テレビの偏向報道を監視する一般社団法人 放送法遵守を求める視聴者の会(所在地:東京都港区、代表理事:百田 尚樹、以下 視聴者の会)は、平成30年11月12日(月)の各局報道番組について、以下の通り検証を実施いたしましたので、ご報告いたします。

 

■今回の検証のポイント

①夕刊フジが11月10日(土)に報じた「国民・大西議員の国会通行証問題」について、週明けの11月12日(月)に取り上げたテレビ局・ニュース番組はなかった。

②自民・片山さつき議員(地方創生担当大臣)では、同様の問題を各局が大きく取り上げていた印象があったが、今回は全く取り上げていない。

 

 

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今回のテーマはこちら!
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■8月16日 TBS「ひるおび!」
「ミサイル発射の可能性は?鍵握る米韓演習迫る」
■7月13日 TBS「ひるおび!」
「支持率最低で“最大のピンチ” これまでの【安倍一強】理由とは?」
■7月12日 フジテレビ「FNN スピーク」
「首相が被災地 大分を訪問」
■7月1日 TBS「報道特集」
「香港について」
■6月17日 TBS「報道特集」
「日本について」
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様々な報道によって既にご存じの方も多いと存じますが、当会へも検証依頼や見解について多数お問い合わせ頂きました。
当会と致しましては、放送法や視聴者の知る権利の観点から検証の必要性を認識しており、今回も丁寧な検証に努めました。
大変遅くなりましたが、ここに当会の見解を発表致します。

 

▼当会の見解▼

今年1月2日に、東京のローカルテレビ局「東京MX」が放送した報道バラエティー番組「ニュース女子」において、沖縄・高江の米軍ヘリパッド建設に反対し現地で活動している人々について、沖縄での取材VTRとスタジオでの議論が放送されました。この番組内で「東京で反対活動参加者を募集し、一人につき5万円を支給して送り込んでいる」としてとりあげられた団体「のりこえねっと」から抗議があり、番組を提供したDHCシアター側が批判に反論するコメントを発表するなど物議を醸しています。そこで当会として、この番組を視聴者の観点から検証した結果として、以下に見解を述べます。

 

▼高江ヘリパッドの機動隊員「土人」発言問題▼

昨年10月、高江のヘリパッド建設現場において、大阪府警から派遣された機動隊員が「土人」などと発言したことが大きく報道されました。これについて、テレビ報道では殆どすべてのコメントが機動隊員を強く非難するもので、その背景にある反対派活動家の暴言や不法行為について言及した報道は見られませんでした。

新聞においては産経新聞が「沖縄米軍基地反対派ルポ」等の記事で、反対派の不法行為や地元住民とのトラブル等について記していますが、テレビ報道においてはそうした視点が皆無でした。

こうした状況について、当会では在京キー局6局に対して公開質問状を発しましたが、その後も「反対」側の論調が一方的に報道されて、反対派の問題点や、賛成派の意見等はほとんど紹介されない「沖縄報道の全体主義」とも言える現状です。1月2日に放送されたMXテレビ「ニュース女子」の報道は、そうした「沖縄報道の全体主義」に一石を投じる試みであったと言えます。

 

▼「ニュース女子」番組側の編集について▼

しかしながら、番組中では現地の反対派に対する取材を「トラブルの恐れがある」との理由で断念しており、反対運動を支援する在京の団体「のりこえねっと」について紹介しながら、その「のりこえねっと」にも一切取材をしていません。また、現地住民として出演した3名も、いわば「反対派の反対派」と言える立場から発言しています。その結果、番組中で反対派やその賛同者が直接取材された場面は一切ありませんでした。

その上でこの番組では、皮肉のこもったナレーションや、予断を与えるようなテロップなどで、反対派に対する否定的な印象を醸し出す表現を多く行っており、結果的に反対派として活動する人々を一方的に批判し揶揄する内容となっています。こうしたやり方は、当会がこれまで見てきた在京キー局の報道の中でも散々見られたものですが、それらにも増して、この番組の編集は拙速であったと言わざるをえません。

このような問題があることから、この番組に対し「放送法に違反している」との批判が起こっています。また、「のりこえねっと」側は、この番組が「人種差別に基づくヘイト表現を行った」として抗議しています。そこで当会はそれらの批判の妥当性について検討しました。

 

▼放送法第4条からの観点▼

まず、放送法第4上に基づく批判についてですが、これには2つの論点があると考えます。

一つは、放送法第4条1項4号「意見の分かれる問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を満たしていないのでは、という問題です。政治的な問題を扱った放送が一方的であれば、同法第4条1項2号「政治的に公平であること」についても問題になります。

この番組では上述の通り、反対派として活動する人々を一方的に批判し揶揄する内容となっており、「できるだけ多くの角度から」の論点は取り上げていないので、この番組単体で見れば「政治的に公平」とは言えません。しかし一方で、昨今のテレビ報道の全体を見渡してみれば、逆に基地建設に反対の意見のみをクローズアップした報道が殆どで「沖縄報道の全体主義」と言えるような状況です。

 

▼沖縄報道の全体主義的報道の現状▼

たとえば、昨年12月25日のTBS「サンデーモーニング」では、沖縄最大の米軍施設である北部訓練場のおよそ半分以上に当たる約4000ヘクタールが返還されたことについて、「米軍が要らない土地を返しただけ」だとして全く評価せず、返還の条件であったヘリパッドの新設や、辺野古基地の建設などの日本政府の対応を一方的に非難するコメントばかりを放送しました。

また、12月27日のNHK「ニュースウォッチ9」では、辺野古の基地建設工事が再開されたことについて、キャンプシュワブ前で抗議するおよそ60名のうち2人の意見を放送した後、「那覇市でも反対の声」として一人の那覇市民の反対意見を放送したのみでした。

このような、「沖縄報道の全体主義」と言えるテレビ報道の中において、今回のニュース女子の放送は、むしろそれまで無かった「多角性」をもたらそうとした企画と言えます。したがってこの場合、放送法第4条1項2号および4号に基づいて、この番組だけ特に取り上げて指弾するのは適切ではないと考えます。

 

▼放送法第4条1項3号「報道は事実を曲げないですること」▼

もう一つの論点は、この番組が放送法第4条1項3号「報道は事実をまげないですること」に違反しているのではないかというものです。もちろん、娯楽性を加味した「報道バラエティー」と銘打つ番組といえども、報道には常に正確性が求められます。その点では、この番組は明らかな問題を含んでいます。たとえば「のりこえねっと」が「高江市民特派員」を募集して「往復の飛行機代相当」として一人につき5万円を支給したことを取り上げ、これを反対デモ参加者への「日当」と称して、反対派の人々が金銭目的でデモに参加している証拠であるかのように扱いましたが、交通費として支給された金銭であれば「日当」とは異なるのであって、これは事実と異なる表現と言えます。

また、「反対運動を扇動する黒幕の正体は?」と題した議論の中で、その「一人5万円」の資金源について、のりこえねっとが「カンパによる」と明記していることには触れずに「わからない」として疑惑を強調する議論を展開しています。これらの点において、放送法第4条1項3号「報道は事実を曲げないですること」に違反している恐れがあると思われます。

その他、この番組の内容には多くの問題が指摘されていますが、どの点が虚偽であり事実を曲げているのか、あるいは批判が当たらない点があるのかについて、MXテレビ側による検証と外部からの知見を合わせて突き止めていく他ないと考えます。

 

▼「ヘイト発言」について▼

次に、「のりこえねっと」共同代表の一人である在日三世の辛淑玉氏に対し「人種差別にもとづくヘイト発言を行った」として、「のりこえねっと」側が番組に抗議していることに関しては、その抗議理由は妥当ではないと当会は判断いたします。

当該場面では、女性タレントが「中国が反対する理由は、沖縄にアメリカ軍がいなくなってほしいというのはわかるんですけど、韓国が、そうやって沖縄に加わるのはなんで?」と述べていますが、この発言の意図は、「中国が国家意思として沖縄の基地反対運動に力を注いでいるとしたらその理由は理解できるが、韓国が国家意思として介入してくるとしたら、その理由はわからない」との疑問にあるので、「人種差別にもとづくヘイト発言」とは考えられません。

この発言の前に、「反対運動を扇動する“黒幕の正体は?”」と題した議論で、今回の取材にあたった井上和彦氏が、デモに中国人や韓国人が多く参加していることを指摘し、「のりこえねっと」の資金源について須田慎一郎氏が辛淑玉氏の名前を挙げて「在日差別と闘ってきた中でカリスマなのでお金が集まってくる」などと述べています。そして女性タレントの質問に答えて他の出演者から「韓国には親北派がいる」という発言がありました。その結果、辛淑玉氏の背後に北朝鮮の国家意思があるとの印象を与えかねない点は批判の余地があるでしょう。ただ一方、のりこえねっと側の抗議文では「高江で起っている事実を取材し、その情報を提供することは、ヘリパッド建設に対する賛否とは別の問題」としているものの、同じ文中で「米軍基地をめぐる日米両政府の沖縄への強権的・差別的対応は、国籍にかかわらず、この国で生きるすべての人々、とりわけ在日を含むマイノリティにとって重大な問題」という独自の論理展開により、辛淑玉氏自らがいわば「闘争」の当事者であることを示唆しています。

さらに、辛淑玉氏は「のりこえねっと」主催の集会で、現地の反対運動に対し「消火器など持っていくと良い」「ヘリコプター使って(建設物資を運んで)来るなら、風船を上げたりグライダーを飛ばしたり、何したっていい」と述べるなど、違法行為を含む「過激な反対運動を扇動している」と言われても仕方のない発言を行っています。今回の番組のように根拠を示さずに話を大きくするのではなく、そうした諸事実をもとにして、本人にも取材をしてから議論すれば、説得力のある批判も可能だったのではないでしょうか。

いずれにしてもこの場合、「人種差別によるヘイト発言」という「のりこえねっと」側の指摘はあたらないと考えます。「ヘイト」の指摘が乱用されることで、必要以上のタブーが拡大され、自由闊達な議論が封じられてしまう恐れがあることを、当会は懸念します。

 

▼朝日新聞社説のダブルスタンダード▼

ところで、朝日新聞が1月28日の社説で今回の「ニュース女子」を批判し、以下のように述べています。

『放送法は、報道は事実をまげないですることや、意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすることを定めている。MXテレビは、番組の意図や放送までの経緯、社内のチェック体制などを早急に検証し、社会に広く説明すべきだ。
放送は健全な民主主義を発展させるためにあり、番組は明らかにその逆をゆく。対立をあおり、人々の間に分断をもたらすことに放送を使う行いは、厳しく批判されなければならない。』

ここで朝日新聞が「放送法第4条」を持ち出して、MXテレビに検証と説明を求めていることは、当会がいままで提唱してきたことと軌を一にするもので、ようやく噛み合った議論が出来る機会が生じてきた可能性には期待しています。

それにしても、当会が一昨年の安全保障法制に関する報道について、全キー局を通しても反対意見が約9割という「メディアの全体主義」とも言える放送法違反状態について問題提起したとき、朝日新聞は放送事業者に検証や説明を求めるのではなく、当会の問題提起を「放送法を一方的に解釈して組織的に働きかけようとしている」として排除する社説を記しました。当時のテレビ報道は弁護して、今回の「ニュース女子」は猛烈に批判する、その基準はどこにあるのか、ぜひ問うてみたいと思います。

「放送は健全な民主主義を発展させるためにある」とはもちろんその通りで、当会もそれを目的として設立されました。しかし、沖縄の基地問題をめぐっては、現実に存在する多様な事実や対立的な見解を報道せず、視聴者を基地建設に反対という唯一の見解に導こうとするような「沖縄報道の全体主義」が横行しています。反対運動に疑問を呈する意見が、沖縄の言論空間の中ではたとえ「マイノリティ」であるとしても、その意見をないがしろにしないのが民主主義の健全なあり方ではないのでしょうか。そうした「マイノリティ」の意見をあえて声に出す人々には一瞥もせず、単一の意見を述べる住民、市民しか存在しないかのような画一的な報道を全ての放送事業者が流し続ける「沖縄報道の全体主義」を、朝日新聞は「健全な民主主義を発展させる」ものとして推奨するのでしょうか。

ぜひ、この社説を書いた論説委員の方とも公開の場で、どのような放送が民主主義の発展に資するのかについて語り合いたいと思います。

 

▼「メディアの全体主義」への危惧▼

今回の「ニュース女子」は、詰めのあまい取材や恣意的な編集には多分に問題があるものの、「沖縄報道の全体主義」に一石を投じようとしたものです。当会が最も危惧するのは、この問題を機に、報道に多様性をもたらそうとする番組制作者の挑戦的な試みが萎縮し途絶えてしまうことです。そうなれば、「メディアの全体主義」が永続化し、我が国の民主主義を脅かす致命的な悪影響を及ぼす恐れがあるものと当会は深く憂慮いたします。

放送法第4条の編集準則は、あくまでも各論が各論として公平・公正に紹介される報道環境を目指すためにこそ存在するのです。放送法第4条を、一方の言論を封殺する道具にしてはならないと当会は考えます。

 

▼「ニュース女子」制作側へ▼

今回の「ニュース女子」の制作者各位におかれては、真摯な自己検証を行って、謝りは正し、反省すべきは大いに反省した上で、「沖縄報道の全体主義」に対抗する果敢な試みが潰えることがないよう、今後は確かな根拠に立脚し、放送法が求める公平性に配慮した厳正な番組作りを確立されるよう、強く希望いたします。

 

以上

 


【事務局より】
このように、丁寧かつ確実な検証を行うために、当会を支えて下さる会員様を大募集中です!月額900円等・・
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「三笠宮崇仁親王殿下、薨去(ご逝去)」を各局はどう伝えたか

平成28年10月27日、三笠宮崇仁親王殿下が薨去されました。ここに謹んで哀悼の意を表します。

天皇陛下の叔父にあたられ、昭和天皇の弟君であられる三笠宮殿下は、皇族としては明治以降最高齢の100歳で薨去されるまで、多岐にわたる経験、活動をしてこられました。まさに昭和という激動の時代を体現された御生涯であったと言えましょう。

そこでこの度、本件をテレビ報道がどのように伝えたかを、同日の在京キー局における夜の主要な報道番組において比較してみることといたしました。

三笠宮殿下は戦前には軍人として戦地に赴かれましたが、戦後は歴史研究者として国内外で活躍されました。そしてダンスの名手としても知られ、ダンス等レクリエーションの普及に尽力されました。

そこで、以上の3つの活動、「軍人(戦争関連)」「歴史研究」「ダンス等レクリエーションの普及」に関する場面が、報道の中でどれだけあったかを各番組で計測してみました。また「軍人(戦争関連)」の中で、特に戦争の反省や、当時の日本軍への批判が強く現れた場面については、その場面の時間計測とともに内容について記載します。

なお、一部複数の活動が同時に描写された場面もありましたが、その場合はいずれにも加算をしています。

1.NHK ニュースウォッチ9
トップニュースとして報道。検証対象番組の中では最も長く約16分の報道でしたが、その中で、「軍人(戦争関連)」と見られる場面は3分5秒でした。殿下と同じ連隊に所属していた99歳の男性が、軍人時代の殿下の思い出やお人柄について証言する場面に多くを割いていました。一方、戦争の反省や、当時の日本軍への批判を伝えた場面は18秒ありましたが、そこでは殿下の著書「わが思い出の記」から、以下の文を紹介しました。

『いわば「聖戦」というものの実態に驚き果てたのである。罪もない中国の人民にたいして犯したいまわしい暴虐の数かずは、いまさらここにあげるまでもない』

「歴史研究」の場面は3分30秒あり、殿下御自身が研究の動機を語られた場面もありました。「ダンス等レクリエーションの普及」の場面も2分16秒ありましたが、いずれの場面でも殿下のお人柄に重点が置かれていました。

ちなみに、この報道の開始後約3分半、若き日の軍人としての三笠宮殿下を紹介し始めてから、この報道の終わり近くまでの約10分間にわたって、画面右上には「気さくな人柄で活躍 多方面に」というテロップが表示され続けました。これは後述するTBSやテレビ朝日の編集とは対照的なものとなっています。

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2.日本テレビ「NEWS ZERO」
番組の後半に約1分50秒報道。「軍人(戦争関連)」の場面が17秒、「歴史研究」には6秒、「ダンス等レクリエーションの普及」には5秒を割いていました。

「戦争の反省、日本軍への批判」と受け止められる場面は10秒で、殿下のご著書「古代オリエント史と私」から以下の言葉を引用しました。

「今もなお良心の呵責にたえないのは、戦争の罪悪性を十分に認識していなかったことです」

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3.テレビ朝日「報道ステーション」
トップで約14分間(うちCM約2分)報道。NHK「ニュースウォッチ9」と同じく、三笠宮殿下の部隊に所属していた99歳の男性が、殿下のお人柄等を語る場面がありました。

「軍人(戦争関連)」の場面は5分2秒、「ダンス等レクリエーションの普及」の場面は32秒、「歴史研究」の場面は6秒でした。殿下の歴史研究に言及する場面はVTR中にはなく、スタジオでコメンテーターの後藤謙次氏が「陸軍参謀というよりは教壇に立たれた古代オリエントの歴史学者というイメージが非常に強い」と語った場面だけでした。

「戦争の反省、日本軍への批判」と受け止められる場面は合計2分42秒で、該当する場面は3箇所ありました。

一つ目は、途中CMに入る前、軍服姿で馬に乗る殿下の映像を背景に、引用元を明記せず以下の言葉を伝えました。『「聖戦」とか「正義」とか、よく叫ばれ宣伝される時代ほど、事実は逆に近い』

2つ目は、「若杉参謀」の名で中国に赴任されていた三笠宮殿下が、離任に際して将校を集めて講和をされた際の記録から、以下の言葉を引用した場面です。

『言論は極度に弾圧されており、少しでも日本に不利な発言をしたり、あるいは日本を批判する者は「国を売る者」などといわれ、一般幕僚(参謀など)匂いては大胆なる発言は困難である。私は幕僚の末席にありながら、僭越を顧みず、特に発言するところである。』

(ナレーター:戦争批判、軍部批判がタブーだった時代に、あえて発言すると言い切った三笠宮さま。まず、満州事変と、中国全土に戦線が拡大していった日中戦争について、現地の日本軍を厳しく批判していました)
『両事変とも、陛下のお考えまたはご命令で戦闘が生じたのではなく、現地軍が戦闘を始めてから、まことに畏れ多き言葉ではあるが —— 陛下に後始末を押しつけ奉ったとでも言うべきもの』

(ナレーター:そして、中国大陸について日本に欠けているものについては)

『真に誠心をもって、民衆を愛し、徳政を行い、中国4億の民に安居楽業を与えるのが目的でなければならない』
(ナレーター:最後に、日本の軍人に猛省を促されていました。)

『現在、日本人の、特に軍人にかけているものは「内省」と「謙譲」である。「新聞」「ラジオ」は日本人の悪いことは言わないし、また相手の良いことは言わない。我らはこれに惑わされてはならない。』

3つ目は、上記の講話でのご発言について、ノンフィクション作家・評論家の保坂正康氏が以下のように語った場面です。
『勇気ある発言だと思いましたね。ああいう発言というのは、はっきり言えば日本軍が中国でどういうことをしたか、言ってみれば残虐行為ですね。それを具体的に語っているわけですね。で、「どうしてこういうようなことを行うんだろう、こういう軍隊なんだろう」というのは、三笠宮殿下自身の中にすごい悩みと苦しみがあったと思うんですね。』

ところでこの報道では、開始後約6分のCM明け直後から終了に至るまで、画面右上に『三笠宮さま ご逝去100歳 戦争中 中国で「軍部批判」』とのテロップが7分30秒にわたり表示され続けました。これを算入するとすれば、正味12分間の報道の中で「戦争の反省、日本軍への批判」が7分40秒あったということになります。
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4.TBS「NEWS 23」
番組開始後約20分頃から、4本目のニュースとして4分40秒報道。

冒頭のテロップでは「100歳でご逝去」と小さく表示しながら「三笠宮さま 戦争への深い思い」と大きく表示したので、この部分は「軍人(戦争関連)」と計測しました(16秒)が、このとき同時にダンスを踊られる殿下の映像も紹介されました(9秒)。

「軍人・戦争関連」の場面は合計で1分18秒、そのうち「戦争の反省、日本軍への批判」と受け止められる場面は37秒。「自叙伝には、当時の日本軍の振る舞いを厳しく批判する記述も。」として、ご著書「古代オリエント史と私」から以下の言葉を引用しました。

『ある青年将校から、兵隊の胆力を養成するには、生きた捕虜を銃剣で突き刺させるにかぎると聞きました。また、多数の中国人捕虜を貨車やトラックに積んで満州の荒野に連行し、毒ガスの生体実験をしている映画も見せられました。「聖戦」のかげに、じつはこんなことがあったのでした。』

「歴史研究」には40秒、「ダンス等レクリエーションの普及」には合計18秒を割いていました。

ちなみに、上記自叙伝の紹介以降、画面右上に『三笠宮さま 100歳でご逝去 日本軍を批判「聖戦の陰に…」』というテロップが表示され、「歴史研究」の場面でもこれが表示され続けていました。このテロップを算入した場合は、4分40秒の報道のうち、「戦争の反省、日本軍への批判」の場面が1分19秒となります。

最後に、翌日から赤坂御用地内の三笠宮邸前に一般向けの記帳所が設けられることが告げられました。
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5.テレビ東京「WBS」
トップで1分30秒報道。

三笠宮殿下が明治以降の皇族では最も高齢の100歳であられたことと、今年5月に入院されてからの経緯を伝えて、翌日午前9時から一般記帳の受付が行われること、「斂葬の儀」が11月4日に行われることを報じました。

御生涯における活動に言及する場面はありませんでした。
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6.フジテレビ「ユアタイム」
番組開始後12分ごろ、3本目のニュースとして55秒報道。
三笠宮殿下が明治以降の皇族では最も高齢の100歳であられたこと、三笠宮邸に向かわれる天皇皇后両陛下、皇族方や安倍総理大臣らが弔問に訪れたことなどを伝え、最後に「斂葬の儀」と「一般記帳」の予定に触れました。

御生涯における活動に触れる場面はありませんでした。
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7.「薨去(こうきょ)」という用語について
皇族が亡くなられた際には、正式には「薨去」という言葉が用いられますが、検証対象番組の中でこの言葉が伝えられたのは、宮内庁による発表の場面の中だけでした。この場面があった番組は、NHK 「ニュースウォッチ9」、日本テレビ「NEWS ZERO」テレビ朝日「報道ステーション」でした。

しかしそれ以外の場面で「薨去」という言葉を用いた番組はなく、すべて「ご逝去」または「逝去」という言葉をテロップに用いました。(フジテレビ「ユアタイム」のみ「逝去」)

また、キャスターやナレーターはすべての番組で「亡くなられました」と述べていました。

8.一般の記帳受付と「斂葬の儀」
翌28日から三笠宮邸前で一般記帳を受け付けることを伝えたのは、対象番組の中ではTBS「NEWS23」、テレビ東京「WBS」、フジテレビ「ユアタイム」の3番組で、他はこの事を伝えませんでした。また、NHK「ニュースウォッチ9」とテレビ朝日「報道ステーション」は、11月4日に「斂葬の儀」が行われる事も伝えませんでした。

9.検証者所感
三笠宮殿下は戦後、長きにわたって歴史研究に取り組まれ、またダンス等レクリエーションの振興にも尽力さましたが、歴史研究の道に進まれるにあたり「戦争体験」が大きな影響を与えたことは事実ですので、これをある程度伝えることには一定の意義があると思われます。ただ、このようにして全在京キー局の主要報道番組による報道の仕方を概観すると、それぞれの伝え方の特徴を見て取ることができます。

本件を短く伝えたフジテレビとテレビ東京以外は、すべて何らかの形で「戦争の反省」というメッセージを伝えたことになりますが、NHK「ニュースウォッチ9」、TBS「NEWS23」テレビ朝日「報道ステーション」においてはいずれも、「中国で日本軍による暴虐があった」ことをクローズアップした場面がありました。特にTBSとテレビ朝日の報道は「戦争の反省、日本軍への批判」に長時間を割いており、テロップにおいてもそうした文言を長く表示しています。このことから、そこに重点を置いて伝えるという番組制作者の強い意図が見て取れることは確かであると思います。

ここまでお伝えした事実を踏まえて、この度の報道をどう評価するかについては、視聴者の皆さまに委ねたいと思います。
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放送法第4条は必要か?アメリカ大統領選挙の「教訓」
当会の呼びかけ人の一人でもある米カリフォルニア州弁護士のケント・ギルバート氏が、10月20日放送のBSフジ「プライムニュース」に出演しました。

番組では『“泥仕合”アメリカ大統領選 今後のアメリカと日米関係の行方』と題し、今回の米大統領選挙から見える諸問題について議論されました。

ギルバート氏の他にも手嶋龍一氏(外交ジャーナリスト・作家)と海野素央氏(明治大学政治経済学部教授)がゲスト出演しました。

この討論の中で、大統領選挙に大きな影響を与えた「メディア」の問題について語り合う場面がありましたので、その部分の要旨をご紹介します。

両候補の最後の討論会で、トランプ氏は司会者から「選挙結果を受け入れるか」と質問されたのに対し、「それはその時に考える」と答え、明言を避けました。これについて手嶋氏は「(民主主義の根幹に関わる)大変な発言だ」としながら、トランプ氏側の理由を説明しました。

「『目の前で繰り広げられている選挙キャンペーンで、メデイアは腐敗している。メディアが捏造した材料で選挙を動かしている。だから自分はその選挙結果を認めない』という風にトランプ氏は発言しています」

これに対しギルバート氏は

「それは事実なんですよ。だけどそれによって彼は候補になったわけです。共和党の中の予備選の時に、メディアは彼をすごく応援した。彼が口を開ければ全部ニュースのトップになるんですよ、何を言ったってね。民主党の候補の発言はその次に来る、共和党の他候補の発言は、取り上げるとしてもその後に来る。僕はずっと見ていて、これは危ない(と思った)。これは(メディアはトランプ氏を)落とすよ最後に、視聴率のために。あんまり上げると視聴率が下がるから今度は下げるんですよ。そうするとまた視聴率が取れる。そのぐらいのことはわかっているはずなんですよ彼。彼は大いにそれを利用したんだから、今度は被害者だと叫んでいるのは、すごい偽善者に聞こえる。」

と述べて、トランプ氏がメディアを利用して支持を得てきたことを指摘しました。
これを受けて手嶋氏は、大統領選挙の報道をボクシングのタイトルマッチに例えて、次のように述べました。

「『接戦』でなければ誰も見ようと思わない。テレビメディアとしては『興行』が成立しないと『飯の食い上げ』となるので、トランプ候補の発言を取り上げる。時に批判的に取り上げるとしても、全選挙キャンペーンの過程で70%以上がトランプ候補の発言を取り上げるとなると、どんなに批判的に取り上げてもどんどん支持率が上がる。その結果としてトランプ氏が大統領候補になっていくが、そのメディアに裏切られることになる。テレビ討論の直前は支持率は0.9ポイント差という全くの接戦だったが、今は裏切ったメディアに対してトランプ氏は居直っている。ワシントン・ポストが女性スキャンダルというカードを切ったのは、このままではクリントン氏が抜け出ることができなかったから」

海野氏は、

「トランプ氏の支持者は女性スキャンダルがあっても動じない。トランプ氏は最初に立候補した時から『メディアは腐っている』と言い続けている。そのため彼の支持者は『ファクトチェック』ができなくなっている」と指摘しました。

ここで司会の反町理氏が

「問題なのは、メディアが実は一番権力があって、メディアがどういうネタを出すかによって(結果が動かされることでは)」と問題提起しました。

これに対し手嶋氏は

「嘘でも何でも『取り上げられること』がトランプ氏の源泉になっているということになると、メディアは大変重要な責任を持っている。三大ネットワークの一つNBCの会長は『トランプを取り上げてなぜ悪い?その結果こんなに視聴率が稼げて経営が成り立っている』と本音まで語っている」と指摘。

そこで反町氏は、ギルバート氏に聞きます。

「今回の米メディアのやりたい放題は、表現の自由があるとはいえ、あまりにも行きすぎではないかと連邦政府が(言い出すのでは)・・・今回のトランプ報道がメディア自らの首を絞めることにはアメリカではならないんですか」

これに答えてギルバート氏は次のように述べました。

「ならないです。連邦政府はメディアに全く手を出せないんです。日本でいう『放送法』があるじゃないですか、私も『放送法遵守を求める視聴者の会』を立ち上げているんですけれど、日本にはそれがあるんですけれどアメリカではもうやめたんですね。なんでやめたかっていうと、ニュースソースがあんまりにも沢山あるものだから、別にいいんですよ、いろんな情報が入ってくるから聞いた人が判断すれば。だけど今回面白かったのは、普通だったらトランプ賛成、トランプ反対(に分かれる)、だけど、ほとんど全員、明らかに視聴率のためにトランプを上げたわけですよ。それも、左側のメディアまでが。だから、これはちょっと異常でしたね。」

手嶋氏は、今回のメディアに見られた現象から「アメリカン・デモクラシーの凋落が見られる」と指摘した上で、以下のように述べました。

「アメリカのメディアは日本の放送に比べてずっと自由なんです。どの候補を支持するかということだって自由ですよね。それがアメリカは一面で良いのですけれども、言論の自由とか報道の自由があるということは、それだけやっぱり自律的(であるべき)で、商売のためにそれを使ってはいけないという教訓がここにある」

要旨は以上です。

ここでギルバート氏が述べている「アメリカではもうやめた」法律とは、連邦通信委員会(FCC)の規則に存在していた「フェアネス・ドクトリン」と呼ばれるものですが、これは今の日本の放送法第4条における「編集準則」よりもずっと厳しいものでした。そのため、この規則がある間、米国の報道番組のキャスターはほとんど自分の意見を述べなかったといいます。

しかし、米国では1987年にこの「フェアネス・ドクトリン」を廃止しました。米憲法が保障する「言論の自由」に反すると判断されたためです。背景には、米国では放送の多チャンネル化が進み、「多様な言論」を視聴者が選んで受け取ることができると考えられたことがありました。

しかし、上記のギルバート氏らの議論からもわかるように、今回の米大統領選挙のテレビ報道は「多様性」が確保されているとは言いがたく、ほとんどの報道が視聴率を目的に横並びにトランプ氏を大きく取り上げるという現象が起こりました。そのことがトランプ氏を共和党の大統領候補にまで押し上げ、最終の選挙戦になると今度はスキャンダルによってトランプ氏の当選を阻止しようとしている模様です。

このような現象を抑止する規定が全く存在しない状態で、果たして民主主義は健全に保つことができるのでしょうか?

今年4月、国連人権委員会の「特別報告者」としてデビッド・ケイ氏が来日し、「日本の報道の自由が危機に晒されている」とする中間報告を発表しました。(当会としてはこの報告全体に対して異議がありますが)その中でケイ氏は、日本における放送法第4条の「編集準則」を廃止することを提言しています。

実は当会の中でも、もし今後、日本でも本格的な多チャンネル化や、放送への新規参入に門戸を開く電波オークション制度が実現するならば、この「編集準則」は廃止しても良いのではないかという意見は存在しています。

折しもつい先ごろ(10月18日)、テレビ番組をインターネットで同時に配信する「ネット同時配信」を2019年にも全面解禁するという方針を総務省が明らかにしました。これにより、電波放送とインターネット放送の境目がなくなることで、事実上の「多チャンネル化」に大きく進む可能性があります。
しかしながら、今回の米大統領選をめぐって明らかになったのは、必ずしも多チャンネル化が報道の多様性を約束しないこと、そして放送メディアの政治への影響が、インターネットが大いに普及した現在においても極めて大きくなり得るということです。これを踏まえて考えると、日本で将来、放送法第4条の「編集準則」のような規定をまったく撤廃するということには慎重であるべきではないか、という意見も当会検証チーム内から上がってきています。

例えば、国内では本年7月の東京都知事選挙の報道に対して、「特定候補ばかり紹介し過ぎており、政治的公平性に欠ける」との批判の声がありました。これに対しては「すべての候補を平等に扱うのは視聴者にとって公平とは言えない」という反論もありましたが、何れにしてもこうした議論の支えになっているのが、「政治的に公平であること」を定めた放送法第4条1項2号であることは間違いないでしょう。

そこで、我が国の民主主義の健全性を保持する上で、放送に公平性や真実性の確保を求める何らかの規定は、やはり将来も必要ではないか、との意見が持ち上がっているわけです。
当会では今後とも、異なる立場の方々とも意見を交わしながら考察を深め、放送のあるべき姿を探っていく所存です。

見過ごせない『テレビの過剰演出』

テレビ番組の「やらせ」がしばしば批判され、時には裁判にまで発展します。その一方で、「演出」と「やらせ」の境界線は微妙で、「テレビなんてそんなものだ」と達観する声も聞かれます。はたして、どこまでが許容範囲なのでしょうか?明確な線引きをすることは可能なのでしょうか?

福岡在住のカナダ人女性、ミカエラ・ブレスウェートさんが9月7日、「なぜ日本のテレビ出演を止めたか?」という動画を公開して話題になりました。ユニークな視点から日本での生活を紹介する動画で約27万人の登録者を誇る人気ユーチューバーのミカエラさんにテレビ局から出演オファーが来るのも不思議ではありません。一時は全国区のバラエティ番組に出演するまでになりました。

しかし、ミカエラさんが経験したのはテレビ局による「過剰なキャラづくり」。たとえば、スタッフが彼女の部屋に来て「何か面白いものはありませんか?」と聞く。結局ネタを見つけられずにコンビニへ移動。そこでバラエティに富む商品群を見て興奮する外人女性を演出することに。「もっと興奮して!」と言われるままに演じたミカエラさんは、その時点で在日6年目。いかに日本のコンビニが素晴らしくても、そうそう興奮するものではありません。無理して演じた番組にはなんと「ミカエラにとってコンビニはまるで遊園地!」というテロップが付けられていたといいます。

このような「やらせまがいの演出」に疲れながら、「宣伝になるから」という理由でギャラを払ってもらえず、さらにはツイッターやYouTubeで番組を宣伝して欲しいと頼まれるに至ってテレビ出演を止めることを決意したミカエラさん。友達から「テレビでは別人のよう」と言われることもつらかったとか。これが「演出」なのか「やらせ」なのか、と問われれば、ほぼ「やらせ」だと言えるでしょう。しかし、いかにもありそうな話でもあります。(※1)

一方、「これは編集ではなく捏造」と怒りを露わにするのは、TBS系バラエティ番組「ピラミッド・ダービー」(2016年6月19日放送分)に出演した池袋絵意知さん。ご自身のブログによると、顔相鑑定士の池袋さんは、入れ替わった双子を見分ける「双子見極めダービー」という企画の最終レースまで出演しました。ところが、オンエアされた番組を見てびっくり。決勝戦の4回戦まで残ったのに、3回戦で脱落したことになっていて、なおかつ、3回戦と4回戦が入れ替わって、実際の3回戦が最終戦の4回戦として放映されていたのです。しかも、そこに写っていたはずの池袋さんの姿は、CG加工で消されていたのでした。池袋さんの抗議に対し、TBSのプロデューサーは「行き過ぎた演出」を認めて謝罪したそうですが、ここまで来るとやはり、演出の範疇を越えた捏造と言われても仕方ないでしょう。(※2)

TBSは「演出の一環のつもりだった」と弁明したそうですが、非常に危険な兆候だと言えます。「テレビに演出はつきもの」と見過ごしていると、次第にエスカレートして、何をやってもいい、という所に行き着いてしまうからです。それがまさに、過去に問題になったサブリミナル的な手法や、悪意がある印象操作と思われかねない不適切なテロップなどです。特定の政治家の顔写真が、無関係な戦争犯罪に関する番組の中に挿入されるなど、とても偶発的な事故とは思えません。これらの行為は明らかに政治的な意図をもって行われていると疑われますが、倫理の頽廃という意味では、前述の「過剰で不適切な演出」と同じです。そして、テレビ局の倫理の頽廃が、オウム真理教による「坂本弁護士一家殺害事件」のような、取り返しのつかない事件を引き起こしてしまうのです。

こう考えると、やはり視聴者はテレビ局の「やらせまがいの演出」には厳しい目を持ち、「演出の一環」などという言葉の濫用を許すべきではないでしょう。「テレビなんてそんなものじゃないの?」などと諦め口調で言っているうちに、深刻な犯罪行為を許してしまう可能性があることを自覚すべきです。しかし、政党や政府が苦言を呈するとすぐに「言論の自由が圧迫されている」などという批判をするのもまたテレビ局です。政府とは別に、純然たる民間の視点でテレビ放送を検証するメカニズムが必要です。「視聴者の会」はそんな問題意識を持った方々と歩んで行きたいと考えています。

※1 ミカエラ・ブレスウェートさん本人が語る動画付き記事(BLOGOS)
http://blogos.com/article/190342/

※2 池袋絵意知さん本人のブログ
http://blog.ikebukuroh.com/?eid=1338

「お気持ち表明」後の報道のゆくえに思う事

9月5日のテレビ朝日の報道ステーションで「生前退位は”一代限り”浮上」との報道がありました。

天皇陛下の「お気持ち表明」から1ヶ月が経とうとしている今、政府では「皇室典範の抜本的な改正とは切り離して、今の天皇陛下の一代に限って生前退位を認めるという特別措置法で対応する」という案が浮上しているとのことです。その背景にある事情について、ナレーションはこう伝えました。

「政府としては、恒久的な退位制度などを含む”皇室典範の検討”は後回しにしたい考え。というのも、抜本的な議論を始めると、女性・女系天皇の容認や女性宮家の創設など、棚上げされている論点が再燃しかねないからだといいます。」

政府関係者は「女系天皇をどうするか、皇族の減少をどうするかと、生前退位と直接関係のないところまで広がってしまい、時間がかかってしまう」と語ったとのことです。

最後に有識者として神戸女学院大学の川西秀哉准教授がコメントしました。川西氏は、特措法と皇室典範改正の二段階に分けるのが現実的としながらも、「生前退位だけ認めて、女性宮家、女性天皇の問題は後からということになると、もう時間切れですという話になりかねない。本当に象徴天皇制をこれから長く続けていくとか、どうするかということについて踏み込まないまま議論が収束してしまう恐れがある」「先日のお気持ち表明の中で、安定的な皇統の継続が求められていたが、一代限りというのは安定的な継続ではない」として危惧を示しました。

また、特措法だけで終わらせようとする背景に、「安倍政権ならではの事情」もあるとのことです。「(安倍政権には)一つは男系(天皇)に対する根強い信仰と言ってもいいものがあるかなと思うんですけど、皇室典範全体を変えるとなると女性宮家とか女性天皇、女系天皇という問題に踏み込まざるをえない。そこに踏み込みたくない、今の制度を変えたくないという意識が強いんだなっていう風に思います」と川西市は語りました。

さて、この報道にはいくつか疑問があります。

同日(5日)の産経新聞によりますと、皇室典範の付則に「特別の場合」に限定して特措法で対応できる旨を追加する、と複数の政府関係者が明らかにした、とあります。これが事実ならば、「一代限り」の対応を想定していると断定はできないのではないでしょうか?

また、皇室典範を改訂するとしても、必要な箇所から始めればよいのであって、女系天皇や女性宮家等の議論を一から始めて結論を出す必要もありません。それはそれとして改めて包括的な議論をすればよいだけの話です。

男系継承は皇室の伝統で、理由があって続けられてきたことですから、川西准教授のように、「安倍政権の根強い信仰」と断じるのは乱暴ではないでしょうか?

「安定的な皇位継承」という観点からは、「女系天皇」や「女性宮家」のみならず、対案とも言える「旧宮家の皇籍復帰」もかねてから議論されています。現に、7月15日の毎日新聞は『旧宮家復帰、議論先送り 政府「生前退位」を優先』との見出しで、「生前退位」の検討を優先するため「旧宮家の皇籍復帰」の議論が先送りになると伝えています。今回の「報道ステーション」がこの件に一言も言及せず、女性・女系天皇、女性宮家といった議論のみ強調したのは不自然に感じました。

いずれにしても、今上陛下のお言葉をお言葉どおりに受け取れば、時代の変化に鑑みて生前の譲位を制度的に可能にするべきと理解できますから、それを可能にするために必要な改訂を速やかに行うのが政府の役目でしょう。

 

無用な憶測を絡め、あえて議論を一定の方向に誘導しようとするような報道ではなく、慎重に事実を見極めつつ、恣意性を排した公平な報道がなされることを願います。

 

電通の広告不正請求問題に対する各局の報道について

去る9月23日、電通がネット広告に絡み不適切な業務が行われていたと発表し謝罪しました。この件を新聞各紙は当日に電子版で報じていますが、テレビでは報道していないのではないかとの声が当会に寄せられました。そこで当会では当日の東京キー局の報道番組でこの件が報道されたかどうかを確認してみました。その結果は以下の通りです。

NHK
  報道せず*

日本テレビ
「NEWS every」にて午後5時22分から1分14秒

TBS
「Nスタ」にて午後6時39分から52秒

フジテレビ
  報道せず

テレビ朝日
「スーパーJチャンネル」にて午後6時49分から52秒

テレビ東京
「ワールドビジネスサテライト」にて午後11時00分からトップで1分37秒

*NHKでは、午後11時25分〜0時5分までの「ニュースチェック11」では一瞬、このニュースを表す言葉が画面の一部に映る場面がありました。今日のニュースの一つとして並んではいたが、読み上げなかったという様子でした。

この結果でわかることは、当日のテレビでこの件が「全く報道されなかった」わけではないということです。ただ、取り上げた局のうち、日本テレビは夕方のニュース番組の中頃、TBS、テレビ朝日は同じく夕方のニュース番組の終盤に短く伝えたのみで、午後7時以降の大型報道番組の中で伝えたのは、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」だけでした。

もちろん、日々起こる無数の事象から、放送に取り上げられることは限られています。その中で、個々のニュースの重大性の如何については、それぞれの放送局の判断があって然るべきです。

たとえば同じ「不正請求」の問題でも、最近続々と発覚した地方議員の政務活動費の不正問題は連日大きく報道されましたが、住民の税金が直接不正利用された問題に比して、今回の電通の案件は企業間のトラブルにとどまっているので、そこまで一般視聴者の重大な関心事とは捉えないという判断があったとしても一定の合理性はあるでしょう。

ただ現実に、テレビ朝日「報道ステーション」やNHK「ニュース7」及び「ニュースウォッチ9」、TBS「NEWS23」等といった、注目度の高い大型報道番組では一切取り上げられなかったという状況があり、その結果として、このニュースにあらかじめ関心を持つ人のもとにはこの件のテレビ報道が届かず、「テレビはこの件を全く報道していない」という印象とともに、このニュースが不当に軽んじられていると感じたケースが少なくなかったことは確かと思われます。

つまり、インターネットを中心に多様な情報を得ている一般視聴者が期待するテレビ報道と、実際に供給されているテレビ報道の間に、ズレが生じた事例であったとは言えるでしょう。

皆様はどう感じられたでしょうか?

政権から報道機関への圧力はあるのか!?

去る6月末に発売された「朝日ジャーナル緊急復刊号」で、ジャーナリストの池上彰氏が、TV放送に対する政権からの圧力の詳細を具体的に語っていると、ニュースサイト「リテラ」が報じたことで、ネット上では「池上氏が安倍政権のマスコミへの圧力を証言」として広く拡散されています。これに先立つ4月19日に発表された国連特別報告官デビット・ケイ氏による中間報告には、彼が日本滞在中、多くのジャーナリストが「政権から圧力を受けている」と証言したと書かれています。したがって、リテラの記事が本当であれば、池上氏の証言が重要な証拠になる可能性があります。

当会は、政治による放送への介入には一貫して反対する立場です。そこで、池上氏が何を語っているのか、問題の記事を確認してみました。

その記事は、池上彰氏と原寿雄氏(元共同通信編集主幹)による「重鎮対談 へたれメデイアを叱る 安倍政権という主人持ちのジャーナリストになるな!!」と題する対談記事です。

まず最初に池上氏は、国際NGO「国境なき記者団」が発表している「報道の自由度ランキング」で、日本が前年の61位から72位に下がったことに触れ、「2010年には11位だったことを考えると、急速に落ちています」と指摘しています。

昨今、この「報道の自由度ランキング」を取り上げた多くの報道が、その数字を無批判に受け入れ、一人歩きさせるばかりでした。しかし、このランキングで70位の韓国では、朴大統領に関する記事をめぐって産経新聞ソウル支局長が出国禁止処分を受け起訴されたことは記憶に新しいと思います(後に無罪判決を受け釈放)。そんな韓国よりも日本のランキングが下だと聞いたなら、納得する人はあまりいないのではないでしょうか。また、「特定秘密保護法」が日本のランク低下の理由とされることも不可解です。日本では、この法律による処罰は未だ一件もありませんが、このランキングの上位にある国々にも国家秘密保護のための法律があり、それに基づく処罰も多数実行されているのです。さらに言えば、2010年から今年までに、我が国では政権交代があったとはいえ、大きな政治体制の変化はありません。にもかかわらず、50以上もランクを下げるということ自体が、特定の政治的バイアスの存在を物語っています。これを「国際社会の評価」として無批判に紹介すること自体が、その特定の意図に協力した政治活動であるとも言えます。

一方、「フリーダムハウス」という米国の国際NGOが同時期に発表した「報道の自由2016」によれば、日本は44位ですが、アジア全体の中で「報道の自由がある」とカテゴライズされているのは日本と台湾だけです。もちろんこの「フリーダムハウス」にも政治的な意図はあると見られるので、この評価が正しいと断定できるわけでもありませんが、このような相対的な視点をテレビ報道はほとんど取り上げず、「日本では報道の自由が危機に瀕している」というストーリーに適した事柄だけを視聴者に伝えようとしてきました。池上氏の取り上げ方も基本的にそれと同様と言えます。

その上で池上氏は、「国が報道の自由を制限しているのか、それとも報道機関の側が勝手に自主規制したり、忖度(そんたく)したりして、自ら自由を狭めているのか。日本では後者が多いような気がします」と述べて、問題の多くは報道機関側の「自主規制」にあると指摘していますが、そこで池上氏が「自主規制」の例として最初に挙げているのは、高市早苗総務相が国会答弁で「政治的公平性を欠く放送を繰り返した放送局に電波停止を命じる可能性」に言及したことについて、ジャーナリストらが開いた抗議会見を、「NHKは取材にも行かなかった」という事実です。これを池上氏は「情けないですね」と批判しています。

ちなみに当会では、高市総務大臣のいわゆる「電波停止発言」については、野党の質問を受けて現行法に則った答弁をしたもので、電波を停止するという積極的な意図はなく、ただ法理上は可能であるから、未来永劫決して行わないとは言えないと言っているに過ぎないと考えています。これを大問題であるかのように取り上げた一部の報道や、この答弁に「怒って」記者会見を開くなどという行動は、相当の誤解または恣意性に基づいていると言わざるをえません。仮に放送法第4条が倫理規定であったとしても、問題はその常識的な指針にのっとる努力がなされているかどうか、です。倫理規定に過ぎないから無視してもよい、ということにはならないはずです。

さて、次に池上氏が語っているのが「政権からの圧力」についての話ですが、リテラでも引用している発言は以下のようなものです。
「最近までは権力を持つ側は『メディアに圧力をかけてはいけない』というのが共通認識でした。(略)ところが、安倍政権になってからは、自民党はおもなニュース番組をすべて録画して、細かい部分まで毎日のように抗議し、訂正を求め、注文をつけてくる。すると、テレビ局は『面倒くさい』となる。対応が大変で、次第に『文句を言われない表現にしようか』となってしまうのです」

この話が本当だとすれば、池上氏自身を含めてメディアが取り上げれば大きな問題にすることができるでしょう。しかし、そのためには具体的な裏付けとなる事実が必要です。池上氏には是非、検証可能な具体例を示して頂きたいと思います。

ところで、上記の池上氏の発言と同様の話をした人がもう一人います。先の東京都知事選挙に立候補したことが記憶に新しい鳥越俊太郎氏がその人です。「高市総務大臣の発言に抗議したジャーナリスト」たちが、外国特派員協会で記者会見を行った際に、その発言はありました。会見の質疑応答で、「取材や報道を理由にジャーナリストが逮捕されたりする状況は日本にはないのに、なぜメディアがそれほど萎縮するのか、どういう圧力があるのか」という質問がありましたが、これに答える中で鳥越氏は以下の発言をしました。

「わかりやすい形でメディアがプレッシャーをかけられて萎縮しているということではなく、目に見えない形で、気がついたら後退していたのが現実でしょう。(中略)メディアが権力を監視するのが世界の常識だが、日本では権力がメディアをチェックするということに今なっているわけです。で、一つ一つの番組を記録して、問題あると思ったら誰かしかるべき人に言うとか、オフ懇で言うとかして政権側の意思を伝える、ということを日常的にやっているわけです。だから日本のテレビ局はどんどん物を言わなくなって、これ以上言ったら地雷を踏むというような手前で止まっちゃう。」

もしや池上氏の話は、鳥越氏から聞いたこの話が元になっているということではないのでしょうか。鳥越氏は、その話を誰から聞いたのでしょうか。いずれにしても、確たる根拠がないまま、こうした伝聞のような情報を広めることは極めて無責任なことであり、ジャーナリストとしての矜持が問われねばならないと指摘せざるをえません。

一方、池上氏がもう一つ「圧力」の例として挙げているのは、自身の体験による事例です。
「私が特定秘密保護法についてテレビで批判的な解説をした時も、すぐに役所から『ご説明を』と資料を持ってやってきた。こういうことが日常的にあるわけです」

もしも、この役人による「ご説明」への対応次第で池上氏の立場に何らかの影響がある恐れがあったのならば、それは明らかに圧力ということになりましょう。しかし、池上氏ほど影響力のあるジャーナリストに誤解されては困る、説明したい、と感じるのは当然のことであって、それを圧力と受け取るのは過剰反応ではないでしょうか?そして結果として、池上氏は「萎縮」などしていないと見受けられます。「へたれメディアを叱る」という対談のタイトル通りならば、こんなことは圧力として受け止める必要はない、自身のように自主自律の精神を堅持すればよいと、後輩たちを激励するべきところではないでしょうか。

当会は、「政府による報道への圧力」、「報道機関による忖度、自主規制」のいずれにも反対いたします。しかし、事実的根拠のない「圧力」をさも実在するかのように言い広める行為は悪質であり、看過するべきでないと考えます。リテラがこの池上氏の対談記事を「政権からの圧力の詳細を具体的に語っている」として広めたことも、実に無責任と言わざるをえません。

ところで、当該対談記事で池上氏の相手を務めている原寿雄氏の話も興味深く拝読しましたので、最後に言及しておきます。

池上氏は、メディアの「萎縮」の原因として「政権の圧力」の他に、視聴者からの抗議、いわゆる「電凸」を挙げていますが、それに対して原氏は次のように述べています。

「私はメディア自身も権力化していることが問題だと思っています。それでも国民によるメディアへの監視が厳しくなり、対抗できるようになってきた。それではじめてメディアと国民が対等になれるんです。」

さらに原氏は、「大衆の抗議」に対するメディアの対応について「勝ち続けではダメです。メディアと大衆が戦って、たまにはメディアが負けてもいいんです」と述べています。

これに対して池上氏が「たまにではなく、最近はよく負けてます(笑)」と指摘すると、答えて原氏は「もちろん、排他的な熱狂に圧倒されてメディアが負けてしまうのは良くないですよ。ただ、民主主義では、批判されたら反論できる。その場をメディアが設定できるわけです。総括することが大切ですね。それが民主主義なんです」と語っています。

このような原氏の考え方と、当会の問題意識とは共通するものがあります。「メディア自身も権力化している」という事実認識は、まさに当会の発足の理由と言ってもよいものです。当会が「国民による監視の目」を代表しているとは申しませんが、当会が提起した問題を契機として、放送というメディアのあり方を考える議論に、より多くの方に加わって頂きたいと願って活動しているところであります。

一方、原氏の発言の中には、現今の在京TV局における報道の在り方に通じていると感じるものもありました。例えば原氏は自らのジャーナリズムの原点について、こう答えています。

「僕は自らが体験した戦争中の日本を否定することで、新しい時代を作ろうと思ってジャーナリストとして仕事をしてきました。しかし、安倍さんが書いたり話したりしていることを読むと、安倍さんは我々の世代が否定した日本を生き返らせようとしているのではないでしょうか」

もちろん、先の大戦について深い反省や考察を傾けることは大切です。昨年の安倍首相による「戦後70年談話」は左右両陣営から批判されましたし、実際の政策、行動については各自が判断し、必要と思う時に批判していけばいいことです。

しかしながら、「戦争中の日本を全否定すること」を大前提とし、否定をしなければ民主主義の敵とでもいうような、排他的な思い込みに囚われて「ジャーナリズム」に携わってきたとしたら、自らが正義と信じる意見を全面的に展開し、自らが異端視する考えを報道から締め出すことが有っても良いと考えるでしょう。そうだとすれば、戦争に非協力的な者を「非国民」とした戦時中のメディアと、実は本質的に変わりないのではないでしょうか。そのような排他的な発想が日本のメディアに根強くあることが、昨年の安保法案に対する報道のように、賛成論が存在しないかのような、一斉で一方的な報道姿勢や、岸井成格氏の「メディアとして(安保法の)廃案に向けて声を上げ続けるべきだ」という発言にもつながったのではないか。そのように推察することができます。

前述の「報道の自由ランキング」の報道を見ても、異論を挟むことを許さない一方的な姿勢が垣間見えます。これはもはやジャーナリズムではなく、プロパガンダの領域であって、池上氏にはその領域に足を浸して頂きたくありません。一般視聴者からの放送への抗議が増えている背景にも、インターネットでは容易に知ることができる多角的な情報を、恣意的に排除し続ける放送事業者の頑な姿勢に、少なからぬ視聴者が苛立ちを覚えていることの表れと考えることはできないでしょうか?

国民が、正確かつ多様な情報を受け取った上で、各自が冷静に検討し、我が国の主権者としての責任ある判断をしていく。それを可能とするためには、放送法を遵守した放送、すなわち「政治的に公平で、事実を曲げず、意見が対立している問題についてはできるだけ多くの角度から論点を明らかにする」放送が必要だと当会は考えます。そのため、今後とも冷静な議論を喚起する活動を、虚心坦懐に進めてまいる所存です。

去る8月6日午前、沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域に「中国海警局」の船6隻が入り、その周辺を中国漁船約230隻が航行しているのを海上保安庁が確認、外務省が中国側に抗議しました。

 

この事案について「テレビ報道がほとんど取り上げなかった。重要な事案なのにおかしいのではないか」との意見が当会に寄せられました。

 

そこで、8月6日の当日、在京キー局各社がこの件をどのように伝えたか、あるいは伝えなかったかについて調べてみました。(文中及び表中の時間表記は当会による計測結果。1つのニュースの途中でCMが入る場合、CMの時間は除外)。

 

1.各局の報道

 

◆NHK

午後6時から10分間のニュースで初めてこの件を伝えました。(1分30秒)

NHKニュース(午後6時〜6時10分)

38度超の猛暑日 明日も熱中症警戒 1分35秒

熊本空港で小型機 着陸に失敗 けが人1人 1分40秒

接続水域に中国海警局の6隻 周辺に漁船約230隻 外務省 中国大使館に抗議 1分30秒

「原爆の日」ワシントンでも追悼式 1分33秒

リオ五輪 日本人ボランティアも活躍 2分05秒

民進党 岡田代表 蓮舫氏支持の考えにじませる 1分08秒

一方、午後7時からの30分番組「ニュース7」では、この件を全く報道しませんでした。トップで取り上げたリオ五輪の話題には約10分を割き、続いて「広島原爆の日」の話題を約6分、「熱中症に警戒、大気不安定」という気象の話題を4分50秒伝えました。さらに、相模原市での障害者殺傷事件の続報、米中の外相が北朝鮮への対応を協議した件、熊本空港で小型機が着陸に失敗し1人が怪我をした件、元横綱千代の富士の通夜について伝えましたが、結局、尖閣諸島の件には一切触れませんでした。

午後8時45分から9時までのニュース番組でも、尖閣諸島の件は取り上げませんでした。

しかし、オリンピック中継の合間の翌午前1時2分から7分までの5分間のニュースでは、トップでこの件を扱いました(1分30秒)。

「接続水域に中国海警局の7隻 周辺に漁船 約300隻 外務省 中国側に重ねて抗議」として、午後からの新たな動きを加えた報道を1分30秒行いました。その後は「ボートが防波堤に衝突 11人けが」とのニュースと、オリンピックの話題を伝えました。

 

◆日本テレビ

この日、尖閣諸島のニュースは一切報道しませんでした。

この日の報道番組は「ウェークアップ!ぷらす」(午前8時〜9時25分)「NNNストレイトニュース」(午前11時25分〜35分)「news every.サタデー」(午後5時〜5時30分)「Going!Sports&News」午後11時55分〜翌午前1時5分)がありましたが、そのいずれでも尖閣諸島の案件は取り上げませんでした。

 

◆TBS

午後5時30分からの「報道特集」の中で尖閣諸島のニュースを伝えました(43秒)。

この番組では毎週、長時間を割いた特集が放送されますが、特集の前に放送される通常のニュースの枠内で、尖閣の事案が伝えられました。

報道特集(午後5時30分〜7時)

被爆71年広島原爆の日 「オバマ演説」引用の平和宣言 3分17秒

「南米で初 リオオリンピック開幕/会場の外で見えてくる課題」 3分51秒

列島各地で今年一番の暑さ 1分00秒

米シカゴ 丸腰の黒人男性に警官が… 1分13秒

障害者施設殺傷事件 入所者の家族ら対象に説明会 1分25秒

熊本空港で小型機事故 1人けが、滑走路は閉鎖   41秒

尖閣周辺の接続水域に海警局含む中国船236隻   43秒

NYでもヒロシマ犠牲者追悼集会 1分00秒

神奈川・小田原市 トラックと衝突 原付きの男性死亡   55秒

トラックと衝突 タクシー乗客の女性らけが   51秒

(特集)ヘリパッド建設工事「やんばる」の森で何が 19分45秒

(特集)原爆投下当日に走った列車 27分51秒

リオ五輪 2分43秒

メジャーリーグ(イチロー)/プロ野球 1分13秒

この後の報道番組は、午後8時54分から9時までの「フラッシュニュース」と、午後10時から11時24分までの「新・情報7Daysニュースキャスター」がありましたが、いずれにおいても尖閣諸島の件は報道されませんでした。結局、この日TBSが本件を伝えたのは「報道特集」の中での43秒だけでした。

 

◆テレビ朝日

午後4時30分からの「スーパーJチャンネル」で尖閣諸島の件を取り上げました(55秒)。

スーパーJチャンネル(午後4時30分〜6時)

リオ五輪 15分40秒

各地で体温超えの暑さ 2分17秒

(週刊ニュースランキング)住宅街を鹿が爆走 1分20秒

(週刊ニュースランキング)ニホンザルで初確認、睡眠中の”微笑” 1分08秒

(週刊ニュースランキング)パラシュートなし世界初のスカイダイビング   52秒

(週刊ニュースランキング)妻夫木聡さん結婚へ お相手はマイコさん 1分20秒

(今週の注目)小池清都知事に都議会のハードル/どうなる?東京五輪経費 6分07秒

(週刊ニュースランキング)TOKIO山口達也さん離婚『すべて自分の甘さ』 1分15秒

ロボットが世界を変える!? 15分58秒

地下鉄駅で天井崩落(中国・上海)   35秒

逮捕 飲酒事故の前に当て逃げか   45秒

(リオ五輪)ついに開幕 直前まで大混乱   45秒

8万大観衆 史上最多の参加 開会式はブラジル歴史を… 4分32秒

夏本番アツ〜い!35度以上が今年最多 3分38秒

広島で「原爆の日」 3分19秒

侵入 中国漁船230席が/尖閣周辺に中国船230隻 ”武器搭載”の海警船舶も   55秒

“山の日”前に注意を 1分00秒

スポーツ(リオ五輪等) 2分11秒

小型航空機が着陸失敗60代の男性1人がけが   53秒

痴漢 神戸市職員の男逮捕 1分04秒

相模原 現場の施設で保護者会   57秒

体験  夏休みの子どもに科学を 1分11秒

天気 2分55秒

この番組では尖閣諸島の事案を報道するまでに、番組開始から約1時間12分が経過しました。番組途中の午後5時から放送地域が変化するため、仕切り直しのようにリオ五輪関連と猛暑の話題を再び放送し、次の「原爆の日」の話題の後に尖閣の事案が取り上げられました。

 

◆フジテレビ

「みんなのニュース」(午後5時30分〜6時)で取り上げました(44秒)。

みんなのニュース(午後5時30分〜6時)

リオ五輪 8分11秒

被爆から71年 平和記念式典/オバマ氏と抱擁 被爆男性の思い 4分45秒

113地点で猛暑日 東北〜九州で猛暑 1分36秒

小型機が着陸に失敗   29秒

被害者と面識なし 84歳女性殺害 1分24秒

あと2本 達成は持ち越し イチローきょうも   26秒

障害者施設殺傷 入所者の親族に向け説明会/4月にも衆院議長公邸訪れ・・・ 1分15秒

安倍首相「核保有・検討もあり得ない」   59秒

尖閣周辺に中国公船 政府 中国側に厳重抗議   44秒

フランスのバーで火事13人死亡   45秒

天気 2分03秒

世界最大級 アイドルフェスティバル   58秒

 

◆テレビ東京

尖閣諸島のニュースは一切報道しませんでした。この日のニュース番組は午前11時から11時3分までと午後5時20分から30分までの「TXNニュース」だけで、いずれも「リオ五輪」と「原爆の日」の話題のみ報道しました。

 

2.所感

以上の検証の結果、テレビ東京と日本テレビ以外では当日の尖閣諸島周辺の事案を取り上げていたことがわかりましたが、いずれの報道番組でも扱いは小さかったと言えます。まずこのことに対して疑問を感じずにいられません。

当会の発足時に取り上げた「安全保障法制」に関する報道は、多くの報道番組が積極的に行い、特に一部の放送局が非常に大きな時間を割いて報じ続けていました。それほどテレビ報道従事者の関心が安全保障の問題に対して高いことから考えると、今回の尖閣諸島周辺の事案に対しては、あまりにも反応が鈍いと言えるのではないでしょうか。

また、この件に関する報道が、ほとんど海上保安庁と外務省の発表内容を伝えただけであったのも気になるところです。映像も、第11海上保本部が提供した静止画像や、過去に撮影された尖閣諸島の資料映像のみを使用した報道ばかりで、現場の映像を捉えた放送は一つもありませんでした。

最近、尖閣諸島の問題に対して国民の関心はあまり高くなく、多少の状況変化には慣れてしまっているということも否めませんが、この度のことは「異例の事態」には違いないのであって、最大でも1分半ほどの報道しかないということで良いとは思えません。当会スタッフで、海外生活の経験が長い一人は「他国にこんなことが起こったら緊急報道特番が放送されるはず」と言います。しかし我が国では、平日よりもニュース枠が少ない土曜日の番組編成に変化は全くありませんでした。せめて、有識者の話を電話で聞くぐらいのことをする局があっても良かったのではないでしょうか。

この日はリオデジャネイロ五輪が開幕した日で、多くの報道時間がオリンピックに割かれることはやむをえなかったでしょう。中国側の行動もそのことを計算に入れてのことであろうとも推察されます。しかし、そうだとすれば、今回の各局の姿勢は、中国側の思惑にすっかりはまってしまったことにもなります。

ところで、この日の報道の中で不可解なのがNHKの報道の仕方です。午後6時からの10分間のニュースと、翌午前1時2分からの5分間のニュースでは本件を取り上げているのに、午後7時からの30分間のニュースと、8時45分から15分間のニュースでは取り上げなかったのはなぜでしょうか。

この日の午後になって、接続水域に入った中国公船が6隻から7隻に、漁船が200隻から300隻に増え、外務省が重ねて中国側に抗議したという事態の変化がありましたが、この変化を踏まえた続報を午前1時2分から5分間のニュースではトップで報じているところを見ると、この事案の重要性は相当程度認識していると思われるのに、最も多くの人に視聴されている時間帯の2つの報道番組では取り上げなかったというのは、実に中途半端で不可解な報道姿勢と思わざるをえません。

また、この日接続水域に潜入した中国公船は、「外見上3隻が武器を搭載していた」という事実について、TBS及びテレビ朝日の報道では言及していましたが、NHK及びフジテレビの報道では言及がありませんでした。外務省が発表した事実から、この件を省略して報じる理由がわかりません。この事案が安全保障上の脅威を孕んでいることを示す重要な事実なので、報道するからにはこの件には言及するべきであったと考えます。

オリンピックは当然、国民の高い関心が見込まれる事柄であり、また「原爆の日」は我が国の社会通念上、必ず報道されるべき事柄ではありましょう。しかし、何が起きてもこの2件だけ大きく報じておけば良いというわけではありません。

今回の「無報道」、または「短時間での報道」が、単に無関心によるものなのか、なんらかの理由に基づく意図的なものなのか計り兼ねますが、この度の事案のような、安全保障に関わる異例の事態に対して、視聴者の関心を喚起する報道を行うことこそ、国民の「知る権利」に資する報道と言えるのではないでしょうか。

3.NHK及び日本テレビへの質問と回答

上記の調査に基づいて、当会はNHKに対し、8月6日の放送について以下2点の質問をしました。

 

質問1

7時のニュースはゴールデンタイムとされ、夕食時に見るなど視聴率も高い時間帯であるが、この時間に、関心の高い中国船侵入に関するニュースを外した理由をお聞かせください。

 

質問2

外務省発表によると、船が武器を搭載しているという情報があるが、この事実に触れなかった理由をお聞かせください。

 

これに対し、NHKの回答は以下の通りでした。

 

放送法遵守を求める視聴者の会 御中

 

件名:ご質問へのお返事

連絡事項

 NHKでは、ニュース報道については報道機関として自主的な編集判断に基づいて放送しています。また、放送にあたっては国内番組基準を設け、この中で、何人からも干渉されず、不偏不党の立場を守って、故迭による言論と表現の自由を確保し 豊かで、よい故送を行う旨を明記しています。この基準に基づき、報道の担当責任者が具体的な対応を絶合的に判断し、ニュースおよびニュース番組を制作しています。 実際の業務運営においては、それぞれの責任者が時間帯ごとに、租当者とも協議しながら、その日に起きたきまぎまな分野のニュース全般を見渡しつつ、さまぎまな要素を勘案し、重要度や緊急度、さらには視聴者の関心の度合いや広がりといった要素をもとに総合的に判断し、限られた放送時問に収めるようにしています。

個別のニュースや番組の編集判断を明らかにすることは、放送の制作・編集についての自由が損なわれるおそれもあることから、従来からお答えしておりません。

なお8月6日(土)に「中国海警局の船6隻が接続水域に人ったことが確認され、外務省が中国大使館に抗議した」という内容の第1報を18時の全国ニュースで報じて以降、7日(日)午前1時の最終ニュース、おはよう日本の7時台で報じました。その後、「7日午前中に、うち2隻が日本の領海に侵入したことが確認された」 として、全国ニュースの12時台、15時台、ニュース7、8日(月)のおはよう日本の7時台などで随時、報じております。

なにとぞ、ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

 

以上がNHKによる回答です。

結果として、当会の質問には全く回答していただけなかったので、8月6日のゴールデンタイムに本件の報道が省かれた理由も、午後6時と翌午前1時のニュース報道した際に「武器を搭載した船」に言及しなかった理由も知ることができませんでした。

確かに、翌7日、中国船のうち2隻が我が国の領海内に侵入した際には、午後7時のニュースも含めて取り上げるなど、NHKが本件にある程度の関心を払っていることは認められます。そうであればなおのこと、外務省が2度にわたって中国側に抗議をした当日に、午後7時からの30分のニュースで取り上げなかったことへの疑問が残ります。

また中国海警局の船3隻が外見上武器を搭載していた事実には、テレビ朝日やTBSは1分未満の報道の中でも触れている一方、NHKでは1分半の報道の中で言及しませんでした。このことがどういった判断によるのか知りたいところでありましたが、今回の回答では叶いませんでした。

個別のニュースや番組の編集判断についての質問に対しては、「放送の制作・編集についての自由が損なわれるおそれもあることから」答えない、という答えが従来からの定型文であるようです。しかしこうして、報道の編集判断についての質問を何もかも拒絶する姿勢は妥当なのでしょうか。

確かに、放送事業者には「編集の自由」があり、何人からも干渉されるべきでないとされています。しかし、限られた電波という公共財を用いる放送事業者に対し、視聴者が質問し答えを求める権利もあるはずです。ましてやNHKは国民の視聴料で成り立つ「公共放送」です。そのNHKが、番組の編集判断に対する質問の全てを「干渉」として拒絶するとしたら、それは「編集の自由」という言葉のもとに、視聴者側の自由と「知る権利」とを否定することになるのではないでしょうか。

 

当会の質問は、例えば特定の芸能人の動向を伝えるべきなどといった手前勝手な要望に基づくものではなく、国の安全保障上の脅威をはらむ問題であり、外務省が1日の間に2度にわたって中国側に抗議をしなければならなかったという重大案件について、明確な調べに基づいて質問したものです。これに対して全く見解を示さないのは、傲慢な姿勢であると言わざるをえません。NHKにおかれては、是非この点の改善を求めたいと思います。

 

日本テレビに対しては、本件について8月6日に一切報道が無かったことについて理由を尋ねる質問を8月26日に致しました。これに対し、30日、日本テレビより『翌7日の午後6時からの「真相報道バンキシャ」では取り上げた』との回答が電話にてありましたが、8月6日に本件の報道がなかったことについては、追って担当部署より連絡するとのことでした。本稿作成時点(9月1日)では、追加の回答は届いておりません。

なお、同じく8月6日に本件について報道がなかったテレビ東京については、当日まとまった時間の報道番組がなかったことから、特に質問を送ることはしませんでした。

以上