【放送監視レポート】コロナとGO TOとの関連性における確実な根拠のないこじつけと印象操作【報ステ】

放送監視レポート

1月13日の報道ステーションのレポートです。
今回検証するのは以下の点です。

・印象操作と思われるような発言がなかったか
・さまざまな論点を取り上げた放送であったか

まずは放送内容をみていきます。

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小木逸平アナウンサー(以下小木アナ):さて、緊急事態宣言が新たに出されました、7府県の状況というのを見ていきます。病床の使用率ですとか人口10万人当たりの療養者といった大きく分けまして6つの指標で現在、どういう状況なのかというのを見ていきます。
例えば、栃木なんですけれども人口10万人当たりの療養者は34.6人1週間の新規感染者も人口10万人当たり32.37人と目安の25人を大きく上回ってますね。
そして、感染者を前の週と比べての比率なんですが、180%。つまり1.8倍になっているということで今、急増していることが分かります。これは厚生労働省が8日時点で発表したものを各自治体がまとめた数字を出していますが、7府県、いろいろ見ていきますと大阪は全ての指標で赤つまり一番深刻なステージ4の段階になっているということです。そして兵庫ですけれども陽性率は10%が目安のところ21.3%と非常に高くなっています。そして病床の使用率も71.1%と医療提供体制もかなり厳しい状況になっていることがこの7府県全てに当てはまるということです。それでは、ここで緊急事態宣言が出されました各地域と中継を結びまして状況を伝えてもらいます。まずは大阪の道頓堀ですね。その繁華街にABCテレビの高橋大作記者がいます。高橋さん、街の様子ほとんど人がいないですね。

高橋大作記者:食い倒れの街・大阪のメインストリートこの道頓堀商店街なんですが本当に人はまばらです。 といいますのもほとんどのお店がすでにシャッターを下ろしています。大阪市では独自に去年の11月から時短要請を行ってきました。表通りのほとんどのお店が時短要請に従って閉めているという状況なんですね。
ですので、店の店主の方にお話を聞きますと改めて、緊急事態宣言が出ましたがもう打つ手がないんだと肩を落とす方もいらっしゃいました。一方で裏路地に入ったところには飲食店やバースナック、ラウンジいわゆる夜の店がたくさんあります。その中には明日以降も通常営業を続けるというふうに話す人もいました。実は、去年の末クリスマス以降に多く人が集まっていまして要請に従わずに通常営業を続けているお店に人が集中していつもよりも利益が上がったんだという状況もあったそうです。明日からも営業を続けると話した店主は協力金だけではどう考えても足りない。従業員の生活を守るためにも営業を続けるんだと話していました。また強制力のない緊急事態宣言あるいは時短要請では効果がないのではないかと疑問視する声も聞かれました。

小木アナ:通信状況で画面が見づらい点もありました。ご了承ください。そして、続いては緊急直下の緊急事態宣言の地域となりました福岡・中洲に州朝日放送長岡大雅アナウンサーがいます。長岡さん、中洲の様子というのは何か変わりましたか?

岡大雅アナウンサー:福岡一の歓楽街中洲です。その名物の屋台街です。川沿いには19軒の屋台が軒を連ねているんですが、今日営業しているのは10軒です。ただ、それでも昨日は5~6軒ほどの営業だったのでお店の営業が増えた状況になったところで緊急事態宣言の再発令の知らせを受けた状況です。そして、私が歩いているこの道も順番待ちの行列ができるほどにぎわいを見せている時は人が多く並んでいるんですけど今はその時と比べると3割ほどの人出になっている状況です。そして、先ほどお店の方にお話を伺ったところ昨年の11月中旬ごろは福岡県内の感染者数の状況も落ち着いていてそれまでのにぎわいを取り戻してきたような印象もあったと。ただ屋台街のお客さんの9割は観光客の方ですので東京の感染者数が増えて12月ごろからまた減少傾向にあるというお話でした。年末年始も寂しい状況だったということです。また、今日は緊急事態宣言の知らせを受けたばかりということでまだお客さんは来てくれていると。お店ごとに3人から5人ほどはお客さんが入られてるんですけど、明日以降、今よりも更に落ち着いた屋台街になってしまうのではないかと話してくれました。

小木アナ:いきなりの指定となった福岡はなぜ急に入ったのか。その背景も含めてこれから解説をしてもらいたいと思います。政治部の吉野真太郎記者に聞きます。福岡が入ったのはずばりなぜなんでしょう。

吉野真太郎記者:急転直下の菅総理の政治判断といえると思います。昨日の取材を振り返りますと昨日の午後には関西と愛知、岐阜を加えるところまでは流れが固まっていました。ただ、政府高官は夜になってもあとは総理の判断だと含みを残していまして我々は昨日の「報道ステーション」の放送直前に福岡の追加でトップダウンの判断があったことを確認したんです。福岡の追加の理由としましては九州では何といっても福岡は人の動きの中心ですよね。西に行けばすぐに佐賀ですし南に行けば熊本ですよね。中洲のリポートありましたけど福岡では時短要請がなされていなかった。政府関係者はこのことも危惧して福岡から九州に広がる前の予防的な措置だったんだと話しています。

小木アナ:総理の強い決断というのを出したかったところもあるのかもしれませんがそれにしても、ビジネス関係者の往来ですとかもっと早く止めるべきなんじゃないかという声も前々から出ていました。この辺りも含めて後手後手という批判は免れない状況なんですかね。

吉野記者:今、指摘のあったビジネストラックもそうですし振り返りますと去年のGoToトラベルの停止もそうでしたよね。ただ、菅総理の頭の中には経済を止めることへの抵抗感があって対策が泥縄的になっているように見えますね。またそれが批判を生んで世論に押し切られるような形で急ハンドルを切る場面が増えてきています。先ほど、福岡について予防的措置という言葉を使ったんですけども、菅総理としては後手後手の批判に対して先手を打ったという姿勢を示す狙いもあったんだと思います。

徳永有美アナウンサー(以下徳永アナ):官邸からの中継でしたけれども、梶原さんそもそもですけれども知事が政府に対して福岡は違いますが、続々と緊急事態宣言を要請している。この事態が続いているんですが背景はどんなことがあるんでしょうか。

梶原みずほ朝日新聞国際報道部記者(以下梶原氏):ポイント3つあるんですね。1つ目は自治体独自の緊急事態宣言だと実効性とか説得力が薄いんじゃないかと各知事が考えているということ。2つ目は国民生活や経済活動というのは県をまたいで行われていますからもはや自治体単独では対応できないという状況になっているということ。3つ目は国と自治体の責任の押し付け合いという構図があるんです。

徳永アナ:ここまでの局面にきて押し付け合いをしている段階ではないというふうな見方もありますよね。

梶原氏:自治体側からみれば政権の対応が後手後手に回っているのは今の状況を招いているわけですから国に責任があると考えていますし一方、政権側からすると感染を抑えている自治体もあるんじゃないかと。自治体頑張ってくださいよという考えがあるので、今回、全国一律で宣言は出さないわけです。国と自治体の責任についてはこれから通常国会が開かれます。そこで、特措法の改正が議論されるわけですが、国と自治体の役割とそして責任というのはもう少し明確になってくると思います。

徳永アナ:そして私たちの覚悟それから納得を得るためにも総理から、なぜこの決断に至ったのかという理由ですとかこれからの道筋ももう少し具体的に説明いただきたいなというところありますよね。

梶原アナ:今日の会見聞いてても腑に落ちないところがある。もう少し明確なメッセージを出してもいいんじゃないかと思いますね。

【検証部分】
今回の放送では緊急事態宣言をめぐる政府の対応が後手後手に回っているという趣旨の発言がありました。

小木アナ「総理の強い決断というのを出したかったところもあるのかもしれませんがそれにしても、ビジネス関係者の往来ですとかもっと早く止めるべきなんじゃないかという声も前々から出ていました。この辺りも含めて後手後手という批判は免れない状況なんですかね。」

徳永アナ「官邸からの中継でしたけれども、梶原さんそもそもですけれども知事が政府に対して福岡は違いますが、続々と緊急事態宣言を要請している。この事態が続いているんですが背景はどんなことがあるんでしょうか。」

確かに政府の対応が後手後手に回ったといった印象はありますし、政府の対応は完璧ではありません。
しかし、政府が現在のような事態を全く想定していなかったという訳ではありません。
ジャーナリストの長谷川幸洋氏は次のように指摘しています。

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 政府が宣言発令を想定していなかったのか、と言えば、そんなことはない。たとえば、西村氏は昨年12月30日、ツイッターで「感染拡大が続けば、国民の命を守るために、緊急事態宣言も視野に入ってくる」と発信している。大臣がこう言うからには、当然「いずれ発令もあり得る」と考えていたはずだ。

 同僚コラムニストで内閣官房参与を務めている高橋洋一さんは1月6日に収録した「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」で「第3次補正予算をあれだけ大きな規模で組んだのだから、12月の段階で当然、頭に入れていた」と語っている。

長谷川幸洋 「医療崩壊」はもう起きている…遅すぎた宣言発令で見えた菅政権のお粗末ぶり 
https://news.yahoo.co.jp/articles/4c40d513c06c8d9bee4c9bc8707c45cdd6989dee
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こうした側面があることを伝えておらず、政府の対応が後手後手に回っているという印象を強く与えてしまうような報道であった可能性があります。

またGO TOキャンペーンについて次のような発言がありました。

「今、指摘のあったビジネストラックもそうですし振り返りますと去年のGoToトラベルの停止もそうでしたよね。ただ、菅総理の頭の中には経済を止めることへの抵抗感があって対策が泥縄的になっているように見えますね。またそれが批判を生んで世論に押し切られるような形で急ハンドルを切る場面が増えてきています。」

GO TOキャンペーンが感染拡大をもたらしたという確実な証拠はなく、メディアが強く批判したため中止となったということを紹介すべきではないでしょうか。

高橋洋一氏の論考からこの点について検証していきます。

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国土交通省の鉄道輸送統計と航空輸送統計によれば、GoToトラベルの行われていた8~10月の旅客輸送数は50億人弱だ。一方、同じく国土交通省によるGoToトラベル事業における利用実績は、7/22~10/31で3976万人だ。

これは鉄道・航空輸送の1%程度しかない。このGoToトラベルを停止したところで、人の移動に対する影響はたいしたことがないのは明らかだろう。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身会長もエビデンスはないと公言しているほどだ。

それでも、マスコミはGoToトラベルをやり玉に挙げて政府を批判し、政府は一律一時停止を決めると、マッチポンプのように手のひらを消して、旅行飲食事業者はどうするかとの逆の批判に転じた。

こうした時には、政府による筋の通った上で、丁寧かつ責任ある説明が必要だった。GoToトラベルの一律一時停止について、筆者は「よくわからないけど、止めてみる」と考えた。政府の説明はちょっと歯切れが悪かった。

《高橋洋一 2021年、日本が決めるべき「コロナ対策」は、単純明快だった…!
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/78982?imp
》より
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高橋氏の説明にさらに加えると、Go Toトラベルの利用者のうち感染者は200人程度とされています。

各国の感染状況を比較してみても、Go Toトラベルを実施していた日本だけ感染者数が多いという訳ではありません。
各国で感染者数は同様の形で推移しています。つまり、Go Toトラベルは新型コロナウイルスの感染拡大と関係しているとは言えません。
こうした論点を取り上げるべきであり、次の放送法に抵触する恐れがあります。

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放送法4条
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
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新・視聴者の会は公正なテレビ放送を目指して監視を続けてまいります。

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