【放送監視レポート】二度目の緊急事態宣言発出の背景に対する勉強不足【報ステ】

放送監視レポート

1月4日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。

・事実に基づいた放送であったか

まずは放送内容を見ていきます。 

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【放送内容】

徳永有美アナウンサー(以下徳永アナ):続いてです。年明け恒例の総理の会見ですが、今年はコロナ一色となりました。

小木逸平アナウンサー(以下小木アナ):これまで緊急事態宣言には慎重な姿勢を見せていました、菅総理大臣ですけれども東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県を対象に緊急事態宣言の検討に入ったことを明らかにしました。早ければ今週の後半にも出される見通しとなっていますけれども、これで感染の拡大は止めることができるのでしょうか。

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【VTR】
小池百合子都知事:徹底して1都3県力を合わせ、人流を抑制していきたいと考えています。

ナレーター:その名も緊急事態行動。総理による緊急事態宣言を前に首都圏の1都3県が動きました。

小池知事:都民県民への呼びかけです。この緊急事態が発出されているその間、20時以降の不要不急の外出自粛をお願いする。

ナレーター:年末年始に事態が一変しました。仕事始めとなった今日皆さん、口にするのは先の見えない不安です。

(コロナを不安視する市民の声が紹介される。)

ナレーター:これまでは緊急事態宣言に消極的だった菅総理が宣言を検討する考えを表明しました。

菅義偉総理大臣;経路不明の感染原因の多くは飲食によるものと専門家が指摘しています。従って飲食でのリスクを抑えることが重要です。1都3県について改めて時間短縮の20時までの前倒しを要請しました。国として緊急事態宣言の検討に入ります。飲食の感染リスクの軽減を実行的なものにするために内容を早急に詰めます。

ナレーター:政府関係者によると8日、金曜日にも緊急事態宣言の効力が発生する見通しです。緊急事態宣言は特別措置法に基づいてまず総理が期間や区域を指定します。そして対象区域の知事が外出自粛の協力を要請したり学校の休校や百貨店など多くの人が集まる施設の使用制限を求めたりすることなどができます。去年4月の宣言では東京でも多くの施設が休業要請の対象となりました。ネットカフェやカラオケボックスそしてライブハウスや映画館も。都立の学校は5月いっぱいまで休校になりました。今回の緊急事態宣言ではどうなるのでしょうか。

記者:飲食に集中するということは昨年4月の緊急事態宣言と違うものなのか?

菅総理:まず全体としての緊急事態宣言ですが、この約1年のなかでどこが問題か明らかになってきた。その上で諮問委員会の先生方に諮った上で決定をさせていただきたい。そういう考え方からすれば限定的に行うことが効果的。

ナレーター:限定的とする詳細についての言及はありませんでした。来週には大学入学共通テストが予定されていて受験シーズンに突入します。緊急事態宣言が出された場合でも予定どおり行われるのでしょうか。

西村康稔経済再生担当大臣:基本的には緊急事態宣言がなったとしても感染防止策を徹底して実施をすると考えている。

ナレーター:また、西村大臣は現時点で小中学校を一斉休校にする考えはないとしています。大阪の吉村知事は緊急事態宣言が出された場合、首都圏との往来に自粛を要請する考えです。

吉村洋文大阪知事:法律があれば禁止くらい要請したい。緊急事態宣言とはそういう意味だと思っている。特にビジネスマンの方は「どうしても仕事で」という方もいらっしゃると思うが、なんとかそこはリモートワークでやってもらいたい。

ナレーター:東京では今日、884人の感染が確認されました。月曜としては最も多かった先月28日の481人を400人以上、上回っています。そして重症者も昨日から7人増えて108人に。4月末の105人を上回り過去最多を更新です。菅総理の会見を受けて小池都知事は…。

小池都知事:早速ご対応いただいたと考えておりますし、今ポイントはスピードだと思います。

ナレーター:ところが、その7時間後…。

小池都知事:今が勝負所です。1都3県が一体となって県民・都民の皆さんにしっかりと訴えて参りましょう。

ナレーター:今夜、1都3県の知事は緊急事態宣言を待たずに、感染拡大を防ぐための緊急事態行動を発表しました。期間は今週金曜日から今月末までとしています。

小池都知事:都民県民のみなさんへの呼びかけであります。この緊急事態が発出されている間は20時以降の不要不急の外出自粛をお願いする。

ナレーター:政府が求めていた飲食店への更なる時短要請についても応じました。現在、東京都や横浜市などで酒を提供する飲食店は午後10時で閉店するよう求められていますが、金曜日からは午後8時までとする方針です。更に12日以降は、対象を飲食店全般にまで拡大します。

森田健作千葉県知事:確実に事業者の皆様に支援が行き渡るようにする必要がある。国の持続化給付金・家賃支援給付金について新たに本年1月以降も実施することをお願いいたします。

(VTR要約)
営業自粛に戸惑う飲食店の様子や経営者の声、東京証券取引所にて株価の動きがVTRで伝えられる。

ナレーター:また、政府が感染対策の決め手としているワクチンの接種については2月下旬までに開始できるよう準備を進めているといいます。

【スタジオ解説】
小木アナ:まずは緊急事態宣言が早ければ、今週後半にも出るという流れとなっていった背景について国会記者会館にいます吉野記者に聞きます。吉野さん、総理は決断をしたのはなぜなんでしょうか。

吉野記者:この年末年始で菅総理のテンションが変わったんです。どういうことかといいますとこの宣言は国にとって最後の切り札ではあるんですが、今の法律の下では大して強いカードではなくてだからこそ、菅さんは使うことには慎重だったんですね。ところが、大みそかに全国の感染者が最多になりましたよね。政府関係者によりますと菅総理は急にハンドルを切ったんだということです。時短要請と緊急事態宣言の組み合わせたやり方にかじを切ったということで、それからの今日の動きということになります。

小木アナ:急にハンドルを切ったとはいえ会見の中で具体的な期日とかそういった表現に踏み込まなかったのはなぜなんでしょう。

吉野記者:まだどんな緊急事態宣言にするか中身が詰まっていないからなんですね。どういうことかといいますと緊急事態宣言はどこを対象にするのかどんな制限にするのかそして、その期間はいつまでなのか、自治体とも調整しながら1つ1つ決めていかなければならないんですね。今は、まだ走りながら考えているという状況ですので、今日の会見では、まずは方向性を示すということだったんだと思います。

小木アナ:となると、その後を聞くのはなかなか難しいですが、緊急事態宣言を出したあとの出口戦略といいますか政府はその後のことをどういうふうに考えているんでしょう。

吉野記者:出口はなかなか見えませんが、まずは1か月ですよね。菅総理はこの1か月程度で限定的そして集中的に対策を行うことが、効果的だと話しています。ただ、これで営業時間の短縮との組み合わせで何とかピークアウトしてくれればいいんですけれども緊急事態宣言というのは先ほども申し上げたように強制力のあるものではないんですよね。一方で、菅総理は次の手として新型コロナ特措法を改正する方針を打ち出しました。この改正については与野党も協力して来月上旬の成立を目指しています。つまり、1か月後にピークアウトしなかった場合には緊急事態宣言の延長あるいは改正法に基づく更なる強力な措置も、視野に入ってくることになります。

小木アナ:それが奥の手になってくるかもしれないということですね。吉野記者でした。

(中継で新橋駅前の様子が紹介される。)

徳永アナ:ここからは感染症学がご専門の国際医療福祉大学松本哲哉主任教授にお話を伺います。よろしくお願い致します。
(国際医療福祉大学松本哲哉主任教授とともに年末年始の感染状況や今回の緊急事態宣言の説明・解説がなされる)

徳永アナ:太田さん再び緊急事態宣言の検討ということなんですがどういうふうにお考えですか?

太田昌克共同通信編集委員:そもそも、官邸総理サイドとしてはもう緊急事態宣言は懲り懲りだというのが一貫した立場だったんですよね。できれば東京に時短営業を10時から8時に繰り上げてもらって愛知や大阪が成功したように人の流れを止めたいというのが当初の考え方だった。しかし、よく考えますと年末で事業者、飲食業界の皆さんにとっても一番の稼ぎ時ですよ。これは恐らく、小池知事も相当悩まれたと思うんです。そういった中で時短営業が行われないまま1000人とか800人を超えるような感染者が連日出てしまった。総理も相当危機感を募らせたというふうに私も聞いております。そうした中で2日前の1月2日ですね。都知事4人と西村担当大臣の会談があってそこで国側としては時短要請をやってください、そしたら知事側はだったら緊急事態宣言をお願いしますよと。すなわち法的な裏付けが欲しかったわけですよね。政府、総理サイドとしては知事がそこまで要請するのならその法的な後ろ盾である緊急事態宣言をしようと。そういう判断に至ったんだと思います。

徳永アナ:ただ、今回の総理の口からも限定的、集中的という言葉が出ていますけども飲食業の方々は本当にちょっと更に厳しくなるかもしれない。

太田氏:本当、そうなんです。やはり振り回されているのは現場の事業者の皆さんだと忘れちゃいけないと思うんです。今回の決定仕方ないのかもしれません。しかしよく考えますと政策の振れ幅があまりに大きい。1か月前までは、まだGoTo大丈夫ですよと言っていたんですね。それが一気に緊急事態宣言まできてしまうということなんです。難しいかもしれませんが政府は、やはり先々を呼んでより予見可能性のある道筋を事業者さんにも見せてあげるということが社会の安全につながると思うんですね。国会は1月18日からですけどもできれば前倒すくらいの覚悟で先ほど森田知事が持続化給付金の継続や家賃支援の話をされていましたけど、そういった議論を早く国、政府で進めてもらいたいと思います。

徳永アナ:状況が変わるのは当然のことだと思いますが、その場合は補償というところどうやって生活をしていくかというところ手厚く、細かく考えていただきたいですよね。

太田氏:メリハリをちゃんとして迅速にということだと思います。

【検証部分】

今回の放送に関して検証したい部分が2点あります。

1点目が今回の緊急事態宣言をめぐる流れについてです。
放送では小池知事を中心に1都3県で緊急事態行動の呼びかけを行い、国に対して緊急事態宣言の発出を要請し、その要請を受けて政府が動いたという形で放送されていました。

こうした流れについて内閣官房参与を務めている高橋洋一嘉悦大学教授は次のように指摘しています。

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真相。国は、12月初旬に12/17までの東京都による時短を1/11まで延長を都に要請。都が国の要請に難色を示しつつ、結果として1/11まで時短を延長。その間、国は3次補正を準備。1/11の期限が迫る中、都は国に緊急事態宣言を要請。国はそれを受け緊急事態宣言の用意、とともに時短への財政支援強化

1月5日の高橋洋一氏のツイートより
https://twitter.com/YoichiTakahashi/status/1346275929580945408?s=20
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12月初旬の段階で国が都などに対して飲食店の時短営業の要請を行っており、国はその間に時短営業への補償ができるように補正予算を組んでいたという構図だったのです。
一連の流れは小池知事の単なる政治的パフォーマンスであり、感染状況が悪化した場合の緊急事態宣言発出に向けた動きは12月にある程度、国の方で想定されていたと考えられます。

小池都知事らの要請により緊急事態宣言の検討という報道は事実と異なる可能性があるのです。

東京都・小池都知事のコロナ対応の不備については以下の記事をご参照ください。
北海道や大阪と比較して小池都知事の政治的なパフォーマンスを優先させる様子が描かれています。
広野 真嗣 小池百合子都知事が緊急事態宣言前に放った“悪手”…東京都の感染者が減らない本当の理由
https://bunshun.jp/articles/-/42720

次に検証したい点が太田氏の次の発言です。

太田氏「やはり振り回されているのは現場の事業者の皆さんだと忘れちゃいけないと思うんです。今回の決定仕方ないのかもしれません。しかしよく考えますと政策の振れ幅があまりに大きい。1か月前までは、まだGoTo大丈夫ですよと言っていたんですね。それが一気に緊急事態宣言まできてしまうということなんです。」

GO TOキャンペーンから緊急事態宣言発出という流れで事業者が振り回されているという指摘がされています。
これについてGO TOキャンペーンは感染の拡大に優位な影響をもたらしていない可能性があり、事実と異なる可能性があります。
高橋洋一氏の論考からこの点について検証していきます。

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国土交通省の鉄道輸送統計と航空輸送統計によれば、GoToトラベルの行われていた8~10月の旅客輸送数は50億人弱だ。一方、同じく国土交通省によるGoToトラベル事業における利用実績は、7/22~10/31で3976万人だ。

これは鉄道・航空輸送の1%程度しかない。このGoToトラベルを停止したところで、人の移動に対する影響はたいしたことがないのは明らかだろう。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身会長もエビデンスはないと公言しているほどだ。

それでも、マスコミはGoToトラベルをやり玉に挙げて政府を批判し、政府は一律一時停止を決めると、マッチポンプのように手のひらを消して、旅行飲食事業者はどうするかとの逆の批判に転じた。

こうした時には、政府による筋の通った上で、丁寧かつ責任ある説明が必要だった。GoToトラベルの一律一時停止について、筆者は「よくわからないけど、止めてみる」と考えた。政府の説明はちょっと歯切れが悪かった。

《高橋洋一 2021年、日本が決めるべき「コロナ対策」は、単純明快だった…!
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/78982?imp
》より
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高橋氏の説明にさらに加えると、Go Toトラベルの利用者のうち感染者は200人程度とされています。

各国の感染状況を比較してみても、Go Toトラベルを実施していた日本だけ感染者数が多いという訳ではありません。
各国で感染者数は同様の形で推移しています。つまり、Go Toトラベルは新型コロナウイルスの感染拡大と関係しているとは言えず、放送での発言は事実に基づかない可能性があるのです。

以上2点からこの日の放送は事実に基づかない報道があり、次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(3)報道は事実をまげないですること
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新・視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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