去る8月6日午前、沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域に「中国海警局」の船6隻が入り、その周辺を中国漁船約230隻が航行しているのを海上保安庁が確認、外務省が中国側に抗議しました。

 

この事案について「テレビ報道がほとんど取り上げなかった。重要な事案なのにおかしいのではないか」との意見が当会に寄せられました。

 

そこで、8月6日の当日、在京キー局各社がこの件をどのように伝えたか、あるいは伝えなかったかについて調べてみました。(文中及び表中の時間表記は当会による計測結果。1つのニュースの途中でCMが入る場合、CMの時間は除外)。

 

1.各局の報道

 

◆NHK

午後6時から10分間のニュースで初めてこの件を伝えました。(1分30秒)

NHKニュース(午後6時〜6時10分)

38度超の猛暑日 明日も熱中症警戒 1分35秒

熊本空港で小型機 着陸に失敗 けが人1人 1分40秒

接続水域に中国海警局の6隻 周辺に漁船約230隻 外務省 中国大使館に抗議 1分30秒

「原爆の日」ワシントンでも追悼式 1分33秒

リオ五輪 日本人ボランティアも活躍 2分05秒

民進党 岡田代表 蓮舫氏支持の考えにじませる 1分08秒

一方、午後7時からの30分番組「ニュース7」では、この件を全く報道しませんでした。トップで取り上げたリオ五輪の話題には約10分を割き、続いて「広島原爆の日」の話題を約6分、「熱中症に警戒、大気不安定」という気象の話題を4分50秒伝えました。さらに、相模原市での障害者殺傷事件の続報、米中の外相が北朝鮮への対応を協議した件、熊本空港で小型機が着陸に失敗し1人が怪我をした件、元横綱千代の富士の通夜について伝えましたが、結局、尖閣諸島の件には一切触れませんでした。

午後8時45分から9時までのニュース番組でも、尖閣諸島の件は取り上げませんでした。

しかし、オリンピック中継の合間の翌午前1時2分から7分までの5分間のニュースでは、トップでこの件を扱いました(1分30秒)。

「接続水域に中国海警局の7隻 周辺に漁船 約300隻 外務省 中国側に重ねて抗議」として、午後からの新たな動きを加えた報道を1分30秒行いました。その後は「ボートが防波堤に衝突 11人けが」とのニュースと、オリンピックの話題を伝えました。

 

◆日本テレビ

この日、尖閣諸島のニュースは一切報道しませんでした。

この日の報道番組は「ウェークアップ!ぷらす」(午前8時〜9時25分)「NNNストレイトニュース」(午前11時25分〜35分)「news every.サタデー」(午後5時〜5時30分)「Going!Sports&News」午後11時55分〜翌午前1時5分)がありましたが、そのいずれでも尖閣諸島の案件は取り上げませんでした。

 

◆TBS

午後5時30分からの「報道特集」の中で尖閣諸島のニュースを伝えました(43秒)。

この番組では毎週、長時間を割いた特集が放送されますが、特集の前に放送される通常のニュースの枠内で、尖閣の事案が伝えられました。

報道特集(午後5時30分〜7時)

被爆71年広島原爆の日 「オバマ演説」引用の平和宣言 3分17秒

「南米で初 リオオリンピック開幕/会場の外で見えてくる課題」 3分51秒

列島各地で今年一番の暑さ 1分00秒

米シカゴ 丸腰の黒人男性に警官が… 1分13秒

障害者施設殺傷事件 入所者の家族ら対象に説明会 1分25秒

熊本空港で小型機事故 1人けが、滑走路は閉鎖   41秒

尖閣周辺の接続水域に海警局含む中国船236隻   43秒

NYでもヒロシマ犠牲者追悼集会 1分00秒

神奈川・小田原市 トラックと衝突 原付きの男性死亡   55秒

トラックと衝突 タクシー乗客の女性らけが   51秒

(特集)ヘリパッド建設工事「やんばる」の森で何が 19分45秒

(特集)原爆投下当日に走った列車 27分51秒

リオ五輪 2分43秒

メジャーリーグ(イチロー)/プロ野球 1分13秒

この後の報道番組は、午後8時54分から9時までの「フラッシュニュース」と、午後10時から11時24分までの「新・情報7Daysニュースキャスター」がありましたが、いずれにおいても尖閣諸島の件は報道されませんでした。結局、この日TBSが本件を伝えたのは「報道特集」の中での43秒だけでした。

 

◆テレビ朝日

午後4時30分からの「スーパーJチャンネル」で尖閣諸島の件を取り上げました(55秒)。

スーパーJチャンネル(午後4時30分〜6時)

リオ五輪 15分40秒

各地で体温超えの暑さ 2分17秒

(週刊ニュースランキング)住宅街を鹿が爆走 1分20秒

(週刊ニュースランキング)ニホンザルで初確認、睡眠中の”微笑” 1分08秒

(週刊ニュースランキング)パラシュートなし世界初のスカイダイビング   52秒

(週刊ニュースランキング)妻夫木聡さん結婚へ お相手はマイコさん 1分20秒

(今週の注目)小池清都知事に都議会のハードル/どうなる?東京五輪経費 6分07秒

(週刊ニュースランキング)TOKIO山口達也さん離婚『すべて自分の甘さ』 1分15秒

ロボットが世界を変える!? 15分58秒

地下鉄駅で天井崩落(中国・上海)   35秒

逮捕 飲酒事故の前に当て逃げか   45秒

(リオ五輪)ついに開幕 直前まで大混乱   45秒

8万大観衆 史上最多の参加 開会式はブラジル歴史を… 4分32秒

夏本番アツ〜い!35度以上が今年最多 3分38秒

広島で「原爆の日」 3分19秒

侵入 中国漁船230席が/尖閣周辺に中国船230隻 ”武器搭載”の海警船舶も   55秒

“山の日”前に注意を 1分00秒

スポーツ(リオ五輪等) 2分11秒

小型航空機が着陸失敗60代の男性1人がけが   53秒

痴漢 神戸市職員の男逮捕 1分04秒

相模原 現場の施設で保護者会   57秒

体験  夏休みの子どもに科学を 1分11秒

天気 2分55秒

この番組では尖閣諸島の事案を報道するまでに、番組開始から約1時間12分が経過しました。番組途中の午後5時から放送地域が変化するため、仕切り直しのようにリオ五輪関連と猛暑の話題を再び放送し、次の「原爆の日」の話題の後に尖閣の事案が取り上げられました。

 

◆フジテレビ

「みんなのニュース」(午後5時30分〜6時)で取り上げました(44秒)。

みんなのニュース(午後5時30分〜6時)

リオ五輪 8分11秒

被爆から71年 平和記念式典/オバマ氏と抱擁 被爆男性の思い 4分45秒

113地点で猛暑日 東北〜九州で猛暑 1分36秒

小型機が着陸に失敗   29秒

被害者と面識なし 84歳女性殺害 1分24秒

あと2本 達成は持ち越し イチローきょうも   26秒

障害者施設殺傷 入所者の親族に向け説明会/4月にも衆院議長公邸訪れ・・・ 1分15秒

安倍首相「核保有・検討もあり得ない」   59秒

尖閣周辺に中国公船 政府 中国側に厳重抗議   44秒

フランスのバーで火事13人死亡   45秒

天気 2分03秒

世界最大級 アイドルフェスティバル   58秒

 

◆テレビ東京

尖閣諸島のニュースは一切報道しませんでした。この日のニュース番組は午前11時から11時3分までと午後5時20分から30分までの「TXNニュース」だけで、いずれも「リオ五輪」と「原爆の日」の話題のみ報道しました。

 

2.所感

以上の検証の結果、テレビ東京と日本テレビ以外では当日の尖閣諸島周辺の事案を取り上げていたことがわかりましたが、いずれの報道番組でも扱いは小さかったと言えます。まずこのことに対して疑問を感じずにいられません。

当会の発足時に取り上げた「安全保障法制」に関する報道は、多くの報道番組が積極的に行い、特に一部の放送局が非常に大きな時間を割いて報じ続けていました。それほどテレビ報道従事者の関心が安全保障の問題に対して高いことから考えると、今回の尖閣諸島周辺の事案に対しては、あまりにも反応が鈍いと言えるのではないでしょうか。

また、この件に関する報道が、ほとんど海上保安庁と外務省の発表内容を伝えただけであったのも気になるところです。映像も、第11海上保本部が提供した静止画像や、過去に撮影された尖閣諸島の資料映像のみを使用した報道ばかりで、現場の映像を捉えた放送は一つもありませんでした。

最近、尖閣諸島の問題に対して国民の関心はあまり高くなく、多少の状況変化には慣れてしまっているということも否めませんが、この度のことは「異例の事態」には違いないのであって、最大でも1分半ほどの報道しかないということで良いとは思えません。当会スタッフで、海外生活の経験が長い一人は「他国にこんなことが起こったら緊急報道特番が放送されるはず」と言います。しかし我が国では、平日よりもニュース枠が少ない土曜日の番組編成に変化は全くありませんでした。せめて、有識者の話を電話で聞くぐらいのことをする局があっても良かったのではないでしょうか。

この日はリオデジャネイロ五輪が開幕した日で、多くの報道時間がオリンピックに割かれることはやむをえなかったでしょう。中国側の行動もそのことを計算に入れてのことであろうとも推察されます。しかし、そうだとすれば、今回の各局の姿勢は、中国側の思惑にすっかりはまってしまったことにもなります。

ところで、この日の報道の中で不可解なのがNHKの報道の仕方です。午後6時からの10分間のニュースと、翌午前1時2分からの5分間のニュースでは本件を取り上げているのに、午後7時からの30分間のニュースと、8時45分から15分間のニュースでは取り上げなかったのはなぜでしょうか。

この日の午後になって、接続水域に入った中国公船が6隻から7隻に、漁船が200隻から300隻に増え、外務省が重ねて中国側に抗議したという事態の変化がありましたが、この変化を踏まえた続報を午前1時2分から5分間のニュースではトップで報じているところを見ると、この事案の重要性は相当程度認識していると思われるのに、最も多くの人に視聴されている時間帯の2つの報道番組では取り上げなかったというのは、実に中途半端で不可解な報道姿勢と思わざるをえません。

また、この日接続水域に潜入した中国公船は、「外見上3隻が武器を搭載していた」という事実について、TBS及びテレビ朝日の報道では言及していましたが、NHK及びフジテレビの報道では言及がありませんでした。外務省が発表した事実から、この件を省略して報じる理由がわかりません。この事案が安全保障上の脅威を孕んでいることを示す重要な事実なので、報道するからにはこの件には言及するべきであったと考えます。

オリンピックは当然、国民の高い関心が見込まれる事柄であり、また「原爆の日」は我が国の社会通念上、必ず報道されるべき事柄ではありましょう。しかし、何が起きてもこの2件だけ大きく報じておけば良いというわけではありません。

今回の「無報道」、または「短時間での報道」が、単に無関心によるものなのか、なんらかの理由に基づく意図的なものなのか計り兼ねますが、この度の事案のような、安全保障に関わる異例の事態に対して、視聴者の関心を喚起する報道を行うことこそ、国民の「知る権利」に資する報道と言えるのではないでしょうか。

3.NHK及び日本テレビへの質問と回答

上記の調査に基づいて、当会はNHKに対し、8月6日の放送について以下2点の質問をしました。

 

質問1

7時のニュースはゴールデンタイムとされ、夕食時に見るなど視聴率も高い時間帯であるが、この時間に、関心の高い中国船侵入に関するニュースを外した理由をお聞かせください。

 

質問2

外務省発表によると、船が武器を搭載しているという情報があるが、この事実に触れなかった理由をお聞かせください。

 

これに対し、NHKの回答は以下の通りでした。

 

放送法遵守を求める視聴者の会 御中

 

件名:ご質問へのお返事

連絡事項

 NHKでは、ニュース報道については報道機関として自主的な編集判断に基づいて放送しています。また、放送にあたっては国内番組基準を設け、この中で、何人からも干渉されず、不偏不党の立場を守って、故迭による言論と表現の自由を確保し 豊かで、よい故送を行う旨を明記しています。この基準に基づき、報道の担当責任者が具体的な対応を絶合的に判断し、ニュースおよびニュース番組を制作しています。 実際の業務運営においては、それぞれの責任者が時間帯ごとに、租当者とも協議しながら、その日に起きたきまぎまな分野のニュース全般を見渡しつつ、さまぎまな要素を勘案し、重要度や緊急度、さらには視聴者の関心の度合いや広がりといった要素をもとに総合的に判断し、限られた放送時問に収めるようにしています。

個別のニュースや番組の編集判断を明らかにすることは、放送の制作・編集についての自由が損なわれるおそれもあることから、従来からお答えしておりません。

なお8月6日(土)に「中国海警局の船6隻が接続水域に人ったことが確認され、外務省が中国大使館に抗議した」という内容の第1報を18時の全国ニュースで報じて以降、7日(日)午前1時の最終ニュース、おはよう日本の7時台で報じました。その後、「7日午前中に、うち2隻が日本の領海に侵入したことが確認された」 として、全国ニュースの12時台、15時台、ニュース7、8日(月)のおはよう日本の7時台などで随時、報じております。

なにとぞ、ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

 

以上がNHKによる回答です。

結果として、当会の質問には全く回答していただけなかったので、8月6日のゴールデンタイムに本件の報道が省かれた理由も、午後6時と翌午前1時のニュース報道した際に「武器を搭載した船」に言及しなかった理由も知ることができませんでした。

確かに、翌7日、中国船のうち2隻が我が国の領海内に侵入した際には、午後7時のニュースも含めて取り上げるなど、NHKが本件にある程度の関心を払っていることは認められます。そうであればなおのこと、外務省が2度にわたって中国側に抗議をした当日に、午後7時からの30分のニュースで取り上げなかったことへの疑問が残ります。

また中国海警局の船3隻が外見上武器を搭載していた事実には、テレビ朝日やTBSは1分未満の報道の中でも触れている一方、NHKでは1分半の報道の中で言及しませんでした。このことがどういった判断によるのか知りたいところでありましたが、今回の回答では叶いませんでした。

個別のニュースや番組の編集判断についての質問に対しては、「放送の制作・編集についての自由が損なわれるおそれもあることから」答えない、という答えが従来からの定型文であるようです。しかしこうして、報道の編集判断についての質問を何もかも拒絶する姿勢は妥当なのでしょうか。

確かに、放送事業者には「編集の自由」があり、何人からも干渉されるべきでないとされています。しかし、限られた電波という公共財を用いる放送事業者に対し、視聴者が質問し答えを求める権利もあるはずです。ましてやNHKは国民の視聴料で成り立つ「公共放送」です。そのNHKが、番組の編集判断に対する質問の全てを「干渉」として拒絶するとしたら、それは「編集の自由」という言葉のもとに、視聴者側の自由と「知る権利」とを否定することになるのではないでしょうか。

 

当会の質問は、例えば特定の芸能人の動向を伝えるべきなどといった手前勝手な要望に基づくものではなく、国の安全保障上の脅威をはらむ問題であり、外務省が1日の間に2度にわたって中国側に抗議をしなければならなかったという重大案件について、明確な調べに基づいて質問したものです。これに対して全く見解を示さないのは、傲慢な姿勢であると言わざるをえません。NHKにおかれては、是非この点の改善を求めたいと思います。

 

日本テレビに対しては、本件について8月6日に一切報道が無かったことについて理由を尋ねる質問を8月26日に致しました。これに対し、30日、日本テレビより『翌7日の午後6時からの「真相報道バンキシャ」では取り上げた』との回答が電話にてありましたが、8月6日に本件の報道がなかったことについては、追って担当部署より連絡するとのことでした。本稿作成時点(9月1日)では、追加の回答は届いておりません。

なお、同じく8月6日に本件について報道がなかったテレビ東京については、当日まとまった時間の報道番組がなかったことから、特に質問を送ることはしませんでした。

以上

去る8月18日、「NHKニュース7」において、「経済的な理由で進路の選択が困難な状態にある学生たちが、自らの言葉で貧困の現状を訴えるイベントが開かれた」とのニュースが約6分間報道され、その中で同イベントに参加した女子高校生が、自身の生活や思いを語る様子が紹介されましたが、この報道について、出演した高校生が貧困状態にあるということに真実性がないのではないかとの指摘がインターネット上で相次ぎました。本人のツイッターアカウントが特定され、趣味への出費などが垣間見えると、本人が貧困状態にあるということが嘘ではないかと疑問を呈し批判する言葉が飛び交い、さらには、本人が公開していない個人情報まで暴かれるという、プライバシー権の侵害事案にまで発展しています。

 

そこで、この件に関する当会の考察および見解を以下に記します。

1.報道の要旨:

冒頭、アナウンサーが次のような説明をしました。
「六人に一人。厚生労働省がまとめた所得がある一定の水準に満たない貧困状態にある子供の割合です。

中でも、母子家庭など、ひとり親世帯の半数以上は貧困状態で、大学や専門学校への進学率は、全世帯の割合に比べておよそ30ポイントも低くなっています。

こうした実情を多くの人に知ってもらおうと、進路の選択に悩む高校生などが、今日、自らの言葉で、貧困の現状を訴えました。」
VTRでは、高校三年生の女子生徒が紹介されました。この高校生は、絵が大好きで、将来はデザイン系の仕事につくのが夢です。しかし、経済的な壁に直面し、進学を諦めざるを得ない状況に追い込まれています。

「ちゃんとやりたいことあって夢持ってるのに、何で目指せないんだろう」

その理由は、家庭の収入がある一定水準に満たない貧困状態にあるからです。アルバイトで家計を支える母親と二人暮らし。自宅のアパートには冷房はありません。

(場面は教室から、高校生の自宅内へ)

高校生は、自分が貧困かもしれないと感じるきっかけになったものとして、小型のキーボードを見せます。

中学校のパソコンの授業についていけなくなったとき、キーボードの練習だけでもできるようにと母親が買ってくれたもので、千円ほどだったといいます。
(場面変わって「かながわ子どもの貧困対策会議子ども部会」打ち合わせ会場)

今月6日、高校生は、ある会議に参加しました。貧困状態にある子どもへの対策を検討するために、神奈川県が設置した会議です。委員として参加する高校生。会議では、多くの人に現状を知ってもらおうとイベントを開くことを決め、この高校生がスピーチすることになりました。「私で役に立てるなら、と思い(この会議に)参加させて頂いております。18日頑張りましょう。」
(場面変わってイベント会場)

そして今日。高校生がスピーチしました。
「あなたの当たり前は当たり前じゃない人がいるんだと。子どもの貧困の現実を変えるために、まず、このことを知って頂きたい。六人に一人の子どもが・・・」

「お金という現実を目の前にしても、諦めさせないでほしいです。その人の努力に見合ったものが与えられて手にできる。そういう世界であってほしいと思っています。」
拍手が湧きます。
イベントに参加した男子高校生は「初めて知ったので、驚きがあります。勉強とか大変そうな人がいたら少しは力になれるんじゃないかな」と語りました。

参加した女子高校生は「パソコンの授業があるんですけど、そういう時に、こんな辛い思いをしている人がいるかと思うと、ほんとに一番胸に突き刺さるというか、つらいという風に思いました。」と語りました。

スピーチを終えた高校生は「全力で私の気持ちだったり、思いを皆さんに届けられたのかなと思っています。将来的には子どもの貧困の対策として、こう、何かが形として実現できればな、という風に思っています」と語りました。

 

2.取材対象の真実性が疑われた問題について

この報道でまず問題なのは、ここで摘示された「貧困」の定義が、印象として曖昧であったことでしょう。

冒頭のアナウンサーによる説明には、事実と異なる点はありません。ここでいう「貧困」は、「収入源が全くない、1日の食事にも困る」といったような「絶対的貧困」ではなく、可処分所得が全国の中間値の半分に満たない世帯が該当する「相対的貧困」を指していると思われます。しかし、「収入がある水準を下回る」などと曖昧な表現となっているため、一般視聴者の普通の注意と視聴の仕方では、ここでいう「貧困」がどのような状況を指すのか、十分に伝わってはきません。

 

その上で、出演した高校生の部屋の様子などを見ると、一般視聴者が「貧困」と聞いて直感的に思い描く姿とは異なって見え、違和感を生じた視聴者が少なくなかったと思われます。「パソコンが買えずに授業についていけないので、母親がキーボードだけ買ってくれた」というエピソードは、学校には普通に通える子供であっても、現代人の成長過程では必須に近いパソコンの授業に、経済的理由でついていけない場合があるという事実を、「相対的貧困」を象徴する事象として紹介したものと思われますが、これにリアリティが感じられないと受け止めた人々がインターネット上で批判を展開しました。

しかしこの場合、出演した高校生本人に非があるわけではなく、問題はこうした予断あるいは誤解を招くような放送をNHKが不用意に行ったことにあると当会は考えます。

 

さて、そんな中、片山さつき衆議院議員がツイッター上でこの報道への疑問を表明し、この報道についてNHKに質問し回答を求めた旨を発表しました。

その後NHKによる「回答」として片山氏が示した文言は、それがNHKによる片山氏への説明を正しく伝えているとすれば、無責任な回答であると言わざるを得ません。

 

その「回答」とは、

『本件を貧困の典型例として取り上げたのではなく、経済的理由で進学を諦めなくてはいけないということを実名と顔を出して語ったことが伝えたかった。』

というものですが、この説明は無責任です。一般視聴者は、公共放送たるNHKが確かな事実を伝えるメディアであることを期待しているはずです。この度の報道内容を見れば明らかに「貧困」状態にある学生の一例として高校生が紹介されています。高校生が「相対的貧困」の状態にあるという確かな事実を伝えたと考えるなら、NHKは確信を持ってそう言うべきです。あるいは万が一、放送内容の真実性に不十分な点があったとすれば、NHKが責任をとるべきです。今回の取材対象が未成年の一般人であることからも、その責任がNHK側にあることは明らかです。また一般論として、発言内容の真実性の有無を全く顧慮せずに「その人がそのように発言したという現象そのものは事実である」という理由で、どのような主張内容でもそのまま公共放送に乗せて良いのだとしたら、一般視聴者は報道の何を信じて良いのかわからなくなってしまいます。

 

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3.「かながわ子どもの貧困会議」とNHKのコンプライアンス意識について

この報道の中で高校生が參加したイベントを主催したのは「かながわ子どもの貧困対策会議」という、神奈川県に置かれた「会議」です。この会議には本番組の記者である戸田有紀氏がメンバーとして參加していますが、当会の調べで、同会議が地方自治法に違反し、無効であると考えられることがわかりました。このことからNHKのコンプライアンス意識について疑義が生じるものと考えますので、以下に詳しく説明いたします。

 

まず、地方自治法第138条の4第3項で「普通地方公共団体は、法律又は条例の定めるところにより、執行機関の附属機関として自治紛争処理委員、審査会、審議会、調査会その他の調停、審査、諮問又は調査のための機関を置くことができる。ただし、政令で定める執行機関については、この限りでない。」と規定しています。

 

さて、「かながわ子どもの貧困対策会議」の設置根拠を見ますと、「かながわ子どもの貧困対策会議設置要綱」となっています。同「設置要綱」は神奈川県の内規に過ぎません。では、同会議を任意に設置した、との主張は有効でしょうか。

 

地方公共団体が任意に機関を設置するときは、「すべて条例によらなければならないが、たとえば、都道府県などにおいてよく設置される法令審査委員会のように、当該都道府県の知事の補助機関である職員その他執行機関の補助職員のみから構成されるようなものであれば、条例によらなくとも、執行機関限りで適宜設置することができるものと解」(行実昭和28.1.16)しますが、これは、単に執行機関の補助部局内における事務執行手続の一方法で、重要事項を協議するために設定される部課長会議に相当するものと解されています。

 

しかし、それに「執行機関の補助職員以外の外部のものも委員あるいは構成員として加わるときは、それはもはや『組織』として理解されるべきであり、その設置については、附属機関として自治法第138条の4第3項の規定によって条例で定めなければならない」(松本英昭著『新版逐条地方自治法』(学陽書房))と解されており、数多くの裁判例もあります。

 

このような場合、地方自治法上は、「相当程度以上組織化されながら法律又は条例に根拠をおいていないものは違法」(『地方財務実務提要』(ぎょうせい))なものといえるでしょう。

 

つまり、外部の会議メンバーとしてNHK所属の戸田記者が参加している同会議は、地方自治法上の「附属機関」とはみなせず、違法かつ無効です。この会議の活動を、戸田記者が参加する「NHKニュース7」が特に取り上げて報道したという事実は、特定の政治的活動、しかも違法かつ無効な活動にNHKが関与した疑いを生じるもので、NHKのコンプライアンス意識の低さが指摘されても致し方ないものです。

 

もしも政治家が、この度の報道から何らかの問題を見出し追及するべきであるとすれば、それは上記で示したような違法かつ無効な会議の設置を、習慣的に許容し援助しているおそれのある自治体の問題でありましょう。片山さつき議員にはぜひこの点の追及をお願いしたいと思います。

 

4.公平・公正な報道を

我が国で「相対的貧困」の状態にある子供の数は6人に一人ということは客観的な事実です。この問題は、国民の大多数が貧困であった敗戦直後の日本や、発展途上国における「絶対的貧困」の問題とは異なる「先進国の貧困問題」と言えます。この認識を前提として、子供たちの将来の希望が経済的理由から絶たれてしまうようなことができるだけ起こらないように、公平なチャンスのある社会にしていくための議論は相当の意義を持つものと考えます。だからこそ、これを伝える報道も恣意性を排した、公平かつ公正なものであることが大切ではないでしょうか。
今回のNHKによる報道は、曖昧な説明の上で扇情的な内容に終始したため、意図しなかった予断や誤解を招きました。こうしたことがないよう、有意義な議論を喚起する報道とするためには、まず「相対的貧困」という定義をはっきりと示し、それに対して現状でどのような補助があり、それで足りないものは何であるかなど、明確な形で問題点を明らかにするべきでしょう。そのためには、伝えるべき事実が余すところなく伝わるために、必要な時間を十分に確保して報道するなど、慎重に取り扱う必要があるものと考えます。

 

またそれ以前に、上記3で示した通り、特定の政治活動にNHKが加担して、しかも違法で無効な団体の活動を紹介した疑いが持たれるようなことでは、そもそもの議論の土俵が崩れてしまう恐れがあります。NHKにおかれては自社のコンプライアンスを見直し、くれぐれも公平かつ公正な報道が行われるよう、当会としては要望したいと思います。

 

以上

毎週金曜に発行になりました☆!「週刊!報道検証」です。
複数人により、放送法第4条に照らし合わせた検証を行っております。
丁寧に検証していますので、ぜひご覧ください。

目次

1.TBS「NEWS23」
平成28年6月13日(月)放送分
平成28年6月14日(火)放送分
平成28年6月15日(水)放送分
平成28年6月16日(木)放送分
平成28年6月17日(金)放送分

2.テレビ朝日「報道ステーション」
平成28年6月13日(月)放送分
平成28年6月14日(火)放送分
平成28年6月15日(水)放送分
平成28年6月16日(木)放送分
平成28年6月17日(金)放送分

3.読売テレビ「そこまで言って委員会NP」
平成28年6月12日(日)放送分

4.TBS「サンデーモーニング」
平成28年6月12日(日)放送分

 

事務局長・小川榮太郎より

視聴者の会の放送時間の賛否バランスのパーセンテージが本当に正しいかどうかを検証してくれてゐる動画を発見しました。9月16日に絞りニュース23を全編早回ししながら項目ごとに時間計測をしてくれてゐます。極めて実証的でごまかしの利かない動画で、感動しました。ぜひご覧ください。

この動画の最後に「視聴者の会」の9月14~18日調べの賛成7%vs反対93%に対して、動画作成された方の調査が、9月16日の賛成14%vs反対86%で「意見広告と近い数字になりました」と検証を結んでくださつてゐます。

ちなみに、視聴者の会調べの数字でも9月16日については、賛成15%対反対85%で、この動画と殆ど同じ数字になつてゐることをお知らせしておきます。
我々は実証と客観性、判断の公平性を重視しながら仕事をしてゐますので、他の方々による再検証と批評を拒絶せず、むしろ歓迎します。

先日、東京新聞で「データに疑念がある」と記事に書かれたり、視聴者の会から1月に広告出稿依頼を出した朝日新聞からは掲載拒否の理由に「データへの疑義」が上げられてゐます。
残念なことはこれら大新聞が、データに疑念があるなら自分たちで再検証すればいいのに、検証せずに勝手に「疑義」と決めつけた記事を書き、また広告掲載を拒否してゐる点です。
言論機関として恥づかしくないのでせうか。

リベラル(?)マスコミやジャーナリストのみなさん、レッテル貼りではなく「実証」と「かみあつた議論」を大切にしませんか? その上で堂々と議論しませうよ。繰り返しそれを呼び掛けてゐるのに、遠くからの罵倒、否定、取材なしの推測ばかりが目立ちます。残念。