1月10日のサンデーモーニングのレポート中編、アメリカ連邦議会議事堂での暴動について報道された部分です。
今回検証するのは以下の点です。
・政治的に公平な報道であったか
まずは放送内容を確認していきます。
——-
【VTR】(要約)
1月6日水曜日、トランプ氏の演説をきっかけに、バイデン次期大統領の当選が確定する、その審議が行われていた議会にトランプ大統領の支持派が乱入するという、前代未聞の事件が起こった。デモ隊は壁をよじ登るなどして続々と議事堂内に乱入し、トランプ支持の女性が警察に撃たれ死亡。さらに議事堂の外でも支持者3人、警官1人が死亡という最悪の事態に。一方、トランプ大統領はツイッターに動画を投稿し、デモ隊に同情し、不正な選挙だったと主張。今回の騒動を巡り、トランプ氏はツイッター社からアカウントを永久に停止されることになった。再開された審議では、トランプ氏の腹心だったはずのペンス副大統領が「暴力が勝つことは絶対にない」と述べ、更に選挙結果に異議を申し立てる予定だった共和党の上院議員は「今日の出来事で考え直した」と主張を撤回した。混乱から一夜明けた7日、トランプ大統領はようやく敗北を認めたものの、大混乱を招いたことへの反省の言葉はなかった。民主党のペシロ下院議長は、任期満了を待たず、トランプ大統領の弾劾決議案を11日にも提出するとしている。バイデン次期大統領は、アメリカの分断にどう向き合うのだろうか。
——-
【パネル解説】(要約)
1月6日に開かれた上下両院合同会議で、選挙人の投票結果が認められ、バイデン氏の当選が確定した。また5日に行われたジョージア州の決戦投票では2議席とも民主党が獲得。上下両院とも民主党多数のため、バイデン氏にとって安定的な政権運営を行うことが可能になった。しかし先月の世論調査では共和党支持者の77%が「大統領選で大規模な不正があった」とするなど、深い分断があり、難しい舵取りを迫られることになる。この不正があったという訴えについては、保守派が多い最高裁で退けられ、トランプ大統領が指名したバー司法長官も結果を覆す不正の証拠はないとしている。
【コメンテーターによる解説】(一部要約)
関口宏 氏:断末魔の叫びを聞いたかなという感じが僕はしましたが。
寺島実郎 氏:まさにそうで、大統領が自分の国の選挙制度を否定してみせる、さらに暴動を扇動するなんていうね、民主主義そのものを否定する、民主主義こそアメリカの価値だったはずなんですね。しかも自分のエゴのために、国のためとかではなく、分断の闇はものすごく深いというのは、トランプがとった7400万票の持つ意味なんですけれどもこれはびっくりするんですけど、白人プロテスタントの72%がトランプに入れたんですね。そのことが共和党の支持者の77%というさっきの話にもつながるんですがアメリカの民主主義の試練が続くというか、これと日本は正対していかなきゃいけないわけで、考えさせられますね。
浜田敬子 氏:もちろん今回の事件についてはトランプ大統領の責任は非常に重いと思いますが自分の選挙のことだけを考えてトランプ人気に乗じた共和党議員の責任は非常に重いと思います。もう1つ、アメリカの分断を加速させた責任としてはツイッターやフェイスブックといったSNSを運用するプラットフォーム企業の責任が非常に重いのではないかと思っています。昨日やっと、トランプ大統領のアカウントを永久停止するというふうにツイッター社は発表したわけですがこれまで5年間、いろんなフェイクニュースを流したり、誹謗中傷したにもかかわらず表現の自由ということを名目にアカウントを停止しなかった。結果としてこういう事件が起きて、分断を加速させたということを、もう一つ課題として私たちは捉えなければいけないんじゃないかと思います。似たような為政者が今後出てきた場合どうするのか。きちんとした基準を作って、どういう場合に停止するのかといったポリシーも、もう一度考え直す必要があると思いました。
安田菜津紀 氏:乱入事件の前に、トランプ大統領自身が選挙についての不正確な情報を発信して大衆を煽るような言動を繰り返してきたと思うんですね。トランプ大統領のツイッタ―は停止されましたけども、その後も根拠のない情報がSNSの中で広がり続けています。日本でも公権力がデマに踊らされて虐殺まで起きた歴史がありますし、一国のリーダーがデマや差別発言を4年間繰り返ししてきたことの結果を、私たちも重く受け止めるべきではないかと思います。(要約)
涌井雅之 氏:今回のことで、民主主義の敵は、社会的に許容できないほどの格差だということが明確になったと思うんです。この問題を解決しないかぎり、不確かな情報やうわさがどんどん流されて、ストレスを持った民衆を煽り立てていくという構図は変わらないのではないかという風に思いますね。(要約)
青木理 氏:今回思ったのは民主主義ってもろいんだなということですね。日本でも、メディアや内閣とか検察等の人事、学術会議まで権力によって圧力をかけられている。権力がやるべきじゃないことをやられると、民主主義はあっという間に崩壊していきかねないんだということを真剣に考えなくちゃいけないですよね。(要約)
【検証部分】
今回取り上げたのは、アメリカ連邦議会議事堂での暴動に関する報道です。
この放送では、寺島氏、浜田氏から政治的に公平でないコメントが見られました。該当する箇所を順に確認します。
寺島氏の指摘で該当するのは、「大統領が自分の国の選挙制度を否定してみせる、さらに暴動を扇動するなんていうね、民主主義そのものを否定する、民主主義こそアメリカの価値だったはずなんですね。しかも自分のエゴのために、国のためとかではなく」という部分です。
寺島氏は、トランプ大統領は自らのエゴでアメリカの選挙制度を否定していると批判しています。
しかし選挙の結果をめぐるトランプ大統領の主張は、選挙制度を否定しているものではありませんし、自らのエゴで行っているという指摘にも根拠がありません。
トランプ大統領の主張は、選挙制度ではなく選挙結果を否定しているものです。選挙制度はあるものの、その制度に則った公平な選挙が行われなかった、具体的にはバイデン候補陣営による不正があったと主張しています。
したがって、これは民主主義の否定でもありません。むしろ、不正な選挙に声を上げず、黙って見過ごすことこそ民主主義の否定であるといえます。
このような事実を無視した寺島氏の指摘は、トランプ大統領を一方的に攻撃するものであり、政治的に公平とはいえません。
次に浜田氏のコメントに関してです。
浜田氏のコメントの中で政治的に公平でないのは、「昨日やっと、トランプ大統領のアカウントを永久停止するというふうにツイッター社は発表したわけですがこれまで5年間、いろんなフェイクニュースを流したり、誹謗中傷したにもかかわらず表現の自由ということを名目にアカウントを停止しなかった。結果としてこういう事件が起きて、分断を加速させたということを、もう一つ課題として私たちは捉えなければいけないんじゃないかと思います。」という部分です。
つまり浜田氏は、トランプ氏のツイッターはもっと早期に停止させられるべきだったとしています。
しかし、今回のツイッターのアカウント停止というのは、表現の自由の侵害であるとも考えられています。当然尊重されるべき表現の自由が抑圧されており、しかもそれが民間企業の裁量で行われてしまっていることには世界中から懸念の声が上がっています。
このような検閲ともいえるツイッター社の行為に対して、浜田氏は公然と賛意を表明し、今挙げたような問題点については全く言及しませんでした。このような表現の自由に関する問題を全く取り上げていないコメントは、政治的に公平でないといわざるを得ません。
今回の放送では、寺島氏、浜田氏から、アメリカ大統領選挙、トランプ大統領のツイッターのアカウント停止に関して、政治的に公平ではない発言が見られました。
このような放送は次の放送法に抵触する恐れがあります。
————————————————————————————–
放送法4条
(2)政治的に公平であること
————————————————————————————–
新・視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。