます。

 

▼高江ヘリパッドの機動隊員「土人」発言問題▼

昨年10月、高江のヘリパッド建設現場において、大阪府警から派遣された機動隊員が「土人」などと発言したことが大きく報道されました。これについて、テレビ報道では殆どすべてのコメントが機動隊員を強く非難するもので、その背景にある反対派活動家の暴言や不法行為について言及した報道は見られませんでした。

新聞においては産経新聞が「沖縄米軍基地反対派ルポ」等の記事で、反対派の不法行為や地元住民とのトラブル等について記していますが、テレビ報道においてはそうした視点が皆無でした。

こうした状況について、当会では在京キー局6局に対して公開質問状を発しましたが、その後も「反対」側の論調が一方的に報道されて、反対派の問題点や、賛成派の意見等はほとんど紹介されない「沖縄報道の全体主義」とも言える現状です。1月2日に放送されたMXテレビ「ニュース女子」の報道は、そうした「沖縄報道の全体主義」に一石を投じる試みであったと言えます。

 

▼「ニュース女子」番組側の編集について▼

しかしながら、番組中では現地の反対派に対する取材を「トラブルの恐れがある」との理由で断念しており、反対運動を支援する在京の団体「のりこえねっと」について紹介しながら、その「のりこえねっと」にも一切取材をしていません。また、現地住民として出演した3名も、いわば「反対派の反対派」と言える立場から発言しています。その結果、番組中で反対派やその賛同者が直接取材された場面は一切ありませんでした。

その上でこの番組では、皮肉のこもったナレーションや、予断を与えるようなテロップなどで、反対派に対する否定的な印象を醸し出す表現を多く行っており、結果的に反対派として活動する人々を一方的に批判し揶揄する内容となっています。こうしたやり方は、当会がこれまで見てきた在京キー局の報道の中でも散々見られたものですが、それらにも増して、この番組の編集は拙速であったと言わざるをえません。

このような問題があることから、この番組に対し「放送法に違反している」との批判が起こっています。また、「のりこえねっと」側は、この番組が「人種差別に基づくヘイト表現を行った」として抗議しています。そこで当会はそれらの批判の妥当性について検討しました。

 

▼放送法第4条からの観点▼

まず、放送法第4上に基づく批判についてですが、これには2つの論点があると考えます。

一つは、放送法第4条1項4号「意見の分かれる問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を満たしていないのでは、という問題です。政治的な問題を扱った放送が一方的であれば、同法第4条1項2号「政治的に公平であること」についても問題になります。

この番組では上述の通り、反対派として活動する人々を一方的に批判し揶揄する内容となっており、「できるだけ多くの角度から」の論点は取り上げていないので、この番組単体で見れば「政治的に公平」とは言えません。しかし一方で、昨今のテレビ報道の全体を見渡してみれば、逆に基地建設に反対の意見のみをクローズアップした報道が殆どで「沖縄報道の全体主義」と言えるような状況です。

 

▼沖縄報道の全体主義的報道の現状▼

たとえば、昨年12月25日のTBS「サンデーモーニング」では、沖縄最大の米軍施設である北部訓練場のおよそ半分以上に当たる約4000ヘクタールが返還されたことについて、「米軍が要らない土地を返しただけ」だとして全く評価せず、返還の条件であったヘリパッドの新設や、辺野古基地の建設などの日本政府の対応を一方的に非難するコメントばかりを放送しました。

また、12月27日のNHK「ニュースウォッチ9」では、辺野古の基地建設工事が再開されたことについて、キャンプシュワブ前で抗議するおよそ60名のうち2人の意見を放送した後、「那覇市でも反対の声」として一人の那覇市民の反対意見を放送したのみでした。

このような、「沖縄報道の全体主義」と言えるテレビ報道の中において、今回のニュース女子の放送は、むしろそれまで無かった「多角性」をもたらそうとした企画と言えます。したがってこの場合、放送法第4条1項2号および4号に基づいて、この番組だけ特に取り上げて指弾するのは適切ではないと考えます。

 

▼放送法第4条1項3号「報道は事実を曲げないですること」▼

もう一つの論点は、この番組が放送法第4条1項3号「報道は事実をまげないですること」に違反しているのではないかというものです。もちろん、娯楽性を加味した「報道バラエティー」と銘打つ番組といえども、報道には常に正確性が求められます。その点では、この番組は明らかな問題を含んでいます。たとえば「のりこえねっと」が「高江市民特派員」を募集して「往復の飛行機代相当」として一人につき5万円を支給したことを取り上げ、これを反対デモ参加者への「日当」と称して、反対派の人々が金銭目的でデモに参加している証拠であるかのように扱いましたが、交通費として支給された金銭であれば「日当」とは異なるのであって、これは事実と異なる表現と言えます。

また、「反対運動を扇動する黒幕の正体は?」と題した議論の中で、その「一人5万円」の資金源について、のりこえねっとが「カンパによる」と明記していることには触れずに「わからない」として疑惑を強調する議論を展開しています。これらの点において、放送法第4条1項3号「報道は事実を曲げないですること」に違反している恐れがあると思われます。

その他、この番組の内容には多くの問題が指摘されていますが、どの点が虚偽であり事実を曲げているのか、あるいは批判が当たらない点があるのかについて、MXテレビ側による検証と外部からの知見を合わせて突き止めていく他ないと考えます。

 

▼「ヘイト発言」について▼

次に、「のりこえねっと」共同代表の一人である在日三世の辛淑玉氏に対し「人種差別にもとづくヘイト発言を行った」として、「のりこえねっと」側が番組に抗議していることに関しては、その抗議理由は妥当ではないと当会は判断いたします。

当該場面では、女性タレントが「中国が反対する理由は、沖縄にアメリカ軍がいなくなってほしいというのはわかるんですけど、韓国が、そうやって沖縄に加わるのはなんで?」と述べていますが、この発言の意図は、「中国が国家意思として沖縄の基地反対運動に力を注いでいるとしたらその理由は理解できるが、韓国が国家意思として介入してくるとしたら、その理由はわからない」との疑問にあるので、「人種差別にもとづくヘイト発言」とは考えられません。

この発言の前に、「反対運動を扇動する“黒幕の正体は?”」と題した議論で、今回の取材にあたった井上和彦氏が、デモに中国人や韓国人が多く参加していることを指摘し、「のりこえねっと」の資金源について須田慎一郎氏が辛淑玉氏の名前を挙げて「在日差別と闘ってきた中でカリスマなのでお金が集まってくる」などと述べています。そして女性タレントの質問に答えて他の出演者から「韓国には親北派がいる」という発言がありました。その結果、辛淑玉氏の背後に北朝鮮の国家意思があるとの印象を与えかねない点は批判の余地があるでしょう。ただ一方、のりこえねっと側の抗議文では「高江で起っている事実を取材し、その情報を提供することは、ヘリパッド建設に対する賛否とは別の問題」としているものの、同じ文中で「米軍基地をめぐる日米両政府の沖縄への強権的・差別的対応は、国籍にかかわらず、この国で生きるすべての人々、とりわけ在日を含むマイノリティにとって重大な問題」という独自の論理展開により、辛淑玉氏自らがいわば「闘争」の当事者であることを示唆しています。

さらに、辛淑玉氏は「のりこえねっと」主催の集会で、現地の反対運動に対し「消火器など持っていくと良い」「ヘリコプター使って(建設物資を運んで)来るなら、風船を上げたりグライダーを飛ばしたり、何したっていい」と述べるなど、違法行為を含む「過激な反対運動を扇動している」と言われても仕方のない発言を行っています。今回の番組のように根拠を示さずに話を大きくするのではなく、そうした諸事実をもとにして、本人にも取材をしてから議論すれば、説得力のある批判も可能だったのではないでしょうか。

いずれにしてもこの場合、「人種差別によるヘイト発言」という「のりこえねっと」側の指摘はあたらないと考えます。「ヘイト」の指摘が乱用されることで、必要以上のタブーが拡大され、自由闊達な議論が封じられてしまう恐れがあることを、当会は懸念します。

 

▼朝日新聞社説のダブルスタンダード▼

ところで、朝日新聞が1月28日の社説で今回の「ニュース女子」を批判し、以下のように述べています。

『放送法は、報道は事実をまげないですることや、意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすることを定めている。MXテレビは、番組の意図や放送までの経緯、社内のチェック体制などを早急に検証し、社会に広く説明すべきだ。
放送は健全な民主主義を発展させるためにあり、番組は明らかにその逆をゆく。対立をあおり、人々の間に分断をもたらすことに放送を使う行いは、厳しく批判されなければならない。』

ここで朝日新聞が「放送法第4条」を持ち出して、MXテレビに検証と説明を求めていることは、当会がいままで提唱してきたことと軌を一にするもので、ようやく噛み合った議論が出来る機会が生じてきた可能性には期待しています。

それにしても、当会が一昨年の安全保障法制に関する報道について、全キー局を通しても反対意見が約9割という「メディアの全体主義」とも言える放送法違反状態について問題提起したとき、朝日新聞は放送事業者に検証や説明を求めるのではなく、当会の問題提起を「放送法を一方的に解釈して組織的に働きかけようとしている」として排除する社説を記しました。当時のテレビ報道は弁護して、今回の「ニュース女子」は猛烈に批判する、その基準はどこにあるのか、ぜひ問うてみたいと思います。

「放送は健全な民主主義を発展させるためにある」とはもちろんその通りで、当会もそれを目的として設立されました。しかし、沖縄の基地問題をめぐっては、現実に存在する多様な事実や対立的な見解を報道せず、視聴者を基地建設に反対という唯一の見解に導こうとするような「沖縄報道の全体主義」が横行しています。反対運動に疑問を呈する意見が、沖縄の言論空間の中ではたとえ「マイノリティ」であるとしても、その意見をないがしろにしないのが民主主義の健全なあり方ではないのでしょうか。そうした「マイノリティ」の意見をあえて声に出す人々には一瞥もせず、単一の意見を述べる住民、市民しか存在しないかのような画一的な報道を全ての放送事業者が流し続ける「沖縄報道の全体主義」を、朝日新聞は「健全な民主主義を発展させる」ものとして推奨するのでしょうか。

ぜひ、この社説を書いた論説委員の方とも公開の場で、どのような放送が民主主義の発展に資するのかについて語り合いたいと思います。

 

▼「メディアの全体主義」への危惧▼

今回の「ニュース女子」は、詰めのあまい取材や恣意的な編集には多分に問題があるものの、「沖縄報道の全体主義」に一石を投じようとしたものです。当会が最も危惧するのは、この問題を機に、報道に多様性をもたらそうとする番組制作者の挑戦的な試みが萎縮し途絶えてしまうことです。そうなれば、「メディアの全体主義」が永続化し、我が国の民主主義を脅かす致命的な悪影響を及ぼす恐れがあるものと当会は深く憂慮いたします。

放送法第4条の編集準則は、あくまでも各論が各論として公平・公正に紹介される報道環境を目指すためにこそ存在するのです。放送法第4条を、一方の言論を封殺する道具にしてはならないと当会は考えます。

 

▼「ニュース女子」制作側へ▼

今回の「ニュース女子」の制作者各位におかれては、真摯な自己検証を行って、謝りは正し、反省すべきは大いに反省した上で、「沖縄報道の全体主義」に対抗する果敢な試みが潰えることがないよう、今後は確かな根拠に立脚し、放送法が求める公平性に配慮した厳正な番組作りを確立されるよう、強く希望いたします。

 

以上

 


【事務局より】
このように、丁寧かつ確実な検証を行うために、当会を支えて下さる会員様を大募集中です!月額900円等・・
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「三笠宮崇仁親王殿下、薨去(ご逝去)」を各局はどう伝えたか

平成28年10月27日、三笠宮崇仁親王殿下が薨去されました。ここに謹んで哀悼の意を表します。

天皇陛下の叔父にあたられ、昭和天皇の弟君であられる三笠宮殿下は、皇族としては明治以降最高齢の100歳で薨去されるまで、多岐にわたる経験、活動をしてこられました。まさに昭和という激動の時代を体現された御生涯であったと言えましょう。

そこでこの度、本件をテレビ報道がどのように伝えたかを、同日の在京キー局における夜の主要な報道番組において比較してみることといたしました。

三笠宮殿下は戦前には軍人として戦地に赴かれましたが、戦後は歴史研究者として国内外で活躍されました。そしてダンスの名手としても知られ、ダンス等レクリエーションの普及に尽力されました。

そこで、以上の3つの活動、「軍人(戦争関連)」「歴史研究」「ダンス等レクリエーションの普及」に関する場面が、報道の中でどれだけあったかを各番組で計測してみました。また「軍人(戦争関連)」の中で、特に戦争の反省や、当時の日本軍への批判が強く現れた場面については、その場面の時間計測とともに内容について記載します。

なお、一部複数の活動が同時に描写された場面もありましたが、その場合はいずれにも加算をしています。

1.NHK ニュースウォッチ9
トップニュースとして報道。検証対象番組の中では最も長く約16分の報道でしたが、その中で、「軍人(戦争関連)」と見られる場面は3分5秒でした。殿下と同じ連隊に所属していた99歳の男性が、軍人時代の殿下の思い出やお人柄について証言する場面に多くを割いていました。一方、戦争の反省や、当時の日本軍への批判を伝えた場面は18秒ありましたが、そこでは殿下の著書「わが思い出の記」から、以下の文を紹介しました。

『いわば「聖戦」というものの実態に驚き果てたのである。罪もない中国の人民にたいして犯したいまわしい暴虐の数かずは、いまさらここにあげるまでもない』

「歴史研究」の場面は3分30秒あり、殿下御自身が研究の動機を語られた場面もありました。「ダンス等レクリエーションの普及」の場面も2分16秒ありましたが、いずれの場面でも殿下のお人柄に重点が置かれていました。

ちなみに、この報道の開始後約3分半、若き日の軍人としての三笠宮殿下を紹介し始めてから、この報道の終わり近くまでの約10分間にわたって、画面右上には「気さくな人柄で活躍 多方面に」というテロップが表示され続けました。これは後述するTBSやテレビ朝日の編集とは対照的なものとなっています。

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2.日本テレビ「NEWS ZERO」
番組の後半に約1分50秒報道。「軍人(戦争関連)」の場面が17秒、「歴史研究」には6秒、「ダンス等レクリエーションの普及」には5秒を割いていました。

「戦争の反省、日本軍への批判」と受け止められる場面は10秒で、殿下のご著書「古代オリエント史と私」から以下の言葉を引用しました。

「今もなお良心の呵責にたえないのは、戦争の罪悪性を十分に認識していなかったことです」

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3.テレビ朝日「報道ステーション」
トップで約14分間(うちCM約2分)報道。NHK「ニュースウォッチ9」と同じく、三笠宮殿下の部隊に所属していた99歳の男性が、殿下のお人柄等を語る場面がありました。

「軍人(戦争関連)」の場面は5分2秒、「ダンス等レクリエーションの普及」の場面は32秒、「歴史研究」の場面は6秒でした。殿下の歴史研究に言及する場面はVTR中にはなく、スタジオでコメンテーターの後藤謙次氏が「陸軍参謀というよりは教壇に立たれた古代オリエントの歴史学者というイメージが非常に強い」と語った場面だけでした。

「戦争の反省、日本軍への批判」と受け止められる場面は合計2分42秒で、該当する場面は3箇所ありました。

一つ目は、途中CMに入る前、軍服姿で馬に乗る殿下の映像を背景に、引用元を明記せず以下の言葉を伝えました。『「聖戦」とか「正義」とか、よく叫ばれ宣伝される時代ほど、事実は逆に近い』

2つ目は、「若杉参謀」の名で中国に赴任されていた三笠宮殿下が、離任に際して将校を集めて講和をされた際の記録から、以下の言葉を引用した場面です。

『言論は極度に弾圧されており、少しでも日本に不利な発言をしたり、あるいは日本を批判する者は「国を売る者」などといわれ、一般幕僚(参謀など)匂いては大胆なる発言は困難である。私は幕僚の末席にありながら、僭越を顧みず、特に発言するところである。』

(ナレーター:戦争批判、軍部批判がタブーだった時代に、あえて発言すると言い切った三笠宮さま。まず、満州事変と、中国全土に戦線が拡大していった日中戦争について、現地の日本軍を厳しく批判していました)
『両事変とも、陛下のお考えまたはご命令で戦闘が生じたのではなく、現地軍が戦闘を始めてから、まことに畏れ多き言葉ではあるが —— 陛下に後始末を押しつけ奉ったとでも言うべきもの』

(ナレーター:そして、中国大陸について日本に欠けているものについては)

『真に誠心をもって、民衆を愛し、徳政を行い、中国4億の民に安居楽業を与えるのが目的でなければならない』
(ナレーター:最後に、日本の軍人に猛省を促されていました。)

『現在、日本人の、特に軍人にかけているものは「内省」と「謙譲」である。「新聞」「ラジオ」は日本人の悪いことは言わないし、また相手の良いことは言わない。我らはこれに惑わされてはならない。』

3つ目は、上記の講話でのご発言について、ノンフィクション作家・評論家の保坂正康氏が以下のように語った場面です。
『勇気ある発言だと思いましたね。ああいう発言というのは、はっきり言えば日本軍が中国でどういうことをしたか、言ってみれば残虐行為ですね。それを具体的に語っているわけですね。で、「どうしてこういうようなことを行うんだろう、こういう軍隊なんだろう」というのは、三笠宮殿下自身の中にすごい悩みと苦しみがあったと思うんですね。』

ところでこの報道では、開始後約6分のCM明け直後から終了に至るまで、画面右上に『三笠宮さま ご逝去100歳 戦争中 中国で「軍部批判」』とのテロップが7分30秒にわたり表示され続けました。これを算入するとすれば、正味12分間の報道の中で「戦争の反省、日本軍への批判」が7分40秒あったということになります。
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4.TBS「NEWS 23」
番組開始後約20分頃から、4本目のニュースとして4分40秒報道。

冒頭のテロップでは「100歳でご逝去」と小さく表示しながら「三笠宮さま 戦争への深い思い」と大きく表示したので、この部分は「軍人(戦争関連)」と計測しました(16秒)が、このとき同時にダンスを踊られる殿下の映像も紹介されました(9秒)。

「軍人・戦争関連」の場面は合計で1分18秒、そのうち「戦争の反省、日本軍への批判」と受け止められる場面は37秒。「自叙伝には、当時の日本軍の振る舞いを厳しく批判する記述も。」として、ご著書「古代オリエント史と私」から以下の言葉を引用しました。

『ある青年将校から、兵隊の胆力を養成するには、生きた捕虜を銃剣で突き刺させるにかぎると聞きました。また、多数の中国人捕虜を貨車やトラックに積んで満州の荒野に連行し、毒ガスの生体実験をしている映画も見せられました。「聖戦」のかげに、じつはこんなことがあったのでした。』

「歴史研究」には40秒、「ダンス等レクリエーションの普及」には合計18秒を割いていました。

ちなみに、上記自叙伝の紹介以降、画面右上に『三笠宮さま 100歳でご逝去 日本軍を批判「聖戦の陰に…」』というテロップが表示され、「歴史研究」の場面でもこれが表示され続けていました。このテロップを算入した場合は、4分40秒の報道のうち、「戦争の反省、日本軍への批判」の場面が1分19秒となります。

最後に、翌日から赤坂御用地内の三笠宮邸前に一般向けの記帳所が設けられることが告げられました。
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5.テレビ東京「WBS」
トップで1分30秒報道。

三笠宮殿下が明治以降の皇族では最も高齢の100歳であられたことと、今年5月に入院されてからの経緯を伝えて、翌日午前9時から一般記帳の受付が行われること、「斂葬の儀」が11月4日に行われることを報じました。

御生涯における活動に言及する場面はありませんでした。
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6.フジテレビ「ユアタイム」
番組開始後12分ごろ、3本目のニュースとして55秒報道。
三笠宮殿下が明治以降の皇族では最も高齢の100歳であられたこと、三笠宮邸に向かわれる天皇皇后両陛下、皇族方や安倍総理大臣らが弔問に訪れたことなどを伝え、最後に「斂葬の儀」と「一般記帳」の予定に触れました。

御生涯における活動に触れる場面はありませんでした。
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7.「薨去(こうきょ)」という用語について
皇族が亡くなられた際には、正式には「薨去」という言葉が用いられますが、検証対象番組の中でこの言葉が伝えられたのは、宮内庁による発表の場面の中だけでした。この場面があった番組は、NHK 「ニュースウォッチ9」、日本テレビ「NEWS ZERO」テレビ朝日「報道ステーション」でした。

しかしそれ以外の場面で「薨去」という言葉を用いた番組はなく、すべて「ご逝去」または「逝去」という言葉をテロップに用いました。(フジテレビ「ユアタイム」のみ「逝去」)

また、キャスターやナレーターはすべての番組で「亡くなられました」と述べていました。

8.一般の記帳受付と「斂葬の儀」
翌28日から三笠宮邸前で一般記帳を受け付けることを伝えたのは、対象番組の中ではTBS「NEWS23」、テレビ東京「WBS」、フジテレビ「ユアタイム」の3番組で、他はこの事を伝えませんでした。また、NHK「ニュースウォッチ9」とテレビ朝日「報道ステーション」は、11月4日に「斂葬の儀」が行われる事も伝えませんでした。

9.検証者所感
三笠宮殿下は戦後、長きにわたって歴史研究に取り組まれ、またダンス等レクリエーションの振興にも尽力さましたが、歴史研究の道に進まれるにあたり「戦争体験」が大きな影響を与えたことは事実ですので、これをある程度伝えることには一定の意義があると思われます。ただ、このようにして全在京キー局の主要報道番組による報道の仕方を概観すると、それぞれの伝え方の特徴を見て取ることができます。

本件を短く伝えたフジテレビとテレビ東京以外は、すべて何らかの形で「戦争の反省」というメッセージを伝えたことになりますが、NHK「ニュースウォッチ9」、TBS「NEWS23」テレビ朝日「報道ステーション」においてはいずれも、「中国で日本軍による暴虐があった」ことをクローズアップした場面がありました。特にTBSとテレビ朝日の報道は「戦争の反省、日本軍への批判」に長時間を割いており、テロップにおいてもそうした文言を長く表示しています。このことから、そこに重点を置いて伝えるという番組制作者の強い意図が見て取れることは確かであると思います。

ここまでお伝えした事実を踏まえて、この度の報道をどう評価するかについては、視聴者の皆さまに委ねたいと思います。
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放送法第4条は必要か?アメリカ大統領選挙の「教訓」
当会の呼びかけ人の一人でもある米カリフォルニア州弁護士のケント・ギルバート氏が、10月20日放送のBSフジ「プライムニュース」に出演しました。

番組では『“泥仕合”アメリカ大統領選 今後のアメリカと日米関係の行方』と題し、今回の米大統領選挙から見える諸問題について議論されました。

ギルバート氏の他にも手嶋龍一氏(外交ジャーナリスト・作家)と海野素央氏(明治大学政治経済学部教授)がゲスト出演しました。

この討論の中で、大統領選挙に大きな影響を与えた「メディア」の問題について語り合う場面がありましたので、その部分の要旨をご紹介します。

両候補の最後の討論会で、トランプ氏は司会者から「選挙結果を受け入れるか」と質問されたのに対し、「それはその時に考える」と答え、明言を避けました。これについて手嶋氏は「(民主主義の根幹に関わる)大変な発言だ」としながら、トランプ氏側の理由を説明しました。

「『目の前で繰り広げられている選挙キャンペーンで、メデイアは腐敗している。メディアが捏造した材料で選挙を動かしている。だから自分はその選挙結果を認めない』という風にトランプ氏は発言しています」

これに対しギルバート氏は

「それは事実なんですよ。だけどそれによって彼は候補になったわけです。共和党の中の予備選の時に、メディアは彼をすごく応援した。彼が口を開ければ全部ニュースのトップになるんですよ、何を言ったってね。民主党の候補の発言はその次に来る、共和党の他候補の発言は、取り上げるとしてもその後に来る。僕はずっと見ていて、これは危ない(と思った)。これは(メディアはトランプ氏を)落とすよ最後に、視聴率のために。あんまり上げると視聴率が下がるから今度は下げるんですよ。そうするとまた視聴率が取れる。そのぐらいのことはわかっているはずなんですよ彼。彼は大いにそれを利用したんだから、今度は被害者だと叫んでいるのは、すごい偽善者に聞こえる。」

と述べて、トランプ氏がメディアを利用して支持を得てきたことを指摘しました。
これを受けて手嶋氏は、大統領選挙の報道をボクシングのタイトルマッチに例えて、次のように述べました。

「『接戦』でなければ誰も見ようと思わない。テレビメディアとしては『興行』が成立しないと『飯の食い上げ』となるので、トランプ候補の発言を取り上げる。時に批判的に取り上げるとしても、全選挙キャンペーンの過程で70%以上がトランプ候補の発言を取り上げるとなると、どんなに批判的に取り上げてもどんどん支持率が上がる。その結果としてトランプ氏が大統領候補になっていくが、そのメディアに裏切られることになる。テレビ討論の直前は支持率は0.9ポイント差という全くの接戦だったが、今は裏切ったメディアに対してトランプ氏は居直っている。ワシントン・ポストが女性スキャンダルというカードを切ったのは、このままではクリントン氏が抜け出ることができなかったから」

海野氏は、

「トランプ氏の支持者は女性スキャンダルがあっても動じない。トランプ氏は最初に立候補した時から『メディアは腐っている』と言い続けている。そのため彼の支持者は『ファクトチェック』ができなくなっている」と指摘しました。

ここで司会の反町理氏が

「問題なのは、メディアが実は一番権力があって、メディアがどういうネタを出すかによって(結果が動かされることでは)」と問題提起しました。

これに対し手嶋氏は

「嘘でも何でも『取り上げられること』がトランプ氏の源泉になっているということになると、メディアは大変重要な責任を持っている。三大ネットワークの一つNBCの会長は『トランプを取り上げてなぜ悪い?その結果こんなに視聴率が稼げて経営が成り立っている』と本音まで語っている」と指摘。

そこで反町氏は、ギルバート氏に聞きます。

「今回の米メディアのやりたい放題は、表現の自由があるとはいえ、あまりにも行きすぎではないかと連邦政府が(言い出すのでは)・・・今回のトランプ報道がメディア自らの首を絞めることにはアメリカではならないんですか」

これに答えてギルバート氏は次のように述べました。

「ならないです。連邦政府はメディアに全く手を出せないんです。日本でいう『放送法』があるじゃないですか、私も『放送法遵守を求める視聴者の会』を立ち上げているんですけれど、日本にはそれがあるんですけれどアメリカではもうやめたんですね。なんでやめたかっていうと、ニュースソースがあんまりにも沢山あるものだから、別にいいんですよ、いろんな情報が入ってくるから聞いた人が判断すれば。だけど今回面白かったのは、普通だったらトランプ賛成、トランプ反対(に分かれる)、だけど、ほとんど全員、明らかに視聴率のためにトランプを上げたわけですよ。それも、左側のメディアまでが。だから、これはちょっと異常でしたね。」

手嶋氏は、今回のメディアに見られた現象から「アメリカン・デモクラシーの凋落が見られる」と指摘した上で、以下のように述べました。

「アメリカのメディアは日本の放送に比べてずっと自由なんです。どの候補を支持するかということだって自由ですよね。それがアメリカは一面で良いのですけれども、言論の自由とか報道の自由があるということは、それだけやっぱり自律的(であるべき)で、商売のためにそれを使ってはいけないという教訓がここにある」

要旨は以上です。

ここでギルバート氏が述べている「アメリカではもうやめた」法律とは、連邦通信委員会(FCC)の規則に存在していた「フェアネス・ドクトリン」と呼ばれるものですが、これは今の日本の放送法第4条における「編集準則」よりもずっと厳しいものでした。そのため、この規則がある間、米国の報道番組のキャスターはほとんど自分の意見を述べなかったといいます。

しかし、米国では1987年にこの「フェアネス・ドクトリン」を廃止しました。米憲法が保障する「言論の自由」に反すると判断されたためです。背景には、米国では放送の多チャンネル化が進み、「多様な言論」を視聴者が選んで受け取ることができると考えられたことがありました。

しかし、上記のギルバート氏らの議論からもわかるように、今回の米大統領選挙のテレビ報道は「多様性」が確保されているとは言いがたく、ほとんどの報道が視聴率を目的に横並びにトランプ氏を大きく取り上げるという現象が起こりました。そのことがトランプ氏を共和党の大統領候補にまで押し上げ、最終の選挙戦になると今度はスキャンダルによってトランプ氏の当選を阻止しようとしている模様です。

このような現象を抑止する規定が全く存在しない状態で、果たして民主主義は健全に保つことができるのでしょうか?

今年4月、国連人権委員会の「特別報告者」としてデビッド・ケイ氏が来日し、「日本の報道の自由が危機に晒されている」とする中間報告を発表しました。(当会としてはこの報告全体に対して異議がありますが)その中でケイ氏は、日本における放送法第4条の「編集準則」を廃止することを提言しています。

実は当会の中でも、もし今後、日本でも本格的な多チャンネル化や、放送への新規参入に門戸を開く電波オークション制度が実現するならば、この「編集準則」は廃止しても良いのではないかという意見は存在しています。

折しもつい先ごろ(10月18日)、テレビ番組をインターネットで同時に配信する「ネット同時配信」を2019年にも全面解禁するという方針を総務省が明らかにしました。これにより、電波放送とインターネット放送の境目がなくなることで、事実上の「多チャンネル化」に大きく進む可能性があります。
しかしながら、今回の米大統領選をめぐって明らかになったのは、必ずしも多チャンネル化が報道の多様性を約束しないこと、そして放送メディアの政治への影響が、インターネットが大いに普及した現在においても極めて大きくなり得るということです。これを踏まえて考えると、日本で将来、放送法第4条の「編集準則」のような規定をまったく撤廃するということには慎重であるべきではないか、という意見も当会検証チーム内から上がってきています。

例えば、国内では本年7月の東京都知事選挙の報道に対して、「特定候補ばかり紹介し過ぎており、政治的公平性に欠ける」との批判の声がありました。これに対しては「すべての候補を平等に扱うのは視聴者にとって公平とは言えない」という反論もありましたが、何れにしてもこうした議論の支えになっているのが、「政治的に公平であること」を定めた放送法第4条1項2号であることは間違いないでしょう。

そこで、我が国の民主主義の健全性を保持する上で、放送に公平性や真実性の確保を求める何らかの規定は、やはり将来も必要ではないか、との意見が持ち上がっているわけです。
当会では今後とも、異なる立場の方々とも意見を交わしながら考察を深め、放送のあるべき姿を探っていく所存です。

見過ごせない『テレビの過剰演出』

テレビ番組の「やらせ」がしばしば批判され、時には裁判にまで発展します。その一方で、「演出」と「やらせ」の境界線は微妙で、「テレビなんてそんなものだ」と達観する声も聞かれます。はたして、どこまでが許容範囲なのでしょうか?明確な線引きをすることは可能なのでしょうか?

福岡在住のカナダ人女性、ミカエラ・ブレスウェートさんが9月7日、「なぜ日本のテレビ出演を止めたか?」という動画を公開して話題になりました。ユニークな視点から日本での生活を紹介する動画で約27万人の登録者を誇る人気ユーチューバーのミカエラさんにテレビ局から出演オファーが来るのも不思議ではありません。一時は全国区のバラエティ番組に出演するまでになりました。

しかし、ミカエラさんが経験したのはテレビ局による「過剰なキャラづくり」。たとえば、スタッフが彼女の部屋に来て「何か面白いものはありませんか?」と聞く。結局ネタを見つけられずにコンビニへ移動。そこでバラエティに富む商品群を見て興奮する外人女性を演出することに。「もっと興奮して!」と言われるままに演じたミカエラさんは、その時点で在日6年目。いかに日本のコンビニが素晴らしくても、そうそう興奮するものではありません。無理して演じた番組にはなんと「ミカエラにとってコンビニはまるで遊園地!」というテロップが付けられていたといいます。

このような「やらせまがいの演出」に疲れながら、「宣伝になるから」という理由でギャラを払ってもらえず、さらにはツイッターやYouTubeで番組を宣伝して欲しいと頼まれるに至ってテレビ出演を止めることを決意したミカエラさん。友達から「テレビでは別人のよう」と言われることもつらかったとか。これが「演出」なのか「やらせ」なのか、と問われれば、ほぼ「やらせ」だと言えるでしょう。しかし、いかにもありそうな話でもあります。(※1)

一方、「これは編集ではなく捏造」と怒りを露わにするのは、TBS系バラエティ番組「ピラミッド・ダービー」(2016年6月19日放送分)に出演した池袋絵意知さん。ご自身のブログによると、顔相鑑定士の池袋さんは、入れ替わった双子を見分ける「双子見極めダービー」という企画の最終レースまで出演しました。ところが、オンエアされた番組を見てびっくり。決勝戦の4回戦まで残ったのに、3回戦で脱落したことになっていて、なおかつ、3回戦と4回戦が入れ替わって、実際の3回戦が最終戦の4回戦として放映されていたのです。しかも、そこに写っていたはずの池袋さんの姿は、CG加工で消されていたのでした。池袋さんの抗議に対し、TBSのプロデューサーは「行き過ぎた演出」を認めて謝罪したそうですが、ここまで来るとやはり、演出の範疇を越えた捏造と言われても仕方ないでしょう。(※2)

TBSは「演出の一環のつもりだった」と弁明したそうですが、非常に危険な兆候だと言えます。「テレビに演出はつきもの」と見過ごしていると、次第にエスカレートして、何をやってもいい、という所に行き着いてしまうからです。それがまさに、過去に問題になったサブリミナル的な手法や、悪意がある印象操作と思われかねない不適切なテロップなどです。特定の政治家の顔写真が、無関係な戦争犯罪に関する番組の中に挿入されるなど、とても偶発的な事故とは思えません。これらの行為は明らかに政治的な意図をもって行われていると疑われますが、倫理の頽廃という意味では、前述の「過剰で不適切な演出」と同じです。そして、テレビ局の倫理の頽廃が、オウム真理教による「坂本弁護士一家殺害事件」のような、取り返しのつかない事件を引き起こしてしまうのです。

こう考えると、やはり視聴者はテレビ局の「やらせまがいの演出」には厳しい目を持ち、「演出の一環」などという言葉の濫用を許すべきではないでしょう。「テレビなんてそんなものじゃないの?」などと諦め口調で言っているうちに、深刻な犯罪行為を許してしまう可能性があることを自覚すべきです。しかし、政党や政府が苦言を呈するとすぐに「言論の自由が圧迫されている」などという批判をするのもまたテレビ局です。政府とは別に、純然たる民間の視点でテレビ放送を検証するメカニズムが必要です。「視聴者の会」はそんな問題意識を持った方々と歩んで行きたいと考えています。

※1 ミカエラ・ブレスウェートさん本人が語る動画付き記事(BLOGOS)
http://blogos.com/article/190342/

※2 池袋絵意知さん本人のブログ
http://blog.ikebukuroh.com/?eid=1338

「お気持ち表明」後の報道のゆくえに思う事

9月5日のテレビ朝日の報道ステーションで「生前退位は”一代限り”浮上」との報道がありました。

天皇陛下の「お気持ち表明」から1ヶ月が経とうとしている今、政府では「皇室典範の抜本的な改正とは切り離して、今の天皇陛下の一代に限って生前退位を認めるという特別措置法で対応する」という案が浮上しているとのことです。その背景にある事情について、ナレーションはこう伝えました。

「政府としては、恒久的な退位制度などを含む”皇室典範の検討”は後回しにしたい考え。というのも、抜本的な議論を始めると、女性・女系天皇の容認や女性宮家の創設など、棚上げされている論点が再燃しかねないからだといいます。」

政府関係者は「女系天皇をどうするか、皇族の減少をどうするかと、生前退位と直接関係のないところまで広がってしまい、時間がかかってしまう」と語ったとのことです。

最後に有識者として神戸女学院大学の川西秀哉准教授がコメントしました。川西氏は、特措法と皇室典範改正の二段階に分けるのが現実的としながらも、「生前退位だけ認めて、女性宮家、女性天皇の問題は後からということになると、もう時間切れですという話になりかねない。本当に象徴天皇制をこれから長く続けていくとか、どうするかということについて踏み込まないまま議論が収束してしまう恐れがある」「先日のお気持ち表明の中で、安定的な皇統の継続が求められていたが、一代限りというのは安定的な継続ではない」として危惧を示しました。

また、特措法だけで終わらせようとする背景に、「安倍政権ならではの事情」もあるとのことです。「(安倍政権には)一つは男系(天皇)に対する根強い信仰と言ってもいいものがあるかなと思うんですけど、皇室典範全体を変えるとなると女性宮家とか女性天皇、女系天皇という問題に踏み込まざるをえない。そこに踏み込みたくない、今の制度を変えたくないという意識が強いんだなっていう風に思います」と川西市は語りました。

さて、この報道にはいくつか疑問があります。

同日(5日)の産経新聞によりますと、皇室典範の付則に「特別の場合」に限定して特措法で対応できる旨を追加する、と複数の政府関係者が明らかにした、とあります。これが事実ならば、「一代限り」の対応を想定していると断定はできないのではないでしょうか?

また、皇室典範を改訂するとしても、必要な箇所から始めればよいのであって、女系天皇や女性宮家等の議論を一から始めて結論を出す必要もありません。それはそれとして改めて包括的な議論をすればよいだけの話です。

男系継承は皇室の伝統で、理由があって続けられてきたことですから、川西准教授のように、「安倍政権の根強い信仰」と断じるのは乱暴ではないでしょうか?

「安定的な皇位継承」という観点からは、「女系天皇」や「女性宮家」のみならず、対案とも言える「旧宮家の皇籍復帰」もかねてから議論されています。現に、7月15日の毎日新聞は『旧宮家復帰、議論先送り 政府「生前退位」を優先』との見出しで、「生前退位」の検討を優先するため「旧宮家の皇籍復帰」の議論が先送りになると伝えています。今回の「報道ステーション」がこの件に一言も言及せず、女性・女系天皇、女性宮家といった議論のみ強調したのは不自然に感じました。

いずれにしても、今上陛下のお言葉をお言葉どおりに受け取れば、時代の変化に鑑みて生前の譲位を制度的に可能にするべきと理解できますから、それを可能にするために必要な改訂を速やかに行うのが政府の役目でしょう。

 

無用な憶測を絡め、あえて議論を一定の方向に誘導しようとするような報道ではなく、慎重に事実を見極めつつ、恣意性を排した公平な報道がなされることを願います。

 

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豊洲市場“柱の傾き”報道に関する検証と所感

 

~事実を曲げて柱が傾く!?~

10月2日に放送されたフジテレビ「新報道2001」において、東京都の「豊洲市場」に関する問題についての報道の中で、市場の建物の柱が傾いている疑いがあると指摘する報道がありましたが、のちにそうした事実はないと判明。翌週10月9日の同番組内で「誤解を招いた」ことを認めました。この件について以下に検証します。

1.報道内容要旨
番組冒頭のVTRでは最初に、小池東京都知事が9月30日の定例会見で、豊洲市場の「地下空間」について、盛り土をしないということをいつ誰が決めたのか特定できなかったと述べたことを紹介。ナレーションが『どれだけの人が納得できたのだろうか』と述べて、都側の姿勢が垣間見える例を紹介しました。

「地下空間」の存在が明るみに出る8日前の9月2日、番組側からの「地下にある空洞4メートルは何を目的に作られた空洞でしょうか」という質問に対し、都側からは「1階床下に排水管などを横引きするためにこの空間を活用しています」との回答があったとのこと。しかし一昨日(9月30日)の知事会見では、この地下空間が「モニタリング用の空間」であると発表されました。2009年の資料で、すでに地下空間は「モニタリング用空間」であると位置付けられていたにもかかわらず、都は「排水管のため」だと答えていたのでした。

都の情報開示の姿勢に憤るジャーナリストの池上正樹氏は「実際にはおそらく(盛り土の決定者)がわかっているはず」「隠したい何かがあって、かばいたい誰かがいる」「まさにブラックボックス、伏魔殿」と語りました。

次に、建物内の柱を写した1枚の写真が画面に映し出され、ナレーションは以下のように語ります。

『こうした問題は、なにも地下空間だけではない。我々は、ある一枚の写真を入手。あれっ?柱が傾いている!』
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ここで番組のタイトルが15秒ほど挟まってから、再び問題の写真に戻り、ナレーションが以下のように語りました。

『これは、中央区の渡部恵子議員が、豊洲市場の加工パッケージ棟4階の柱を撮影した写真。左の柱が、傾いているように見える。これは目の錯覚か・・・この件を、ある都議が都の職員に質問したところ、

「柱の歪みは、カメラレンズによるものだ」
と回答した。

レンズ特性に詳しい、あるプロカメラマンに聞いたところ。
「レンズによる歪みは外側に行くほど大きくなるものですが、この写真は1直線で傾いている。レンズによる傾きではないと思います。」
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本当にカメラレンズによる歪みではないのか?そこで、二人の専門家に写真の分析を依頼。もし事実なら、致命的な欠陥の可能性があるという。(画面は屋外に立つ二人。画面右下に「今年3月竣工」などと表示)』

建築エコノミスト・森山高至氏は「普通(建物の)柱は曲がらないですよ。梁ともつながっているし。柱に問題があるとすると梁や床にも、全体に影響があるはずなので」と述べました。

日本地質汚染審査機構理事長・楡井(にれい)久氏は「地下なら起こりやすいけど、4階で(柱が傾くのは極めて珍しい)。(柱が)傾いていることは確かですね」と述べました。

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ここで画面は再び問題の写真を映し、ナレーションは『もし柱の傾きが、レンズによる歪みではなかったら問題だ』と語ります。

続いてナレーションが『同じような現象が、豊洲市場の玄関口、市場前駅・・・』と述べながら、森山氏(前出)が撮影した市場前駅建物内の写真を映し、「床には大きな隙間ができていて、窓枠も大きくずれていた」として、駅の建物に歪みが生じていることを示しました。

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森山氏は「いつどうなったかわからないが、経年変化で多少動きがあるのはあり得る」と述べ、楡井氏は「ここは人工地層と言いまして、人間が作った地層なんですよ。一部分では液状化、流動化している。人工地層は沈下しやすいから(地盤沈下)という傾向はあります」と述べました。

ナレーションは『ちなみに、市場前駅の隣、有明テニスの森駅では大きな隙間などは見当たらなかった。我々が調べた結果、地盤沈下らしき隙間が確認できたのは、市場前駅だけ。近隣の駅では確認できなかった』と述べました。

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続いて、豊洲市場の場所にあった東京ガスの工場で働いていた元職員への匿名のインタビューが紹介されました。彼らはそこで『驚きの地盤沈下を目撃していた(ナレーション)』といいます。元職員によれば、LPガスタンクの周囲の地盤が数年のうちに沈下して、タンクの基礎杭がむき出しになり、最後には人一人が入れるほどの隙間ができて、その隙間を埋める作業が繰り返されてきたとのこと。また元職員は、地下水から有害物質が検出された原因についても証言しました。

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大島由香里アナウンサー:「さて、この豊洲問題どうやって安全宣言出していこうかっていうことが問われている中で、VTRでもご紹介いたしましたが、豊洲の地下盛り土問題以外にも問題があるのでは、と疑ってしまうような写真、今回入手したんですね。(パネルに掲示した写真を示す)中央区の、渡辺区議から提供していただいたこの写真なんですけども、豊洲市場加工パッケージ棟のこちら、4階の写真なんですけれど、柱がですね、このように(手持ちのペンを右側の柱に合わせ垂直にする)真っ直ぐ立っている中で、この柱がちょっとこっちに傾いている(ペンを左の柱に近づけ傾ける)ようにも見える(須田哲夫キャスター:確かに見えます見えます、はい)写真があります。さらにこのようにヒビが入っている写真(床のコンクリート表面にヒビがあるように見える写真を示す)ですとか、ゆりかもめの市場前駅、見てみますと(市場前駅構内で撮られた写真を示す)階段部分などなどでですね、こういった隙間とか歪みというのが、見られたわけなんですよね。」

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須田哲夫キャスター:「う〜ん。森山さん柱の場合ですね、確かにカメラのレンズの歪みということも考えられるんですが、森山さんどう思いますか」

建築エコノミスト・森山高至氏「うーん、あの、まあ確かにこれ、ちょっと、妙なカタチに曲がってる、もし歪みがあるなら同じ方向にですね、上でこう梁でつながってますから、建物っていうのは(須田:二つが並行に見えないですね)そうなんです。だから四角なものが少し歪むとするとひし形にちょっと、っていう。ところがこれ、角度がね、違うので、非常にこうまあ、奇妙だなと。(須田:どういう見方もできちゃうってことですか?)あのー、例えばそのレンズの歪みだとか、そういったこと、なのかなあと。もしそうでなければ、はじめからこう、左の柱だけが、ちょっと位置が違っていると。垂直に立ったものが微妙にずれたと言うふうには何か思えない。」

須田:「なるほどねー。」

ここから話は地下水の問題に移り、議論が続きます。

2.10月9日、問題を認めた場面

問題の放送があった翌週の10月9日の同番組で、終盤の8時18分頃、「誤解を招いた」ことを認める説明がありました。ここでは、約1分半にわたって須田哲夫キャスターが一人で語りました。
『先週、豊洲市場の加工パッケージ棟4階で、9月に撮影された写真を紹介し、カメラのレンズによる可能性もありますが、柱が傾いているように見えるとお伝えしました。東京都はですね、番組の取材に対し、傾いていない4階の柱の写真を示し(柱を正面から撮った写真入りのフリップを表示)「10月2日、当該柱の現状を改めて確認したが、歪みや傾き、ひび割れなどの不具合は認められなかった」と回答しました。』
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その上で須田キャスターは、構造設計一級建築士の高野一樹さんと筑波大の蔡東生准教授のコメントを、顔写真つきのフリップを見せながら紹介しました。

『一級建築士の高野一樹さんは、「柱は床や梁が固定されているので、大きく傾くことは基本的にない。傾いているなら天井にもしわやひび割れが出る」と述べました。映像解析が専門の筑波大学・蔡東生准教授は、「スマホなどのカメラは非常に広角にできている。この特性で傾きが出てしまった可能性が高い」としています。こうしたことから、この柱が傾いて見えるのは、撮影の影響とみられます。』

続いて須田氏は、スタジオで用いられた写真が加工されていたことを説明。
『また、この写真を紹介した際、VTRでは、提供された写真をそのまま使用しましたが、スタジオでは右側の柱を垂直に合わせたため、左側の柱の傾きが結果として強調されることになりました。』

最後に須田氏は以下のように述べました。

『一連の報道により誤解を招いたことを、真摯に受け止めます。』
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3.放送法第4条に照らして

この度の報道は、一枚の写真のみを根拠にして、十分な事実確認をしないまま、当該建造物の柱が傾いているかのように強く印象づけるものとなっています。カメラのレンズによる歪みである可能性にも言及はしているものの、多くの場面で「柱が傾いている」ことを強調しています。また、市場前駅にある歪みや隙間について、十分な事実確認をしないまま「地盤沈下によるものと思われる」とした上で当該柱の件と結びつけ、さらに過去にこの場所にあった東京ガス工場の地盤沈下の例も援用して、豊洲における地盤沈下の影響で当該建造物の柱が傾いているかのように摘示していると言えます。しかし当該柱が傾いているという事実はなかったので、結果としてこの報道は、放送法第4条1項3号「報道は事実をまげないですること」に抵触する恐れがあるものと考えます。

4.検証者所感

この度の報道からは、豊洲移転を取り上げ、その欠陥を鋭く指摘すれば視聴率を稼げるであろうと、現今の流行に乗るべく躍起となった番組制作者が、一枚の写真のみを根拠に、十分な事実確認を待たずに豊洲市場の欠陥として公表を急いだ「暴走」を見て取ることができます。多くの視聴者が感じたであろう疑問は、なぜ一枚の写真を根拠に憶測ばかりを繰り返し、さっさと現場検証をしないのか、ということです。市場側に現場へのアクセスを申し込み、もし拒否されたら、そのこと自体にニュースバリューがあったはずです。現場で検証すれば、カメラの広角レンズが原因であることも即座に判明したでしょう。基本的な調査を行わず、いたずらに欠陥工事を想起させる「コメント」ばかりを集め、挙句の果てには「柱の曲がりが強調される操作が写真になされていた」では、あまりにもアンプロフェッショナルな番組制作であると断じざるを得ないのではないでしょうか?

翌週の10月9日に「誤解を与えた」ことを認めた場面では、最後に須田キャスターが『一連の報道により誤解を招いたことを、真摯に受け止めます。』と述べましたが、謝罪に類する言葉はなく、頭をさげることもなく、軽く頷くようにして目を伏せる仕草をしただけでした。この態度からは、番組側がこの件について謝罪する必要はないと認識していることが明らかであると思います。しかし、それで良いのでしょうか。

一枚の写真に対する、撮影者自身の思惑からくる誤解に、番組制作者の思惑が重り、悪意なしとしても結果として上述のように事実をまげた悪質な報道になってしまったのですから、謝罪のみならず、再発防止策の策定を約束する程度までは必要な事案ではないのでしょうか?

5.BPOの対応は?
「報道は、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るために最善の努力を傾けなければならない。放送人は、放送に対する視聴者・国民の信頼を得るために、何者にも侵されない自主的・自律的な姿勢を堅持し、取材・制作の過程を適正に保つことにつとめる。」

これは「放送倫理基本綱領」(1996年9月19日 NHK民放連により制定)の中の一文です。

今回のフジテレビによる報道は「事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るために最善の努力を傾け」たものとは、到底言えないと当会は考えますが、いかがでしょうか。そこで、「取材・制作の過程を適正に保つ」ために、BPO(放送倫理・番組向上機構)がこれを取り上げて指導力を発揮するかどうか、その対応の如何を注視したいと思います。

電通の広告不正請求問題に対する各局の報道について

去る9月23日、電通がネット広告に絡み不適切な業務が行われていたと発表し謝罪しました。この件を新聞各紙は当日に電子版で報じていますが、テレビでは報道していないのではないかとの声が当会に寄せられました。そこで当会では当日の東京キー局の報道番組でこの件が報道されたかどうかを確認してみました。その結果は以下の通りです。

NHK
  報道せず*

日本テレビ
「NEWS every」にて午後5時22分から1分14秒

TBS
「Nスタ」にて午後6時39分から52秒

フジテレビ
  報道せず

テレビ朝日
「スーパーJチャンネル」にて午後6時49分から52秒

テレビ東京
「ワールドビジネスサテライト」にて午後11時00分からトップで1分37秒

*NHKでは、午後11時25分〜0時5分までの「ニュースチェック11」では一瞬、このニュースを表す言葉が画面の一部に映る場面がありました。今日のニュースの一つとして並んではいたが、読み上げなかったという様子でした。

この結果でわかることは、当日のテレビでこの件が「全く報道されなかった」わけではないということです。ただ、取り上げた局のうち、日本テレビは夕方のニュース番組の中頃、TBS、テレビ朝日は同じく夕方のニュース番組の終盤に短く伝えたのみで、午後7時以降の大型報道番組の中で伝えたのは、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」だけでした。

もちろん、日々起こる無数の事象から、放送に取り上げられることは限られています。その中で、個々のニュースの重大性の如何については、それぞれの放送局の判断があって然るべきです。

たとえば同じ「不正請求」の問題でも、最近続々と発覚した地方議員の政務活動費の不正問題は連日大きく報道されましたが、住民の税金が直接不正利用された問題に比して、今回の電通の案件は企業間のトラブルにとどまっているので、そこまで一般視聴者の重大な関心事とは捉えないという判断があったとしても一定の合理性はあるでしょう。

ただ現実に、テレビ朝日「報道ステーション」やNHK「ニュース7」及び「ニュースウォッチ9」、TBS「NEWS23」等といった、注目度の高い大型報道番組では一切取り上げられなかったという状況があり、その結果として、このニュースにあらかじめ関心を持つ人のもとにはこの件のテレビ報道が届かず、「テレビはこの件を全く報道していない」という印象とともに、このニュースが不当に軽んじられていると感じたケースが少なくなかったことは確かと思われます。

つまり、インターネットを中心に多様な情報を得ている一般視聴者が期待するテレビ報道と、実際に供給されているテレビ報道の間に、ズレが生じた事例であったとは言えるでしょう。

皆様はどう感じられたでしょうか?

政権から報道機関への圧力はあるのか!?

去る6月末に発売された「朝日ジャーナル緊急復刊号」で、ジャーナリストの池上彰氏が、TV放送に対する政権からの圧力の詳細を具体的に語っていると、ニュースサイト「リテラ」が報じたことで、ネット上では「池上氏が安倍政権のマスコミへの圧力を証言」として広く拡散されています。これに先立つ4月19日に発表された国連特別報告官デビット・ケイ氏による中間報告には、彼が日本滞在中、多くのジャーナリストが「政権から圧力を受けている」と証言したと書かれています。したがって、リテラの記事が本当であれば、池上氏の証言が重要な証拠になる可能性があります。

当会は、政治による放送への介入には一貫して反対する立場です。そこで、池上氏が何を語っているのか、問題の記事を確認してみました。

その記事は、池上彰氏と原寿雄氏(元共同通信編集主幹)による「重鎮対談 へたれメデイアを叱る 安倍政権という主人持ちのジャーナリストになるな!!」と題する対談記事です。

まず最初に池上氏は、国際NGO「国境なき記者団」が発表している「報道の自由度ランキング」で、日本が前年の61位から72位に下がったことに触れ、「2010年には11位だったことを考えると、急速に落ちています」と指摘しています。

昨今、この「報道の自由度ランキング」を取り上げた多くの報道が、その数字を無批判に受け入れ、一人歩きさせるばかりでした。しかし、このランキングで70位の韓国では、朴大統領に関する記事をめぐって産経新聞ソウル支局長が出国禁止処分を受け起訴されたことは記憶に新しいと思います(後に無罪判決を受け釈放)。そんな韓国よりも日本のランキングが下だと聞いたなら、納得する人はあまりいないのではないでしょうか。また、「特定秘密保護法」が日本のランク低下の理由とされることも不可解です。日本では、この法律による処罰は未だ一件もありませんが、このランキングの上位にある国々にも国家秘密保護のための法律があり、それに基づく処罰も多数実行されているのです。さらに言えば、2010年から今年までに、我が国では政権交代があったとはいえ、大きな政治体制の変化はありません。にもかかわらず、50以上もランクを下げるということ自体が、特定の政治的バイアスの存在を物語っています。これを「国際社会の評価」として無批判に紹介すること自体が、その特定の意図に協力した政治活動であるとも言えます。

一方、「フリーダムハウス」という米国の国際NGOが同時期に発表した「報道の自由2016」によれば、日本は44位ですが、アジア全体の中で「報道の自由がある」とカテゴライズされているのは日本と台湾だけです。もちろんこの「フリーダムハウス」にも政治的な意図はあると見られるので、この評価が正しいと断定できるわけでもありませんが、このような相対的な視点をテレビ報道はほとんど取り上げず、「日本では報道の自由が危機に瀕している」というストーリーに適した事柄だけを視聴者に伝えようとしてきました。池上氏の取り上げ方も基本的にそれと同様と言えます。

その上で池上氏は、「国が報道の自由を制限しているのか、それとも報道機関の側が勝手に自主規制したり、忖度(そんたく)したりして、自ら自由を狭めているのか。日本では後者が多いような気がします」と述べて、問題の多くは報道機関側の「自主規制」にあると指摘していますが、そこで池上氏が「自主規制」の例として最初に挙げているのは、高市早苗総務相が国会答弁で「政治的公平性を欠く放送を繰り返した放送局に電波停止を命じる可能性」に言及したことについて、ジャーナリストらが開いた抗議会見を、「NHKは取材にも行かなかった」という事実です。これを池上氏は「情けないですね」と批判しています。

ちなみに当会では、高市総務大臣のいわゆる「電波停止発言」については、野党の質問を受けて現行法に則った答弁をしたもので、電波を停止するという積極的な意図はなく、ただ法理上は可能であるから、未来永劫決して行わないとは言えないと言っているに過ぎないと考えています。これを大問題であるかのように取り上げた一部の報道や、この答弁に「怒って」記者会見を開くなどという行動は、相当の誤解または恣意性に基づいていると言わざるをえません。仮に放送法第4条が倫理規定であったとしても、問題はその常識的な指針にのっとる努力がなされているかどうか、です。倫理規定に過ぎないから無視してもよい、ということにはならないはずです。

さて、次に池上氏が語っているのが「政権からの圧力」についての話ですが、リテラでも引用している発言は以下のようなものです。
「最近までは権力を持つ側は『メディアに圧力をかけてはいけない』というのが共通認識でした。(略)ところが、安倍政権になってからは、自民党はおもなニュース番組をすべて録画して、細かい部分まで毎日のように抗議し、訂正を求め、注文をつけてくる。すると、テレビ局は『面倒くさい』となる。対応が大変で、次第に『文句を言われない表現にしようか』となってしまうのです」

この話が本当だとすれば、池上氏自身を含めてメディアが取り上げれば大きな問題にすることができるでしょう。しかし、そのためには具体的な裏付けとなる事実が必要です。池上氏には是非、検証可能な具体例を示して頂きたいと思います。

ところで、上記の池上氏の発言と同様の話をした人がもう一人います。先の東京都知事選挙に立候補したことが記憶に新しい鳥越俊太郎氏がその人です。「高市総務大臣の発言に抗議したジャーナリスト」たちが、外国特派員協会で記者会見を行った際に、その発言はありました。会見の質疑応答で、「取材や報道を理由にジャーナリストが逮捕されたりする状況は日本にはないのに、なぜメディアがそれほど萎縮するのか、どういう圧力があるのか」という質問がありましたが、これに答える中で鳥越氏は以下の発言をしました。

「わかりやすい形でメディアがプレッシャーをかけられて萎縮しているということではなく、目に見えない形で、気がついたら後退していたのが現実でしょう。(中略)メディアが権力を監視するのが世界の常識だが、日本では権力がメディアをチェックするということに今なっているわけです。で、一つ一つの番組を記録して、問題あると思ったら誰かしかるべき人に言うとか、オフ懇で言うとかして政権側の意思を伝える、ということを日常的にやっているわけです。だから日本のテレビ局はどんどん物を言わなくなって、これ以上言ったら地雷を踏むというような手前で止まっちゃう。」

もしや池上氏の話は、鳥越氏から聞いたこの話が元になっているということではないのでしょうか。鳥越氏は、その話を誰から聞いたのでしょうか。いずれにしても、確たる根拠がないまま、こうした伝聞のような情報を広めることは極めて無責任なことであり、ジャーナリストとしての矜持が問われねばならないと指摘せざるをえません。

一方、池上氏がもう一つ「圧力」の例として挙げているのは、自身の体験による事例です。
「私が特定秘密保護法についてテレビで批判的な解説をした時も、すぐに役所から『ご説明を』と資料を持ってやってきた。こういうことが日常的にあるわけです」

もしも、この役人による「ご説明」への対応次第で池上氏の立場に何らかの影響がある恐れがあったのならば、それは明らかに圧力ということになりましょう。しかし、池上氏ほど影響力のあるジャーナリストに誤解されては困る、説明したい、と感じるのは当然のことであって、それを圧力と受け取るのは過剰反応ではないでしょうか?そして結果として、池上氏は「萎縮」などしていないと見受けられます。「へたれメディアを叱る」という対談のタイトル通りならば、こんなことは圧力として受け止める必要はない、自身のように自主自律の精神を堅持すればよいと、後輩たちを激励するべきところではないでしょうか。

当会は、「政府による報道への圧力」、「報道機関による忖度、自主規制」のいずれにも反対いたします。しかし、事実的根拠のない「圧力」をさも実在するかのように言い広める行為は悪質であり、看過するべきでないと考えます。リテラがこの池上氏の対談記事を「政権からの圧力の詳細を具体的に語っている」として広めたことも、実に無責任と言わざるをえません。

ところで、当該対談記事で池上氏の相手を務めている原寿雄氏の話も興味深く拝読しましたので、最後に言及しておきます。

池上氏は、メディアの「萎縮」の原因として「政権の圧力」の他に、視聴者からの抗議、いわゆる「電凸」を挙げていますが、それに対して原氏は次のように述べています。

「私はメディア自身も権力化していることが問題だと思っています。それでも国民によるメディアへの監視が厳しくなり、対抗できるようになってきた。それではじめてメディアと国民が対等になれるんです。」

さらに原氏は、「大衆の抗議」に対するメディアの対応について「勝ち続けではダメです。メディアと大衆が戦って、たまにはメディアが負けてもいいんです」と述べています。

これに対して池上氏が「たまにではなく、最近はよく負けてます(笑)」と指摘すると、答えて原氏は「もちろん、排他的な熱狂に圧倒されてメディアが負けてしまうのは良くないですよ。ただ、民主主義では、批判されたら反論できる。その場をメディアが設定できるわけです。総括することが大切ですね。それが民主主義なんです」と語っています。

このような原氏の考え方と、当会の問題意識とは共通するものがあります。「メディア自身も権力化している」という事実認識は、まさに当会の発足の理由と言ってもよいものです。当会が「国民による監視の目」を代表しているとは申しませんが、当会が提起した問題を契機として、放送というメディアのあり方を考える議論に、より多くの方に加わって頂きたいと願って活動しているところであります。

一方、原氏の発言の中には、現今の在京TV局における報道の在り方に通じていると感じるものもありました。例えば原氏は自らのジャーナリズムの原点について、こう答えています。

「僕は自らが体験した戦争中の日本を否定することで、新しい時代を作ろうと思ってジャーナリストとして仕事をしてきました。しかし、安倍さんが書いたり話したりしていることを読むと、安倍さんは我々の世代が否定した日本を生き返らせようとしているのではないでしょうか」

もちろん、先の大戦について深い反省や考察を傾けることは大切です。昨年の安倍首相による「戦後70年談話」は左右両陣営から批判されましたし、実際の政策、行動については各自が判断し、必要と思う時に批判していけばいいことです。

しかしながら、「戦争中の日本を全否定すること」を大前提とし、否定をしなければ民主主義の敵とでもいうような、排他的な思い込みに囚われて「ジャーナリズム」に携わってきたとしたら、自らが正義と信じる意見を全面的に展開し、自らが異端視する考えを報道から締め出すことが有っても良いと考えるでしょう。そうだとすれば、戦争に非協力的な者を「非国民」とした戦時中のメディアと、実は本質的に変わりないのではないでしょうか。そのような排他的な発想が日本のメディアに根強くあることが、昨年の安保法案に対する報道のように、賛成論が存在しないかのような、一斉で一方的な報道姿勢や、岸井成格氏の「メディアとして(安保法の)廃案に向けて声を上げ続けるべきだ」という発言にもつながったのではないか。そのように推察することができます。

前述の「報道の自由ランキング」の報道を見ても、異論を挟むことを許さない一方的な姿勢が垣間見えます。これはもはやジャーナリズムではなく、プロパガンダの領域であって、池上氏にはその領域に足を浸して頂きたくありません。一般視聴者からの放送への抗議が増えている背景にも、インターネットでは容易に知ることができる多角的な情報を、恣意的に排除し続ける放送事業者の頑な姿勢に、少なからぬ視聴者が苛立ちを覚えていることの表れと考えることはできないでしょうか?

国民が、正確かつ多様な情報を受け取った上で、各自が冷静に検討し、我が国の主権者としての責任ある判断をしていく。それを可能とするためには、放送法を遵守した放送、すなわち「政治的に公平で、事実を曲げず、意見が対立している問題についてはできるだけ多くの角度から論点を明らかにする」放送が必要だと当会は考えます。そのため、今後とも冷静な議論を喚起する活動を、虚心坦懐に進めてまいる所存です。